第21話雷獣と竜

 突撃してきた雷獣の動きを見極めて攻撃を避け、そのまま前脚で払うようにパンチを繰り出すがやはり避けられる…速度が速ければ避けるのは容易いってか?


 ちなみに稲妻属性は使えない…レリアからのお願いで本当にどうしようもなくなった時以外は使わない様にと言われてるのだ。もし使ったとしても身体強化のみ…しかも比率は2割までである。恐らく過度に話題になったり注目を集め過ぎるのを防ぐためだろうか?


 そんなわけで現在稲妻属性を1割だけ混ぜた雷属性の身体強化を施している…流石に雷属性だけじゃスピードに追いつけないのだ。


 翻弄するかの様に俺の周りを回ってる雷獣に向かって水ブレスを吐く…出来るだけ拡散するようにして。その結果ダメージを負わせれてない代わりに再度雷獣がびしょ濡れになった。そう、この水ブレスは濡らすためにやったのだ。


 雷獣は濡れたとて関係無いとでも言う様に肉薄してくるが、それじゃあ俺の思い通りになるだけだ…雷属性の属性身体強化の比率を下げ、下げた分を氷属性で埋める。そしてついでに氷属性魔法で雷獣の周りの温度をひたすらに下げまくる。


 すると最初はスピードの速さと言う武器を押し付けるような動きをしていた雷獣の動きがどんどん鈍っていく…毛皮の表面にうっすらと霜っぽい物が出来ており、著しく体温が下がってるのを物語っている。


 どんどんと雷獣の動きは鈍っていき、行動不能にするための氷属性のブレスを吐こうとするが、そこで妨害が入る………レーナ皇女だ。


「大丈夫ラナ⁉︎ってさっむ!竜ってのはこんなに温度を下げる事が出来るって言うの…?」


 ラナ…?あぁ、雷獣の名前か。あと寒いのは当然だと思う、おそらく雷獣の周りの気温は冷蔵庫と冷凍庫の中間ぐらいの温度になってると思う…他の例えで言うなら真冬の寒い日ぐらい。


「ラナ、もう少し頑張れる…?私もいつも以上に割り込みをするわ!」


 体温が奪われ、動きが鈍くなれども鋭い瞳をこちらに向けてくる…にしてもいつも以上に割り込みと言うと先程のブレスの妨害みたいなのが高頻度になるのだろうか…?なんとも厄介な。


 所謂カバーと言うやつだ。言い換えるなら手助けとも言える…レリアとレーナ皇女の戦い方の相性の関係上、レーナ皇女にはカバーを入れる余裕があるのだろう…また、速度が速い関係上、すぐに駆け付けれるという点もあるからかなり利に叶っている…


 かなり動きが鈍ってる雷獣相手には常に有利に戦えてる…それこそトドメを刺せそうな場面が何度もあるほどだ。だがそういう時に限って…いや、そういう時だからこそレーナ皇女が横槍を入れてくる。


 おそらくレーナ皇女の作戦はレリアを戦闘不能にさせた後に俺を雷獣と一緒に倒す感じだろう…だからレリアを倒すまでに雷獣が耐えないといけないためこんな感じになってるのだろう。


 雷獣の爪撃を弾いて仰け反った所で喉元らへんを噛みつこうとすれば、口の中を狙った雷属性魔法が飛んでくる。俺がその魔法で少しでも怯めばその隙で雷獣が退避する…動きが鈍いとはいえ普通に速くはあるから退避されたらトドメを刺せない。


 そんな戦いをしているうちにレーナ皇女の様子が変わる…何か吹っ切れた様な顔をしてる。


「…流石に時間が掛かりすぎてるわね。これ以上時間を掛け訳にはいかないから全力で行くわよ!」


 そんな言葉を放つとレーナ皇女に狼の耳と尻尾が生え、手足が獣の手に近くなる………獣化をしたらしい。


 そして戦闘に集中しててイマイチ現状を理解出来てなかったのだが、レリアがかなりボロボロになっている…流石にこれ以上は危険か。


 レーナ皇女の攻撃がレリアに届く前にレリアを氷の壁で囲う。幾ら獣化したとは言え召喚獣の魔法を突破出来るほどの攻撃力は得られないだろう。


「氷の壁…?そう、召喚獣任せなのね…なら貴女はそこで自分の召喚獣が負ける様を見てなさいな」


 軽く蔑む様な目をレリアに送ったレーナ皇女は俺を見据える。おそらくレリアが保身で氷の壁で自身を囲ったとでも思ってるのだろう…俺がやったのにな。


「さてと、ラナを散々いじめてくれたんだから容赦はしないわよ、ドラゴンさん?」


 レーナ皇女は両手を地面に付け、四足歩行動物の様な姿勢を取る…その姿はすぐ側に居る雷獣を彷彿とさせる。そしてレーナ皇女と雷獣は同時に動き出して俺に肉薄してくる。


 まず最初に攻撃してくるのは雷獣、自前の鋭い爪で俺の身体を引っ掻こうとしてくるが先程までと同じ様に避け、反撃しようと動く前にレーナ皇女が雷獣の陰から現れて顔を殴ろうとしてくる。


 拳が当たる部分を氷で覆い、衝撃を分散させてその攻撃の隙に雷獣に向かって前脚で攻撃しようとするが、いつの間にかそこに雷獣は居ない…何処に?そう思った瞬間に尻尾に痛みが走る…どうやら後ろに回って尻尾に噛みついたらしい。


 尻尾を振り回して噛み付いてる雷獣を地面に叩き付けようとするが、叩き付ける前に雷獣は噛みをやめて退避する。

 そんな風に雷獣に意識を割いたために今度は前片脚に痛み…レーナ皇女の攻撃だ。


 流石に対処しきれなくて大きく引くが、その引きで出来た距離を物ともせずに詰められてまた1人と1匹による連携攻撃で反撃を許されずにダメージを入れられていく…


 …純粋に凄いと思う。自身の強みである速度、それを押し付ける様な動きと連携。一度敵が引いたとしても結局は詰める速度のほうが速いから引きにならずに攻撃をし続けるという考え…確かにこれは強敵だ、相性以前の問題…勝利への執着や努力の不足だろうか。


 そんな事を少し思いながらもなんとか戦いを続ける…おそらく第三者からした狩りの様に見える戦いを…

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