第56話 神凪さんこと……男女? 女男?
「それでは、失礼しましたー」
「また来るのよ〜」
少し難しい顔をしながらレリアは魔法技術部の教室から出て、廊下を歩き始める。
そんなに難しい顔をするのには何か理由があるんだろうか……?
「お姉様にも手伝って貰って……リファルにも? 私が回路を書けば——ゴニョゴニョ」
もしや俺とかルクリア姉に魔道具制作の手伝いをさせようと……? 確かに魔法の調整なら出来なくもないだろうが、召喚獣が魔道具を製作しても大丈夫なのだろうか?
そんな事を思っていると前から人が歩いてきた。
レリアは考え事で前が見えてないし、歩いてきた人も考え事をしているっぽい。
……これはぶつかりそうだな。
氷の壁を生み出して前の人を受け止めさせ、レリアの耳をカプッと甘噛みする。そして二人がお互いの事を認識したのを確認してから氷の壁を削除した。
レリアは他人が触れてくる事を割りと嫌うからな……過剰な対策っぽく思えるが、これで良いのだ。
「いてて……ん? あぁ、レリア王女か。すまないね、前を見ていなかったよ」
「えっと……? 貴方は確かリライ公国の——」
「……すまない、僕の姿じゃ分かりづらいよね。そうだな、とりあえず自己紹介でもしておこう。
僕の名前は神凪・リライ。リライ公国の公位継承者だね。
性別は不詳……だからさん付けでもして読んでくれると嬉しいかな」
「神凪さん……で良いんですか? 私は——」
「君程の有名人は僕だって認知してるさ。だから自己紹介は大丈夫だよ。プリモディア王国の氷竜姫……レリア・プリモディア王女。
それに、そこの召喚獣の竜にはバトルロワイヤルイベントで叩きのめされたからね……君たちの事は他の人より印象に残っているさ」
なんとなく見覚えがあると思えば、リライ公国の……神凪さんだった。相変わらず中性的な見た目のせいでなんと呼べば良いのかが分からん。相手が言うには神凪さん呼びで良いらしいが。
「それにしても……何故レリア王女がこの部活動区域に居るんだい? 確か君は生徒会へ入る事になってたはずだし、部活動区域に来る必要は無いはずだが……」
「あぁ、いえ……ただの私情で来ただけですよ。少し魔道具関連で少々……」
「なるほど、そう言えば最近は魔道具を扱う姿をよく目にすると聞いている。魔道具関連……ふむ、僕も気になるな。一体何を聞きに行ったんだい?」
「え、えぇ……聞きに行ったのは道具に二つ以上の魔法を刻む方法ですよ」
「道具に二つの魔法を……? これまた難易度が高い物に興味を持ったね」
「あれ? 知ってたのですか?」
「それは勿論。これでもリライ公の跡継ぎだからね」
そう言えば魔道具と言えばリライ公国だったか。
王国よりも研究が進んでいる魔道具製作技術は中々に目を見張るものがおり、また研究者も多い。
力が帝国を表すと言うなら、技が公国を表してると言っても良い。
ちなみに王国はその中間。一番過ごしやすい場所って言われている。老後生活は是非王国で過ごしてみてはどうだろうか。
「まぁ、制作に取り掛かる時は本当に万全の状態でするんだよ? アレは本当に危ないからね」
「はい、ご忠告ありがとうございます」
「うんうん、それじゃ、僕は用事がある事だしここいらで行かせてもらうよ。またいつか、ね」
「えぇ、さようなら」
「……なんで性別が全く区別できないんだろう」
神凪さんが立ち去ってからレリアがそう言葉をこぼした。
そう言いたくなるのも仕方が無い……何せ話してても一切性別を判定出来る事がなかったからだ。
せめて一人称が俺だったり、私だったりすれば多少は分かりやすいのに……よりにもよって僕っ子だ。中性的が過ぎると言える。まぁ、一人称で性別が決まるわけでも無いが。
……こうも性別が分からないとなると、神凪さんが言っていた性別不詳って事で通しておいた方がいっそ楽なのかもしれない。
「……まぁいっか。リファル、帰ろうか」
ぱっぱと帰宅準備をして俺の背中に乗って下校途中……レリアはふとこんな事を呟いた。
「そう言えば、もうすぐ制作系の大会が近いんだっけ……参加、どうしようかなぁ」
夏の入って少ししたらある学園主催の大会こと、シオン工芸大会。
安直な名前ではあるが、これでもかなりデカい祭り事だ。バトロワとかと同じイベントである。
その名の通り、工芸品を作ってそれの評価を競う感じのイベントであり、美術とかに関係無い人は結構無関係……と言うわけでは無い。
実は非参加者は出店を出す事が出来て、各国から集まる人々に自国の良さを伝える事が出来たりするのだ。
感覚的に言えば、前世の文化祭に近い。
それに、思わぬコネを作れる事で有名でもある。美術は国の垣根を超えるって事かな。
ちなみに魔道具は工芸品の枠組みに入っている。魔道具は装備品だ……性能だけではなく、見た目も大事にしたいですよねって事だ。
「んー……お店はどうせ他の貴族が出すだろうし、私は参加者側かなぁ。リファル、大会当日は一緒に回ろうねっ!」
にっこりと満面の笑みをしてるであろうレリアは俺の頭を撫でてきた。
……ゆっくり歩いているとは言え、撫でる為に身を乗り出さないで欲しい。割と危ないから。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
【神凪・リライ】
リライ公国の公太子であり、公子であって公女でもある。
召喚獣の影響を強く受けやすい体質と、影響が強い召喚獣が合わさった事で身体にとある変化が起きている。
普段から和を感じる様な服装をしており、髪の毛は片眼隠しのショートボブ。瞳はグレシャーブルーを想起するほど透き通っており、もう片方は琥珀眼のオッドアイとなっている。
ボーイッシュな性格をしており、また中性な事も相まって王子様系が非常に似合っている。
基本は刀と弓を扱う。
そして僕っ子。良いよね、僕っ子……作者は僕っ子大好きだぜ。
召喚獣:
召喚獣属性:地・水・火・風
蛇足
リライ公国は日本味が強そうに見えるが、ただ単に文化が入り乱れているだけである。
普通に西洋の甲冑騎士も居たりする。多様化って凄い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます