第40話 ?層のボス部屋

「……ごめんなさい、足を引っ張っちゃったわね」

「良いんですよ、私だって気絶してましたから。お礼ならリファル達に言わないとですよ」

「そうね……守ってくれてありがとう、ラナ、リファル」


 レーナ皇女が起き、現状把握を終わらせた所で申し訳なさそうにしながら言葉を発している。コレでようやく動ける訳だ。


「にしても明らかに階層が違うわね。オーガ……の上位種かしら? これ」

「えぇ、魔力を込めないと切れない皮膚と肉……それにこの巨体です。武器持ちだったことから派生種でもありそうですね」

「確かアーマードオーガだったかしら? しっかりと化け物ね、本職の人たちが戦うような相手よ」


 オーガの遺体を確認しながら何層かを割り当てようとしてるらしい。

 にしても二人とも結構落ち着いているな……王女と皇女なだけあってこう言う事態の時に落ち着ける術とか持ってるのかもしれない。


「少なくとも50層以上、70層以下ね。アーマードオーガが出るのはそこら辺だった筈よ」

「……厳しいですね。物資も道具も無いですし、あるのは武器とナイフくらい。食糧と水はどうしましょう?」

「水はレリア王女の魔法でなんとかなるけど、問題は食糧ね。魔物の肉は食べれないし、食べれる植物もこの辺りは生えてない……下手したら飢え死ぬわね」

「とにかく移動しないと、ですね。リファル達に乗りながら移動して、戦闘は控えめに……接敵しても私の魔法で足止めしているうちに逃げますよ」

「えぇ、分かったわ。まったく、大変な事になったわね」


 レリアとレーナ皇女は俺達召喚獣に乗って移動を始めた。

 道中出てくる魔物たちはどれも現状相手にするには骨が折れる。けれども俺の稲妻属性が通用した様に、レリアの結界もヒビは入っても突破される事は無かった。


 そんな超安全策で動き、次の層への階段を見つけた。

 ……降る階段を、だが。


「……この先、見てみる?もし植生豊かだったら食糧になるわよ」

「危険ではないでしょうか?もしボス階層だった場合、今まで出会った魔物よりも強い魔物が出ますよ」

「そうね……引き返しましょうか。少し焦ってるのかもしれないわ、ごめんなさい」


 ……? 先程まで落ち着いていたのに何故焦り始めたのだろうか?

 別に空腹状態でもないのだからそこまで焦る必要なんて無いはずなのだが。


「レーナ皇女、大丈夫ですよ。今の所危ないところはないですし落ち着いていきましょ」

「……そうね、分かってる。分かってるわ」


 やや不安、と言った感じか。

 そんな雰囲気でありながらも三層くらい上がった所でボス部屋に辿り着いた。


「ボスは……グレートオーガ:ソルジャーね。アーマードオーガに比べれば多少はマシかもしれないわね」

「とは言え私達は道中戦ってません……気を付けましょう」

「えぇ、それじゃあ行きましょっ!」


 真っ先にオーガの前に躍り出たレーナ皇女は、剣を叩きつける攻撃を誘発する様に動き、それを避けてオーガの足を切り付ける。


「硬っ! 攻撃が通らない!」

「本来私達が戦える相手じゃないです! もっと弱点を狙わないとっ!」

「分かってるわよそれくらいっ!」


 アクアリウムで倒したい所だが……妙にレーナ皇女の血の気が多くて、コレでは巻き込んでしまう。本当にどうしたんだよレーナ皇女……!


「本当に何を焦ってるんですか……! あぁもう、リファル行くよっ! 出来るだけレーナ皇女を援護するよ!」


 レリアは結界と魔法でオーガの動きを妨害する動きをし、俺はレリアを乗せたままだから援護しやすい位置を取り続けるように動く。ついでに言うならレリアの護衛でもある。


「かったいわねぇ……! 関節もまともに刃が入らないじゃないの」

「難しいかもしれませんが、目とかならば可能性があるかも」

「本当に難しい事を言ってくれるわねっ!」


 レーナ皇女はオーガの攻撃を避け、カウンターとして何度も剣で切り付けているが、やはりまともにダメージが入っていない。


 それもそうだろう、俺だって稲妻属性が必須だったのだ……あの破壊や貫通などに特化した稲妻属性が、だ。

 基本属性だけじゃかなりの工夫を凝らし、出力を上げなければ通用しないだろう。


 現に爪で切り付けている雷獣のラナの攻撃でさえ有効打になっていない。まだ子供故に攻撃力が足りてない証拠だ。


『カタカタカタ……』

「……? っ! レーナ皇女下がって! 此処に居るのはオーガだけじゃないっ!」

「なんですって⁉︎ ラナっ、一旦引くわよ!」


 レーナ皇女が引いたところで、地面から1匹の魔物が出てくる。

 そしてその魔物は地面から飛び出した勢いのまま、レーナ皇女に向かって突撃していく。


『ガンッ!!!』

「良かったです、結界が間に合って……」

「助かったわ。にしてもどうする? あの蛇の方が手強そうだけれども」

「……オーガの方を引きつけてくれますでしょうか? 私とリファルで蛇を倒します」

「分かったわ。それに引きつけるだけじゃなくて倒しても問題無いわよね?」

「……無理はしないでくださいね?」

「分かってるわ」


 妙に焦ってる気がするレーナ皇女に任せるのは不安だが、致し方無し……俺たちは蛇の方に集中するとしよう。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【上位種】


 派生種とはまた違った組み分けであり、通常種よりも格段に強さが違う者たちの総称。


 基本的にダンジョンや危険な未開拓地のみで出現を確認されており、軍やダンジョン探索者が討伐に掛かるため、一般人は見る事がほとんど無い。

 なお一般人が立ち会った場合、抵抗虚しく殺害される事が多い。

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