第41話 上位種のボス達

 リファル(レリア)side


「リファル、前衛をお願い。手加減の必要は無いよ……全力でやっちゃって!」


 俺から降りてそっと身体を撫でて命令を出すレリアに従い、蛇の前に堂々と歩いて行く。

 蛇は俺と同等レベルに大きい。人一人くらいならば飲み込めそうな感じだ。


 ……にしても、懐かしい見た目をしてやがる。いつぞやの獣解放同盟だかなんだかを名乗っていた女の召喚獣だったマッドサーペントみたいな見た目をしている。


 種族で言うならばマッドサーペントの上位種だろうな……じゃないと上位種蔓延る階層のボス階層で出て来ないだろうし。

 仮に名付けるならばソイルサーペント。正式名称を知らないからそう呼ばせてもらおう。



 ソイルサーペントは地面を滑るように接近してくる。そんなソイルサーペントに向かって稲妻ブレスを放つが、スルリと避けられて接近を許してしまった。


 近づいたソイルサーペントは俺に噛みつこうと大きな口を開けて突進してきた。

 突進を横に飛んで避け、前脚でソイルサーペントを抑えようとする——が、表皮がヌルッとしており、抑えつけることが出来ずにそのまま逃してしまった。


 見た目は蛇ではあるが、特徴はウナギに近いのだろうか? 柔軟性に富んだ動きを前面に出していて非常に攻撃しづらい。攻撃しても避けられそうだしな。


 攻めあぐねていると、ここでレリアの魔法が飛んでくる。

 雷属性の矢の魔法がソイルサーペントの死角から胴体に当たり、そして消滅した。


 与えたのは少しの衝撃程度……やはり今の俺達じゃ上位種相手にするならユニーク属性じゃないと通じないのだろう。


「効かない、か。……出し惜しみは駄目だよね。リファル、行くよっ!」


 レリアが獣化し、稲妻属性の身体強化をして一気に前線へと出てきた。

 ソイルサーペントはレリアを叩き落とそうと尻尾を振るが、見えない壁——結界によって阻まれる。


 懐に潜り込めたレリアは氷属性の魔法で剣を生み出し、切り付ける。

 しかし普段から氷剣なぞ作らないからか……上位種に全く通用せずに砕け散った。


 そこを好機と見たソイルサーペントはレリアを締め付けようと体を巻き付ける。けれども今のレリアの強みは稲妻属性でも獣化でも無い————結界だ。


「リファルっ! 今だよ!」


 結界を締め付けているソイルサーペントを更に囲むように結界が張られ、結界でソイルサーペントを閉じ込める。

 俺はその結界内に向かって稲妻ブレスを放つ。コレで全くダメージが通らないだなんて事は無いはずだ。


「……忘れてた、下にも結界張らないとだった」


 ソイルサーペントは即座に地面に潜って脱出していた。

 ソイルサーペントが何処に行ったかを確認していると、右後脚に鋭い痛みが走った。


 ……噛まれたか!


 雷属性の魔法を放出し、怯ませた所で身体を大きく動かしてソイルサーペントを引き剥がす。右後脚からダラダラと血が流れているが……まぁ、治癒すれば問題無いか。


「大丈夫? リファ——おっと!」


 心配したレリアが声を掛けようと動いた所で地面に足を取られて転びかけた。

 そこで気付く……地面がぬかるんでいる事を。


 なるほど、地面をぬかるませる事で自分は潜りやすく、移動しやすくして、相手の行動は阻害しているのか……なんとも戦いづらい。


「リファル、私は結界魔法に注力するから1人で戦ってくれる? 多分、相手のフィールドに上がらなければ勝てるから。

 それに、リファルならあんなのに負けないって信じてる」


 レリアが信じてくれているんだ、しっかりと答えようじゃないか。


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 レーナ(ラナ)side


『ガリッ……!』

「チッ! 硬い……」


 私の剣が全くこのオーガに通用しない。オーガの血すら未だに見ていない。

 私の実力じゃあここじゃ全く通用しない事がいやでも伝わり、それが焦りに繋がる。


「レリア王女は此処でもしっかりと戦えているのに……!」


 嫌でも感じる実力差。私は何も出来ず、此処では守られるだけでになってしまっている。

 私が1番苦手な立場で、どうしても脱却したくなってしまう。


 でも、結局は有効打を与えれずに耐えるだけになっている。肌に刃もラナの爪も効かず、常に避けるだけになっている。

 雷属性の魔法なんて一切効果を見せない。感電する気も無いし、注意を逸らす事すら出来ない。


「やはり狙うは柔らかい部位……!」


 外に出ている内臓である目、もしくは口の中。

 比較的柔らかい内側ならば攻撃が届くかもしれない。

 実際にやってみないと有効打になるかは分からない。分からないがやるしかない。


「ラナ、行けそうだったら出来るだけオーガの顔に近づいて貰えるかしら?目や口を狙うわ」

『ワゥッ!』


 剣を肩に担いでるオーガを睨む。凶悪な顔が剣を担ぐポーズと非常に似合っており、まるで不良……圧が凄い。


 でも、このオーガは私が——私とラナで倒して見せる。私は守られるだけじゃ無いって証明して見せるっ!


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