第57話 多分日常回
「ただいま〜」
「おかえりなさいませ、姫様」
「あれ、お姉様は居ないんですか?」
「はい。今日から帝国の方へと……」
「そう言えばそうでしたね……」
家に帰ってきてレリアを迎えたのはメイドだった。最近はほぼ毎日ルクリア姉が抱きついてきていたもんだからかなり拍子抜けしてしまった。
「んー……お姉様だし大丈夫でしょうけど、不安ですね」
「はい、しかも今年は帝国です……一昨年の公国の時よりも不安です」
「それでも行くと決めたのはお姉様です。私達は此処で帰りを待ってましょう」
どうやらかなりの期間はルクリア姉と会えないらしい。
と言うのも、実はこのシオン学園……2年生と4年生は授業が選択式となっており、留学組と学園組に別れるのだ。
学園組はそのまま学園に残ってそのまま授業を受けたりする組であり、留学する国の貴族では無い場合はこの学園組である事が多いらしい。
そして留学組……その名の通り、約数ヶ月間ほど留学をするのだ。
2年生ならば比較的過ごしやすく、争い事も少ないと言われるリライ公国へ。
4年生ならば強者が多く存在していて、学ぶ事が多いフォース帝国へと留学する事になっている。
プリモディア王国への留学が無いのは、プリモディア王国からの許可が出てないからだ。
……かなり強く反発してくる貴族のせいで。
つまりは、ルクリア姉が留学を選択して帝国へと行ってしまったわけだ。
心配こそあるけれども、留学生に何かした場合は学園を敵に回す事になるし、ルクリア姉に何かあった場合はもれなく王国と戦争だ。
流石の帝国も王国と学園を同時に相対出来るほどの強国では無いから行動は起こさないだろう。……多分。
「それでは、私は部屋に戻りますので」
「分かりました。あっ、姫様。こちらルクリア姫様からの伝文です。何やら生徒会についての事だそうです」
「分かりました。ありがとう」
メイドから手紙を受け取ったレリアはそのまま自室へと入り、手紙を机の上に置いて俺を抱っこしたかと思えば、制服姿のままベットへとダイブした。
姫様としてはだらしないけれどもレリアなら良いかな。……良いよね?
「ねぇリファル、お姉様が居ないとちょっと寂しいね。
……帝国、かぁ。レーナの国だけど、どんな場所なんだろうね」
レリアがそんな事を呟きながら俺の腹を撫でてくる。お腹は他の部位と比べて柔らかい部分だから結構こそばゆい。
……レリアは止める気が無さそうだし受け入れるしかないか?
っと、帝国だったか。
帝国、ねぇ……かなり実力主義な国と言うのは有名だし、王国と冷戦状態なのも知られている。
今は比較的落ち着いた状態だからルクリア姉も留学に行ったんだろうが、本来は王女がそう易々と留学に行ける場所では無い。
「んー……まぁ、いつか知る事だし今はいっか。よし、リファルっ! 私ちょっと魔道具作ってくるね!」
そう言ったレリアはパッパと魔道具作成時に使う作業着の様な物に着替えて工房へと歩いて行った。
俺? 俺はレリアがベットにダイブした頃くらいから寝たふりをしている。
寝たふりをしているのはなんとなく動くのがだるいからである。
最近結構な頻度で怠くなるんだよな……一度死んでしまったのが原因だろうか? 召喚獣とは言え、デメリット無しの蘇生ってのもあんまり考えられないしな。
一応寝れば治る怠さではあるのだが。
……寝たふりをするつもりだったけど、普通に眠たくなってきたな。
と言うのもこの空間は滅茶苦茶快適なのだ。レリアが作った魔道具のお陰で夏の暑さは感じず、王族が寝る場所と言うこともあってフカフカなベッドもある。
まさにゆっくりと休んでくださいと言っている様な物だ。睡魔に勝つ事は出来そうに無い。
て事でおやすみなさい……レリアにゃ悪いが、ぐっすりと寝させてもらおう。
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目が覚めて襲ってくるのは、寂しさ。
窓を覗いて外を見てみると外は真っ暗であり、星々が輝いている。
どれだけ寝ていたかは分からないが、時間帯は恐らく深夜。しっかり寝た事もあって身体の怠さは消えている。
しかしまぁ、寝起きにレリアが居ないとこうも寂しいとは……
俺に依存しきってた様なレリアがやりたい事を見つけれて、熱中出来るのは中々に嬉しい事ではあるが……こうも寂しくなるとは思わなかった。
親離れ……みたいな物だろうか。となると俺もそこまで付き添い続ける必要も無いのかもしれないな。
召喚獣としては近くで付き添って行きたい物ではあるが。
一応確認の為にレリアの魔道具工房まで歩いて、部屋の中を覗いてみる。
……うん、黙々と真剣に魔道具制作をしている。下手に刺激を与えたら失敗することもあるだろうし、近付くべきでは無いのかもしれない。
レリアの自室に戻り、俺専用の寝床で身体を丸める。
この俺専用の寝床……レリアと一緒に寝るのが殆どだから普段は全く使わない。
そんな新品同然な寝床で目を瞑り、思う。
……やっぱり、寂しいなぁ。案外俺も、レリアに依存してたのかもしれないな。
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