第36話 ダンジョン実習開始
そんな強盗?事件から日は過ぎ、待ちに待ったダンジョン実習の日がやってきた。あの盗賊まがいな男と貴族の関係はあんまり分からず、現状はプリモディア王国のどこかの貴族がやったって事しか分かっていない。
正直一番怪しいのはスファレライト家だが…疑わしいから罰を与えるなんて事をしてれば恐怖政治その物だ。せめて証拠が無いとな。でもそんな証拠も現状出てきてない…つまり犯人探しは行き詰まっているって事だ。
と言う事でいつもの日常を送りながらも次の相手の出方を伺う事になった。一人の下っ端程度じゃあまりにも持っている情報が少ないからな。
さて…それじゃあ今まで何度も言ってきたダンジョン実習について説明しておこうと思う。
ダンジョン実習と言うのは「ダンジョンの中で数日間過ごす」と言うだけのイベントだ。
この数日間と言うのは人によって変わる。レリアとレーナ皇女ペアは約4日。学年ランキング最下位の人とかは一日過ごすだけとかだったりする。
これは実力に合わせた日数となっている。日数を重ねる毎に疲労していき、発揮できる能力が下がっていくからこその日にち設定だ。
そんな危険が伴うダンジョン実習を行う理由は召喚獣と同じ姿をしている魔物達の危険と違い。そして倒し方を学ぶためだ。
この世界で生きる以上、確実に関わる事となる魔物。その危険度は実際に経験してみた方が分かりやすいし油断もなくなるというものだ。
レリア達は今現在、ダンジョン入り口前で教師達と学園から信頼されている先輩達からダンジョンに入る前の最終確認をされている。
それから数刻後…ようやく確認が終わり、各々が装備を着込んでいく。
ダンジョンに入るのは順番であり、ランキングが高い者から入っていく。と言う事で一番手であるレリアを背中に乗せ、レーナ皇女を乗せたラナと一緒にダンジョンへと駆けていく。ちなみに緊急時の護衛役としてルクリア姉が付いてきている。
「リファル…行きましょうっ、取り敢えず五層まで!」
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ダンジョン内部は、洞窟だった。
薄暗く、若干湿度高めな洞窟で壁に生えた淡く光る苔が洞窟内を照らしている。
そんなダンジョンで出てくる魔物は最弱魔物筆頭であり、種類によっては最強格のフェンリルやフェニックス、古龍などと渡り合えるピンキリが過ぎるで有名なスライムだった。
とはいえ学生が潜るダンジョンの浅い層に居るスライムなんてほぼほぼピンキリのキリの様な物だ。つまり滅茶苦茶弱い。
俺と雷獣のラナ、移動中にどちらかの身体がスライムと擦れるだけでもスライムは即殺されていく。
一応他にも一部界隈ではキモカワで通っているがどうみても醜悪としか思えない緑色の人型魔物であるゴブリンも居たが、レーナ皇女とラナがさっと雷属性で麻痺らせた後にレリアが氷属性魔法で仕留める感じで倒されており、1〜4階層では小手調べにもならない感じだった。
と言う事で早々に辿り着いた五層だが…事前知識通りのボス部屋である。
1〜4層に居た魔物よりちょっと強い程度魔物が出てくるらしく、出てきた魔物は…石スライムだった。
その名の通り石で出来たスライムであり、スライムなのかゴーレムなのかと議論が交わされてそうな魔物だ。石なだけあってある程度硬かったりする。
そんな石スライムは俺の繰り出した前脚パンチ…通称猫パンチで砕けて終わった。うん、弱い…
これで1〜5層は攻略という事となる。そして次の6層からがダンジョン本番となる…1〜5層はチュートリアルとも呼べない何かだと思う。
「…一気に景色が変わりましたね」
「流石はダンジョン、常識がないわね」
おそらく初めて6層に入った者は皆こう思うだろう…もはや別世界じゃん、と。
何故かダンジョン内には空があり、太陽は無いが晴れ渡る青空が広がっている。
大地には草が生えており、まばらに木も生えている。森…と言うよりも林、緑溢れた穏やかな景色であり、もしダンジョンじゃなければちょっとピクニックとかにも良いかもと思ったりするだろう。
しかしここはダンジョン内部、こちらの命を刈り取ろうとする魔物達が跋扈しており穏やかな雰囲気とは違って非常に危ない場所となっている。
「ここからが本番よ、気を引き締めていきましょ」
「えぇ、では事前に打ち合わせした通りに」
「私達が前衛、レリア達が後衛ね」
雷獣のラナに乗ったレーナ皇女が俺たちの前を歩き、レリアを乗せた俺が後に続く。
騎乗状態は解除しない。四日間過ごすとなれば余計な体力は使わない方がいいし、咄嗟の時も動きやすいのだ。
「…ウルフが居るわね」
「狙撃しましょうか?」
「えぇ、お願い」
「分かりました………はい、仕留めました」
「相変わらず精度が良いわね、脳天を貫いてるじゃない」
レリアは今回もライフルを担いでいる。精密射撃をする時はやっぱりライフルを使った方が良いのだとか。遠目に見える魔物はレリアが撃ち抜き、木で隠れていて気付かなかった魔物はレーナ皇女達が排除していく。
まだまだ浅層である6〜9層だと非常に安定している。この階層はウルフやスライム、ゴブリンと初心者セットと言った感じの敵しか居ない。
とは言えウルフは時々群れている事もあって危ない時は危ない。余程腕に自信がある奴以外は迂回したりして避けるのが常識だ…数の差は大きいからね。
こんな感じで6〜9層も楽々と進んでいく。
次の10層はボス戦である。
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【ダンジョン】
誰がいつ、何の為に作ったか分からない謎の構造物。特殊な例を除くと大抵は洞窟型の下へと降りていく構造となっている。
階層の区切りは約10段からなる階段になる。
また、召喚獣を連れてダンジョンに入る時は召喚獣にシオン学園指定の首輪やスカーフなどを付ける必要がある。
内部には魔物が住んでおり、また魔物はダンジョン内の魔力によって生まれる。つまりはリポップする。
ダンジョン内に魔物が増えすぎた場合、魔物達はダンジョン外へと足を運び、地上に住む事となる。未開拓地に魔物が居るのはこれが原因だったりする。
魔物から取れる素材は重要であり、魔石は重要なエネルギー源となり、魔物素材は武器や防具だけに限らず家具や設備、装飾に魔道具などと様々な物に使われている。
その為人類の生活とは切っても切れない程に重要な場所である。
【ダンジョン実習】
魔物の危険さと召喚獣との違いをその身に教えるための実習。
数日間ダンジョン内部で過ごす事が内容となっており、監視役として教師か学園から信頼が置かれている4、5年生が付いてくる。
1年生が潜れるのは20層まで。そして最多滞在日数は1週間である。
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