魔装ノ竜姫、自然の権化

第52話 自作魔道具

 照りつける日光に焼かれる今日この頃。

 俺は現在、レリアにとある魔道具を付けられていた。


「リファル、ちょっとヒヤッとするけど動かないでね」


 首元辺りでヒヤッとしたと思えば、急速に体温が下がっていく。

 ……いいな、これ。上がりすぎていた体温が良い感じに下がってる。


「これでよしっと。どう? リファル。涼しい?」


 身体を動かしてきても邪魔にならないし、しっかり固定されているから外れることも無い。

 ……流石はレリア、魔道具の制作技術も伸びが早い。


 この魔道具はレリアの自作だ。と言うか最近見る魔道具は大体レリア作だ。

 レリアが付けているアクセサリーも、俺に付けられている装飾も全てレリアが作った魔道具。もはや魔道具尽くしだ。


 何故こんなにも魔道具尽くしな日々になっているかと言うと……それは俺が休止期間から戻ってきた頃に遡る。


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「リファル見てっ! この魔道具、全部私が作ったんだよ?」


 俺が再召喚され、無事に休止期間から脱してすぐに見せられたのは、屋敷にあった空き部屋を改造した魔道具工房だった。


 至る所に完成品の魔道具が飾られており、その魔道具の出来はそこらで売っていてもおかしくない程。


 作業スペースには魔道具を作る為の道具が置いてあり、かなり作り込まれている。

 俺が居ない間に相当使った事が見て取れるが……新たな趣味にしては中々のめり込みすぎじゃないか?


「コレとか結構な力作なんだよね。こうやって……ほらっ!」


 レリアが手に取ったのは剣を二つくっつけた様な——いわゆる両剣、と言う奴だろうか? 男の子が好きそうな見た目をしたロマン武器だ。


 レリアがその両剣魔道具に魔力を通し、手を離すと両剣魔道具はひとりでに浮き、そして回転し始めた。

 次第に上がっていく回転速度によって遂には円盤状にも見え始めたその両剣魔道具をレリアは操作し、適当に魔法で生み出した氷の塊を切断した。


 ……エゲツない。


「こんな感じで、リファルが居ない間にいっぱい作ってみたんだ。でも……やっぱりリファルが居ないと駄目だね。凄く……寂しかった」


 回転を止めさせた両剣魔道具を飾り棚に戻し、俺に抱きついてきた。

 ……寂しさを忘れる為に魔道具を制作してたのか。


 ある程度俺を抱きしめ、満足したレリアは椅子に座って自分の指を見つめ始めた。


「リファル……人って、大切な存在を失うと虚無になるんだね。

 だから……もう、リファルに無茶なんてさせないから。ずっと、私のそばにいてね」


 そう言うレリアが左手の親指と右手の中指に着けている指輪型の魔道具が少し輝いた気がした。


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 と言うことがあり、俺が休止期間中にひたすら魔道具制作に取り込んで居たらしい。


 ちなみに俺の休止期間中の感想は……ひたすら長い事寝ている感じだった。なんか前世の夢を見た気がしなくもないが、それは置いておこう。


「んー、デザインがちょっと……リファル、今度作り直すから今はこれで我慢してくれる?」


 別に俺はこれでも問題無いのだが……レリアにとってはちょっと気に入らないらしい。

 俺は魔道具に関してはほとんど知識は無い……レリアに任せよう。


「それじゃ、学園にいこっか! リファル、乗せてくれる?」


 レリアを背中に乗せ、学園まで走っていく。

 ダンジョンで俺に乗り続けて以来、俺に乗るのが好きになったらしい。最近だとある程度の距離を移動するときは俺に乗るのがデフォルトとなっている。


 かく言う俺もレリアを乗せるのは結構好きだ。なにせすぐそばにレリアが居るし、レリアと一体となって行動出来てる感がたまらないのだ。


「今度リファル用の鞍を作らないとね。リファルも大きくなってきちゃったし」


 今は魔道具や氷の魔法で固定して乗っているが、それも限界が来る。

 特に俺は大型召喚獣で成長期真っ只中だ。これからもどんどんと大きくなっていくだろう。乗っていても疲れないように鞍はほぼ必須と言っても良い。

 でも、もしレリアが手を加えるとなると……魔道具になりそうだな。


「あっ、もうそろそろ着きそうだね。流石リファル、早いね~」


 普段は馬車とかで移動する距離を走っていると遠目に学園が見えて来た。

 さてと……今日はなんの授業があったっけな?

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