第37話 ボス戦
10層のボスはウルフに乗ったゴブリン……いわゆるゴブリンライダーが2匹だった。
本当に先程までの階層の奴らよりちょっと強い程度……俺1匹でも余裕で討伐出来るだろう。
「ここは私達に任せてもらおうかしら」
「手助けは要らない感じでしょうか?」
「えぇ、要らないわ」
ラナに騎乗しているレーナ皇女がゴブリンライダーに急接近して剥き出しの首元に剣を突き刺す。
しっかりと急所である喉を貫いた事でゴブリンは絶命、残るのはウルフ1匹とゴブリンライダーになった。
勢いそのままにラナがウルフの首元も噛みちぎってウルフも絶命。
残るゴブリンライダーは奇襲とばかりに背後から鉄製の剣を振り下ろすが……ラナの移動速度は控えめに言っても化け物だ。猶予を持って避けるどころか、そのままゴブリンライダーが目で追えない速度で背後に回ってレーナ皇女がゴブリンの首を切断し、ラナがウルフに噛みついて雷属性の魔力を流し、絶命させる。
レーナ皇女の勝利。掛かった時間、実に数秒……ゴブリンライダー2匹程度じゃ相手にならないらしい。流石はレーナ皇女である。
「……まぁ、こんなもんよね。早く次の層に向かいましょ」
「えぇ、そうですね。……見事な戦闘でしたよ」
「当たり前じゃない、私を誰だと思ってるのよ」
軽く会話を交わしながら11層へと足を運ぶ。
そして辿り着いた11層の景色は……またもや林だった。
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まばらに生えた木々に、所々に散らばってるバラバラの板材……まるで林の中で荷車が破壊されたかのような痕跡が点々と存在してるのが11~14層の特徴らしい。
あと廃村みたいな見た目の集落もあるらしい。まぁ、その集落は危険地帯なのだが。
「ここで出るのはゴブリンの派生種でしたよね」
「そうね、ゴブリンアーチャーとかゴブリンウォーリアーとかね。恐らく連携もしてくるでしょうし注意しましょ」
「集落はどうします?」
「うーん、最終日に余力があればじゃないかしら。それに私達であっても危なくなる可能性もあるし」
「それなら安全重視で15層まで行きましょうか」
安全第一と言う事で戦闘は出来る限り少なめに、体力を温存する方針で進む事になった。
魔物と対面してもレーナ皇女がスピードに物を言わせた即殺、戦いそうになった魔物にはレリアが氷の銃弾を放って処理されていた。
そして特に変わり映えもせずに15層前へと辿り着いた。
「15層のボスはゴブリン小隊よね……どうする?」
「私は後衛の牽制をしますからレーナ皇女は前衛をお願いします」
「了解、それと貴女の召喚獣を借りても良いかしら?」
「えっと……リファルを?」
「そう、私とラナじゃ火力不足だし数も不足してるのよ。レリア王女が後衛として専念するなら竜には前に出て欲しいのよ」
「……分かりました。リファル、お願いね」
「本来この階層は護衛役が処理する予定なんだけど……まぁ、貴女達なら大丈夫かな。危なくなったら手を出すから存分に戦ってみなさい」
今まで護衛役を務めるためにずっと空気に徹していたルクリア姉が言葉を発した。
ルクリア姉とフユが見てくれるならば安心して戦えるな。……ルクリア姉とフユの様子がいつもとは違うが。
「それじゃあ、行きましょうか」
15層へと入り、ご挨拶とばかりに目の前にいたゴブリンナイトを前脚で叩き潰す。
少しの静寂……その後、俺を認識したゴブリン兵達が一斉に俺に群がり始めた。
15層のボスはゴブリン軍団——通称【ゴブリン小隊】。
20〜30匹のゴブリン派生種で構成された軍隊だ。
ナイトやウォーリアーを壁役とし、前衛攻撃役としてシーフやソルジャー。後衛にウィザードやアーチャーなどが居る。
うん、やはり15層から難易度が一気に跳ね上がっている。此処からが本番って感じだ。
真正面から飛びかかってきたゴブリンソルジャーを噛み潰し、すぐ側に居たゴブリンナイトも踏み潰す。
近寄ってきたゴブリン達には尻尾をぶん回して牽制し、少し離れた所に居るゴブリンには氷ブレスを吐いて凍らせる。
俺の仕事はタンク役、ゴブリン達を惹きつける事だ。俺がタンクをしている間にレーナ皇女達は暗殺するかの様に数を減らさせ、レリアは全体のカバーと後衛への牽制と言った感じの役割配分だ。
俺に向かって魔法や矢が降り注ぐが、それら全てが薄い透明な膜によって防がれる……レリアの結界魔法だ。
「……リファルを傷つけようとするなんてね」
レリアは結界で遠距離攻撃を防ぎながらも、その結界に穴を開けてその穴を通す様に氷の弾丸を放って後衛を潰している。
そんな攻防一体な事をしていながらも俺が攻撃を受けそうになったら、俺とゴブリンの間に結界を貼ってゴブリンを仕留めている。
レーナ皇女達も善戦しており、着実に数が減っている。
そして戦闘開始からわずか数分後……見事にゴブリン小隊を全滅させ、勝利を収めたのだった。
「お疲れ様、流石はレリア王女ね……見事だったわ」
「レーナ皇女こそ流石です。見事な処理速度でしたよ」
「えぇ、ありがとう。それじゃあ……」
「分かってますよ、私は家族ですから」
流石にもう見過ごせない。一応安全の為に泳がしていたが、ここから先は警戒し続ける余裕があるか分からない……不穏分子は排除しないとな。
レリアがルクリアに魔道具であるライフルの銃口を向ける。しっかりとルクリアを結界魔法で固定した上で、だ。
「何者ですか、アナタは。しかもお姉様に擬態するなんて万死に値しますよ」
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【派生種】
通常種に何らかの要素が加わった魔物達の総称。
通常種をゴブリンとして例えるならば、派生種はゴブリンウォーリアーやエルダーゴブリン、ゴブリンナイトやゴブリンシーフなどなど……いわゆる「職持ち」の奴らが派生種に該当する。
通常種とは違って人型の場合はしっかりとした武器を持っていたり、獣型の場合は通常種とは違った動きをする事から通常種よりも危険度が高いとされている。
真/古龍や神狼、不死鳥などの希少存在は派生種が居ないとされている。
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