第44話 一時の休憩

 程なくしてレーナ皇女の治療が終わり、傷を完全に消せた。

 いやぁ、かなり大変だった。治癒属性自体使い慣れてないかつ、知り尽くしている自分やレリアの身体じゃないから治しづらかった。


 治癒を掛けるには身体の状態をしっかり把握しておく必要があるからな……一度も治癒を掛けたことのない他人の身体だと少し治しづらいのだ。


「ありがとう、リファル。それにしても……なんでレーナ皇女が獣人に? 元から獣人だったとか?」


 その可能性のあるのだが……治癒属性で診た感じだと少し違う気がする。

 何というか……中途半端。まるで進化途中というか、そんな感じの状態だった。元から獣人だったらそんな事は無いはずなんだが。


「まぁ、あとで聞けばいっか。とりあえず移動しよ、リファル。またボスが出現したら大変だし」


 レリアはレーナ皇女を抱えて俺に騎乗する。

 普段のレリアはあんまり俺に誰かを乗せたがらないのだが、流石に緊急時は別らしい。

 ……ちょっと不満気な感情は繋がりから感じるが。不服な事には変わりないらしい。


「リファル、とりあえず上の層に移動して。あんまり激しく動かさない方が良いかもだからゆっくりね」


 レリアの言う通り、まだ身体が中途半端な状態だ。変な刺激を与えるのはよろしくないし、また暴走する可能性があるかもしれない。

 レリアがすぐ側に居る以上、暴走させるなんて事をさせてないから出来るだけゆっくりと歩き、次の層に上がるための階段を登っていく。


「……耳も尻尾も本物だぁ…………」


 意識が無い事を良い事に耳や尻尾を触るのはいかがなものか……

 まぁ、確かに気になるのは分かる。意識がなくともピクピクと動いてる耳とかモフモフの尻尾とか触ってみたいもん。


「ん……? あっ、森林だね。これなら食料はなんとかなるかな?」


 程なくして着いた次の階層。そこの構造は森林だった。

 5〜15層よりも少し密度が高めかつ、生えてる木々には瑞々しい果実が実っている。


 勿論ダンジョン産の果物や野菜も魔力を抜かないと腹を壊してしまう。魔力があるせいで人間の身体では消化出来ないからだ。

 けれども獣化中ならばなんとか消化が出来る。一時的に召喚獣に近くなるからだろうか?

 まぁ、獣化しても魔物の肉や野菜の消化は厳しいんだけどな。消化中は常に獣化してないといけない関係上、消化に時間がかかる野菜や肉はまともに食えない。


「うーん……此処で休んだ方がいいかな、リファル、出来るだけ安全な場所を探すよ」


 レーナ皇女が起きるまで待つ予定なのだろう。上層に行こうとしてレーナ皇女に何かあったら大変だしな。


「……っ、ハイゴブリンとグレートオーガの群れっ! 本当に危ない場所だね」


 ハイゴブリン——ゴブリンの上位種を複数匹連れているグレートオーガが遠目に見えた。

 多分あいつら全員アクアリウムで倒せるが……戦わないことに越したことは無い。それに音を聞きつけて他の魔物も集まってきたらレリア達を守れる余裕があるか分からないしな。


「ここにも集団で居る……もしかしてこの層、危険?」


 至る所に居るグレートオーガとハイゴブリン。集団によってはフォレストハイウルフって言うウルフの上位種も連れている事もあって。


「これだと流石に上層に上がった方が良いかも……ここで休める気がしないし」


 そもそもとして俺たちの能力はまだ上位種と戦える程に成長していない。となると安全確保する為に戦う事も難しくなる。

 せめて上位種と対等の能力があれば良かったんだけど……ユニーク属性を使ってようやく倒せる状態だしな。


「せめてどこか魔物が来づらいような場所があれば──……あった」


 レリアが見つけたのはちょっとした洞穴。ダンジョン内って自然を再現してるって言うがこういう所もあるのか。ちょっと都合がいい感じもあるが……存分に活用させてもらおう。


「リファル、とりあえずレーナ皇女を此処に横にしておくから見守っててくれる? 私はこの洞穴の入口を結界で塞いでくるね」


 そう言って洞穴の入口の方へと歩いて行ったレリアを見送り、レーナ皇女の身体に再度治癒を掛ける。

 異常は……無いな。しっかりと健康体で暴走の予兆もなく、新たな傷も特に無い。けれども獣人の身体のままなのには変わりない。雷獣のラナが居ないことからして恐らく獣化ではないだろうしな。


「ただいま、リファル。レーナ皇女は……大丈夫そうだね。それじゃあ一旦休もうか。ここからは多分体力勝負だし」


 レリアがレーナ皇女のすぐ側で腰を落として目を閉じた。どうやら仮眠に入るらしい。

 ……そうだよな、冷静に見えてもレリアはまだ10歳程の少女だ。こんなことに慣れてるわけないし、精神的な疲労が凄いだろう。ゆっくり休んでおいてほしい所だ。


 さてと、二人が寝ているうちにやれることはやっておこうか。


 まずは洞穴の入口の確認だ。先程レリアが結界を張ったって言ったが、今の疲労状態で寝ている時にも魔法の維持が出来るとは思えない。

 氷みたいに実体として残るならば良いんだが、結界は魔力が切れると結界も消えるらしいからほぼ確実に消えている。


 うん、案の定結界が切れていた。氷魔法で壁を作り、所々に隙間を開けて空気の流れを作っておく。

 ……よし、これで良いかな。


 次にやることは食料採取かな。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 実はこの姫竜……物語の終着点が未設定なんですよね。

 ついでに言えばどんな話を書くかも決まってないんです。つまり完結する頃には数百話ぐらいあってもおかしくないって事ですよ。


 50話に近づいて来たのにまだ学園の一年生のバトロワとダンジョンぐらいしか書いてないってマジですか……? 

 もうこの姫竜がどれほど長くなるか分かんないっ……!

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