第28話 レリアの不安/ルクリアの劣等感
「…生徒会、かぁ。レーナ皇女も生徒会に入るのかな?それともリライ公国の首席さんかな?」
俺を抱き枕サイズに戻しながら非常に強く抱きしめながらベッドでゴロゴロするレリアがそう言葉を溢す。
抱きしめる力はフユには大きく劣れど、なんか圧を感じる…レリアから「リファルは私の物」って感じの圧が凄い伝わってくる。
「まぁ、なるようになるかな…それよりもリファル、随分とフユちゃんとのイチャイチャを見せつけてくれたね~?」
レリアが俺の身体に回していた手の片方を俺の顎の所に持ってきて添える。そしてゆっくりと撫でながら話しかけてくる…怖いよ、圧を感じるよ…
だがレリアは止めることなく、顎に添えてた手をそっと俺の首部分まで動かして添える…まるで「いつでも首を絞めて息の根を止めれるぞ」とでも言うかのように。
「ねぇリファル…リファルは私の召喚獣なんだよ?フユちゃんの召喚獣じゃないの。駄目だからね?フユちゃんばっかり構って私を疎かにするのは」
うん、分かってる…分かってるからその首に添えてる手を放して?竜の身体だから絞められて窒息するほど首は脆くないけどそれ以上になんか怖い。ヤンデレ彼女に責められてる彼氏諸君はこんな気分だったのだどうか?いや、ヤンデレ彼女だともっと怖そうだ。
「まぁリファルがフユちゃんに抵抗できないのは分かってるけどね…フユちゃんってとんでもなく強いし、それに綺麗だもん。無下に出来る関係性でも無いし、フユちゃんの愛情表現は激しいもんね…でもこれだけは忘れないで、リファルは私にとって必要不可欠な存在なんだからね」
…分かってるさ。俺とレリアはそれこそ運命共同体という言葉が似合う関係性だ。切っても切り離せない、多分死ぬ時まで俺はレリアと一緒に居るだろう。
大丈夫、俺からしたらフユよりもレリアの方が優先度が高いし、大事に思ってる。別にフユを大切に思ってない訳ではないのだが…やはりレリアの方が大事だ。
…これが召喚獣の本能が故に思ってる事なのかは分からないが。
「…分かってる、リファルは私から離れないって。でも私は不甲斐ないからいつリファルに見限られるか不安だったりするの…」
これは…レリアはあのバトロワの時の事をかなり後悔してるのだろうか。かなりネガティブっぽい思考になってる気がする。
「でも、私だってこのままで良いとは思ってないから。見ててリファル、私はリファルに相応しい召喚主になってみせるから…!」
今回のイベントはどうやらレリアに良い影響を与えたっぽい。娘の成長を見てる気分になってくるぜ…
これで依存も少しは改善方向に行くかなぁ〜とは思いたいけど…うん、それは無理っぽい。だっていまだに俺に抱きつく力が強いんだもん。
「…明日からまた通常授業だね。明日に向けてしっかり休んどかなきゃ…おやすみ、リファル」
…おやすみ、レリア。
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…寝たレリアの抱擁から抜け出し、俺は屋敷から出る。
現在の時刻は深夜、一応街灯などはあるが前世と比べれば随分と暗い。その暗さは空に浮かぶ星の数々がハッキリと見えるほどだ。
………今回のバトロワイベントで、自分の未熟な部分が見つかった。
それはあまりにもレリアとの連携が取れてない事だ。レーナ皇女と雷獣のラナの連携は見事だった、何度苦渋を飲まされたかって感じだ。
もし、俺とレリアが充分な連携をとれた場合は例えレリアがあの結界属性や稲妻属性と言ったユニーク属性を使わずに勝てた可能性が充分にあっただろう。
それにもし俺がもっと強ければレリアは悩まずに…いや、レリアは精神的に成長してくれたのだ、結果的には良いとは言えるだろう。
…俺はまだまだ弱いな。
屋敷にある庭…と言うより、練習場で空を眺める。星がキラキラと輝き、前世とは違う色の月が夜を照らしている。
「………綺麗よね、夜の空って」
「…でも、その綺麗な物は欲しくても絶対に手が届かない。どれだけ手を伸ばしても…ソレが手に入る事はない。まるで他人が持ってる才能みたいにね」
いつの間にか、ルクリア姉が隣に居た。ルクリア姉も空を見上げており、その姿も非常に様になっている…夜の闇に現れてなお輝き存在感を放つ妖精の様だ。
「あぁ、フユはお休み中。今ここに居るのは私と君だけだよ。ねぇ…君は才能を努力だけで超えれると思う?」
…それは超えれるし、超えれないと言える。努力しない天才は超えれても、努力する天才は絶対に超えれない。
天才と言うのは…容易に超えれる壁では無いのだから。それを水属性魔法を使って文字にする。
こんなふうにルクリア姉と話をするのは初めてではない。王城にいた頃…それも割と小さい頃からルクリア姉は俺を普通の召喚獣ではないと見て話しかけてくる。
「そうだよね…努力をしても努力する天才には勝てない。そしてレリアは努力する天才…ね。あーぁ、いつか私はレリアに負けちゃうんだろうなぁ…結構頑張ってるつもりなんだけど」
実際、ルクリア姉は相当頑張っているだろう。ユニーク属性を使わずのユニーク属性持ち相手に無双するほどだ。相当な実力だと言える。
…いや、ユニーク属性を使わないのでは無いか。
「君も気付いてるでしょ?私はまだユニーク属性を見つけれてないの。ほんと…天才ってのは嫌になっちゃうよね〜、まさか新入生であるレリアがユニーク属性を使うだなんて」
「…まぁ、それでこそレリアだと言えるんだけどね」
…ルクリア姉は、レリアを家族として愛してる一方で劣等感も抱いてる。そう、レリアの才能に。
ルクリア姉は良く言って万能、悪く言えば器用貧乏だ…オールラウンダーとも言える。
それは全体的に満遍なくある程度の才能があるだけで、レリアみたく魔法への天賦の才があるわけではない。属性も二属性だけ…レリアは三属性+ユニーク&Sユニークと比べれば劣等感も生まれるだろう。
「私が劣等感を感じてるのはレリアだけじゃなくて君もだよ? 何さ、Sユニークを持ってるにも関わらず回復系のユニークも持ってるでしょ?どれだけ恵まれてるのよほんと。それに…恐らく身体能力もフユ並で知能は人レベルは確実にある。どれだけ優秀であれば気が済むの?」
…それは俺に言われましても。この世界に転生させた誰かに言って欲しいくらいだ。俺だって気付いたらレリアの召喚獣になってたんだから。
「まぁいいや。私は姉として、まだまだレリアの先を進まなきゃ行けないの。今日も特訓に付き合ってもらうよ?リファル君」
庭の中央に歩いて行ったルクリア姉は獣化する。
銀髪だった髪は白くなり、半透明の羽衣を纏う。俺やルクリア姉はこの羽衣を天女の羽衣って呼んでる。
…ルクリア姉の獣化は特殊であり、身体に変化があまり現れずに羽衣などの服飾が変わったり増えたりするのだ。
「あぁそれと…今まで属性を隠して私と戦ってた事、根に持ってるから」
宙にふわりと浮かんだルクリア姉は俺に向かって魔法を放ってくるのだった。
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