第22話破壊の竜・守護の姫
レリア・プリモディアside
………無力感を押し付けられ、申し訳無さが溢れ、そして目の前で大好きなリファルが圧倒的不利な戦いをしてるところを見せつけられる。
そんな不甲斐無さや無力感に包まれながらも一際強く覚える感情がある…それが後悔。
今回のこの戦い、こんな状況になったのはひとえに私のせいだ…レーナ皇女の動きを止める事すら出来なかった自分のせい。もし一度でも止めれればリファルが雷獣を倒し、レーナ皇女も倒してただろう。
「……結局リファル頼りじゃん、私」
魔法だって元の魔力も属性も結局はリファルの物。獣化だってそうだ…全てリファルが居る上で成り立っている。私自身の精神でさえリファルに頼りっきりだ。
にも関わらず、現状をそのままに結局リファルに全てを押し付けている。私は何をしたかったんだろう。リファルを愛でて、甘えて、依存して…の癖して私自身は何もしない。それどころか稲妻属性使用禁止とかいう枷すら付けている。人間と言う種族は弱者だから召喚獣頼りになるもの仕方ないとは思うが…でも頼りまくった挙句足を引っ張るのは違う。
「リファルは怒ってるのかな…こんな事になって」
私を囲んでいる氷の壁に触れる。私が使う魔力と同じ魔力から作られた氷の壁、だけれど私じゃ到底破壊出来ない様な頑丈さを誇っている。人間に許された魔法制御による魔法…それの出来すらもリファルには勝てない。
「あぁ、馬鹿だなぁ…本当に私って馬鹿…」
何も出来ない。氷の壁はリファルの魔法制御がある限り絶対に突破できない…魔法制御を奪うという現象もあるが、それは魔法制御の技術が上である場合の話だ。リファルと私じゃ私が圧倒的に技術が下なのは分かりきっている。
リファルがこの壁を出したのはおそらく私を守るため…本当に申し訳なくなってくる。その証拠に天井には何もない…もしもの場合は獣化して空を飛んで逃げろという事だろうか。
リファルがそう行動するのも仕方がない…現に私はボロボロ、でも逃れさえすればランキング上位には入れる。例え召喚獣がやられようとも…
「流石にそんな事は出来ないよ…リファル…」
やってる事は囮と言うか生贄みたいな物だ。でもそんな判断をリファルにさせたのは私が弱いから。
正直に言えば凄く慢心してた。以前の授業で見たライアーとか言う男の実力も到底私には及ばないし、他の同学年生の実力もそう。少なくとも同学年なら負ける事は無いと思ってた。小さい頃から魔法に関しては家庭教師が要らないと言われてた程の技術と言われて調子に乗ってた。
その結果がこれ。近距離に詰められれば魔法を上手く扱えずにボロボロにされ、召喚獣に手厚く護られる始末…何が王女だ、何が氷竜姫だ…竜の名どころか姫の名すら語るのも恥ずかしい。
レーナ皇女が言った「氷の壁…?そう、召喚獣任せなのね…なら貴女はそこで自分の召喚獣は負ける様を見てなさいな」と言う言葉…本当にその通りだと思う。散々足を引っ張った挙句最後にはリファルにぶん投げ。
目の前で戦闘…と言うよりも狩りが行われている。リファルを狩るための、狩りが。
駆け付けたくて氷壁を殴ってもびくともしない。それどころか殴った拳が痛くなる程…それに駆け付けても何になる?結局リファルの邪魔になるだけじゃん。
「ほんと…せめて自分の身くらい守れないといけないのに」
『ガアァァァァアアアア!!!』
そんな竜の咆哮がリファルから放たれ、リファルの身体が黄色に輝いていく…稲妻属性を使うらしい。
私の周りを囲んでいる氷壁にピリピリと電気が走り、氷壁に触れてた手にバチィッと言う音と共に痛みが走る…獣化しないと私も痛いんだ、稲妻属性って。
リファルの戦いを見ると、レーナ皇女と雷獣相手に互角の戦いをしている。なんとなく分かるけど、リファルは全力で稲妻属性を使っていない…私が控えめにって言ったから。私が…言っちゃったから。
「ほんと、最後まで足を引っ張るんだな、私って」
人を信用しない癖に周りの評価を気にする。有名になり過ぎたくないから控えめに動く、首席を目指さないとか、本当に馬鹿馬鹿しい。
結局は自己保身、なんとか出来る力がありながらも使わない馬鹿。いや、そんな自責は後で良いや、少しでも挽回しなきゃじゃん。もう周りの意見なんて気にしてあげない。
私は自身の属性を活性化させる。稲妻属性を知るずっと前から使えるのを知ってる自分のユニーク属性、それが【反転】。
その性質は…反転のみ。しかも対象は自身の召喚獣のSユニーク属性のみという尖りまくった性能。でも、そんな尖ってる分それだけ強力という事なのだ。
獣化して稲妻属性による身体強化を5割ほど施して氷の壁を破壊する。もう残りの5割は稲妻属性の反転属性…【結界属性】を施す。稲妻属性が破壊を象徴するなら結界属性は不壊を象徴する。
まずは雷獣に近づいて結界を生み出して隔離、これで無力化。結界の見た目は半透明の壁…ガラスみたいな見た目をしている。だけど脆そうな見た目に反して絶対防御を誇るのが結界属性。その性質は守護・不壊・防壁・形成。
「ラナ⁉︎っ!レリア王女!今更になって来るなんて奇襲のつもり⁉︎」
「ごめんね?レーナ皇女、でも私はリファルに頼り切りで居たくないの…今更すぎる事だけどね」
私はリファルと共に人生を歩みたい…リファルにのしかかるだけではなく、横を歩く存在として。
今回はその一歩、有象無象の声なんざ気にせずに力を出す事を考えようと思う。
稲妻属性による身体強化によって跳ね上がった身体能力でレーナ皇女を掴んで上空に投げ飛ばし、投げ飛ばしたレーナ皇女に近付いて結界属性魔法で上空にその身体を固定する。
「リファルっ!稲妻属性の制限解除!私を気にせずに全力で消し飛ばしちゃって!」
そう声を張り上げてリファルに言うとリファルは心得たとばかりに口を開き、喉奥から稲妻属性の奔流が見え隠れする…そして数瞬後、稲妻のブレスが私諸共レーナ皇女に迫るのだった。
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【ユニーク属性・反転(Sユニーク)】
自身の召喚獣のユニーク属性(Sユニーク属性)の特徴を反転させた属性を自身のユニーク属性へとする属性。魔力を使わない属性であり実態は召喚術に近いが、れっきとしたユニーク属性。
人には扱えないSユニーク属性の魔力を人にも扱えるユニーク属性へと変換する仕組みであり、変換の時に属性が反転している。
そのため獣化不使用時でも反転させた属性は使用可であり、劣化などは無い。召喚獣が反転した属性を使用したり操作したり削除したする事は出来ない。
性質:反転(Sユニーク)
*過去に反転属性は存在していたが、大体は『反転(魔法)』だったり『反転(物理)』であり、Sユニークの反転は非常に希少である。
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