第39話 オーガ戦
『ドガァンッ!』
魔力の巡りが良くなったのか、動きが先程とは全然違うオーガが岩を纏った拳を地面に叩き付けた。
その衝撃で岩と地面は激しく破壊し、破片が俺に向かって襲ってくる。
それら破片を氷の壁で防ぐが、氷の壁は相殺される様に破壊される。
すぐさまオーガに近づき、振り下ろしてくる拳を避けてカウンターをする様に尻尾を叩き付ける。しかし岩の鎧を破壊し、少し生身を掠る程度しかダメージが入らなかった。
……やはり、成長しきれてないのが痛い。
成長期を終えていない俺は言わば子供だ。俺がフユに抵抗虚しく捕まる様に、子供である召喚獣は比較的弱い。
身体的な差も勿論あるのだが、それ以上に【一度に使える魔力量の差】が大きいのだ。
魔物も召喚獣も、歳を重ねると魔石が大きくなっていき、自然に扱える魔力量が増えていくのだ。
特に幼体と成体の差は大きい。種族的な差があり、更にはユニーク属性すら使っても対等止まりな今の現状が良い例だ。
尻尾の攻撃に怯む事なくパンチを繰り出してくるオーガ。攻撃手段が超脳筋なのはありがたいのだが、その脳筋な手段だけでも脅威なのがヤバい。
即座に氷の壁を作り、拳を受け止める……が、壁は破壊されて拳が迫ってくる。
壊れるのは分かってた。少しでも時間を稼いで避ける隙を作っただけだ。
避けると同時の少し離れ、オーガを見る。
関節部分は動かすために岩鎧を纏っていないが、他部位は軒並み岩鎧で隠れている。
岩の間から見える赤い双眸は怒りの感情をヒシヒシと感じさせる。
……狙うなら関節部位。腕一本でも取れれば充分楽に戦えるだろう。
片脚みたいに岩の義手を付けたとしてもバットみたいな運用しかできないだろうしな。
いや、もっといい方法があったな。
少し離れた所で様子を見てたからかオーガが走って俺に突撃してきた。
けれどもそれだと今から使う技のカモだろう。
水魔法でオーガを丸々飲み込むほどの水球を作り、突撃してくるオーガを飲み込む。
足掻くオーガを更に無力化させるために氷の膜を水球に貼り、暴れるオーガを閉じ込める。先程まで無駄な抵抗とばかりに破壊してた氷だが、今回は水の抵抗があるのに加え、込めた魔力も段違いだ。オーガの攻撃でもひびが入る程度に収まっている。それにひびが入る程度ならいくらでも修復できる。
水で満たされた空間で抵抗虚しく溺れ始めるオーガを見つめる。これが魔技しか使えない魔物の弱点だろう。人間が使う搦め手な魔法に対する手段が少ないのだ。
そして魔物とて生命維持をする必要があるし、呼吸も必要だ。水属性を扱う魔物でさえ、水生生物でない限りは溺れ死ぬ。水生生物も水から揚げれば死ぬ。
まぁ、この方法を使ってオーガを倒そうと思ったのはあの岩鎧を突破するのがめんどくさいからとか思ったからだ。
だって稲妻属性で破壊できたとしても即再生するし、生身に攻撃が当たる頃には威力も相当減ってるし……
アクアリウム化したオーガが溺れて気絶し、維持できなくなった岩鎧が剝がれていく。
氷の膜を一部解除した俺はアクアリウムの中に入り、オーガに近付く。気絶じゃ駄目だ、しっかりと仕留めておかねば。
オーガの喉元に稲妻属性で強化した牙を突き立て、噛み千切ろうとするとオーガが意識を取り戻して──否、死んだふりをやめて俺を掴もうとして来た。
けれどももう遅い、雷を身体から放出させ、水を伝い感電させて怯ませる。そして出来た隙を使って喉元を食い千切り、絶命させる。
……倒せたな、オーガを。やはり魔法を使えるって言うのはかなりのアドバンテージだ。
アクアリウムを解除し、レリア達の元へと戻る。……良かった、氷の壁を張っておいて。オーガが飛ばした岩の破片が氷の壁を一部破壊していた。
……今度からはアクアリウム化させてさっさと倒すとしよう。その方が被害も出ないしな。
-----------------
「んっ……んぅ、リファル……どこぉ?」
オーガとの戦いからどれだけ経ったかは分からないが、ようやくレリアが目を覚ました。
ちなみにレリアが起きるのを待っている間に2匹ほど追加でオーガが来ていた。オーガが油断している隙を突いて即溺死させたから被害は一切無し。すぐ側に喉元だけ食い破られた死体が転がっている。
「あっ、リファルおはよ……? ——! 結界っ!」
寝起きのポワポワ感を出していたが、現状を思い出して理解したのか即結界を張り、安全確保。
その後に俺が居るか、レーナ皇女は……と確認し、状況整理を終わらせた所で安堵の顔をあらわにして一息ついた。
「ありがとう、リファル。もしリファルが居なかったら私……死んじゃってたかも」
遠目でオーガの死体を見ながら俺の顔を撫でるレリア。
確かに子供の状態の召喚獣が連戦するには少し厳しかったかもしれない……ユニーク属性を使ってなお対等感があったしな。
……今思えば心臓部分目掛けて稲妻ブレスを吐き続けたら倒せてたかもしれない。岩鎧自体は破壊できていたからな。
「とりあえずレーナ皇女を起こさなきゃ。とにかく行動しないと」
レリアはレーナ皇女を起こしに掛かった。にしても此処は何処なんだろうか。
おそらくダンジョンなのだろうが、一体何層なのだろうか。
……無事に出れると良いんだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます