第38話 光に呑まれた先で

「……答えるつもりは無いんですか? 偽物さん」


 レリアが一切の感情も見えない真顔でルクリアに問い詰める。

 しかしルクリアは答えない……そりゃあ王族に化てたなんて事が王族に知られりゃ終わるからな。


「……何処で気付いた?」

「まず、肉親を騙せるだなんて思わないでください。尊敬するお姉様じゃないのは一目見て分かりましたよ」

「そうかそうか……でも、刃を向けるのが遅かったなぁ?」


「——んなっ!」


 15層の床全体が眩く光り始める。即座に稲妻ブレスをルクリアモドキに放ち、絶命させるけど床は光続けていた。


「レリア王女っ! とりあえず固まるわよ、何が起こるか分からないっ!」

「えぇ、リファルっ!」


 レリアの元に行ってレリアを守る様な体制を取る。レーナ皇女達も近づいてきて、固まった所で床がより一層強く光り出した。


「備えて——っ!」


 そんなレーナ皇女の言葉と共に光に呑まれるのであった。


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 光が収まった所で辺りを見渡す。


 先程までボス部屋だったはずだが、今居るのは石レンガで覆われた通路。……別の階層か?

 何層かが分からない以上、慎重に動くべきだろう。


 次に状況確認。

 ……レリアとレーナ皇女は気を失っている。人の身では気絶してしまう衝撃が先程の出来事にあったのかもしれない。

 雷獣のラナは特に問題無し。けれども荷物は……無いな。15層に置き去りにでもされたか。となると食べ物や飲み物は現地調達か……流石に過酷かもしれん。


 俺やラナは大丈夫、魔物を生のまま食べても全く問題ないのだ。けれども人間の身体だと魔力が含まれる魔物の肉を消化出来ない。腹を下すし、消化にエネルギーが取られて疲れやすいのだ。

 食べれるようにする方法もあるのだが、食べれる様にする魔道具が無い状態。……厳しいな。


『グルルルル……』


 ラナが俺の後ろに向かって威嚇をし始める。そして俺が後ろを振り返ると同時に「ドスン、ドスン……」と重量を感じる足音が聞こえてきた。


 レリアとレーナ皇女は気絶中、動けるのは俺とラナのみだ。

 レリアとレーナ皇女を守りながら戦う、か……俺にも結界魔法を使えれば相当楽だったんだがな。


 レリアとレーナ皇女を氷の壁で保護し、通路先の暗闇から出てくる魔物に備える。さぁ、一体どんな魔物が出てくるのだろうか……


「グオォォォ……ガ?」


 暗闇からうっすらと出てきた魔物は人型で筋骨隆々とした鬼だった。


 ボディビルダーが顔を真っ青にして逃げ出すような威圧的な肉体と、顔は子供が見れば即泣き出すほどの顔面凶器。

 手に持った大型の斧は木を切るためとは到底思えないほどに鋭く、人間が一撃でも受ければ致命傷になる事は容易に想像できる。

 そして額の部分から生えている少し小ぶりな二つの角と褐色の肌がこの魔物の特徴だ。


 オーガ──それがこの魔物の種族名だ。1~20層では出現が確認されてないかつ、先ほどまで戦ってたやつらとは明らかに強さが違う魔物。

 多分竜や雷獣と比べれば格下の存在ではあるのだが、まだ成長期を終えていない俺達にとっては勝てるかどうか分からない。大きさも俺の本来の大きさだとオーガの腰辺りまでしかないしな。


 ……でも、レリアを守る為なら倒すしかない。


 オーガに向かって堂々と歩いて行き、オーガの目に付くように動く。もしレリアの方に気付かれたら守るのが大変だ。


 ラナが動こうとしたので氷に壁を使って阻止する。ラナには周りの警戒をして欲しいのだ。そして他の魔物が来た時にそちらの対応をしてほしい。


 伝わるかどうか分からなかったが……どうやら伝わったらしい。オーガから離れて反対側の通路の方を警戒する動きをしている。


『グオオォォォオオオオ!!!』


 オーガが軽く地面が揺れたのでは? と思う程の咆哮をして、俺に向かって突進してくる。そして俺の前まで来たオーガは手に持った斧を思いっきり振り下ろしてくる。


 ……良かった、知能の低い魔物で。


 迫り来る斧を横に飛んで避け、稲妻属性のブレスで一番危険だと思われる斧を破壊する。あの斧なら俺の身体を真っ二つにしてもおかしくないからな。


 斧を失ったオーガは威圧的な肉体に物を言わせた肉弾戦を仕掛けてくる。そこら辺の鈍器で殴られるよりも威力が高そうな拳を俺の顔面目掛けて放ってきた。

 あれを喰らえば召喚獣とはいえ脳震盪を起こしそうだな……


 目の前まで迫った拳を氷の壁で受け止め、そのまま氷の壁を大きくさせて拳を丸ごと飲み込む……これでめり込んだ感じになって、そう簡単に抜けないだろう。


 逆の手で俺を掴もうとしてくるが、掴まれる前にオーガの足に嚙みつく。痛みでオーガがひるんでいる隙に牙を稲妻属性の身体強化をして足を噛み千切る。


『ガアアアァァアッ、グルァ……』


 片足を失ったオーガは体制を崩して倒れる──事は無かった。失った片足には地属性で創られた岩の義足が付いており、しっかりと体幹を支えていたのだ。


 オーガが持つ属性は地属性。しかも岩とかを纏う感じに扱うらしい。

 オーガは痛みに顔を歪めているが、その目は怒りと殺意に満ちている。どうやら俺を獲物では無く敵として見始めた様だ。


 オーガが岩を纏い始め、鎧を着こんだような姿となる。第二ラウンド……と言ったところだろうか? 堅牢そうな守りを突破するためにも俺は稲妻属性の身体強化をする。

 岩の鎧なぞ破壊してやる……稲妻破壊の力を持ってして。

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