第20話雷光の皇女
レリアの水属性魔法によって生まれた水の濁流により、根本から崩れ始めた塔から脱出する為に壁を破壊してレリアを背中に乗せ空を滑空していく。
「これで脱落してくれるとありがたいのですが…あの帝国の皇族ですからね」
あの程度では脱落しないとは俺も思う、何せ帝国の皇族なのだ。王国よりも実力主義な面が強い帝国は実力が無ければ舐められる…それはたとえ皇族であってもだ。
だけども帝国の皇族は過去例外なく誰もが強者なのだ。血筋なのか…それとも秘伝の技術かは知らないが、皇族は成人する頃には皆ユニーク属性を発現しており、また素の実力も極めて高い。過去に皇族の落ちこぼれと言われてた存在も結局は実力を隠してただけと言う事実が判明しているのだ。
ただ、その代わりに子供が産まれにくいと言う血筋らしいが。
とまぁ、そう言うことで帝国の皇族であるレーナ皇女がこの程度で終わるわけがないのだ。落ちこぼれという噂は聞こえないどころか、むしろ周りを置いてきぼりにする程の実力と言われてるのだ。
その証拠に俺が地面に着地した瞬間に塔の瓦礫付近から黄色い光が突撃してくる。俺は雷属性の身体強化をして即座に回避行動をして避ける…俺が元いた場所には召喚獣に乗ったレーナ皇女が居た。
………水浸しになった姿で。
「やってくれたわねレリア王女っ!私は正々堂々と言ったのに貴女は奇襲を…それもあんなっ、あんな密室で水責めとか人の心はないの⁉︎」
「いえ、敵なら容赦せずに潰すべきかと思いまして」
「容赦無さすぎて流石の私もビックリしたわよ⁉︎」
俺とレーナ皇女の召喚獣(雷獣)は睨み合い、レリアとレーナ皇女はちょっとしたお話をしている。生き残ってたのは良いが、召喚獣諸共びしょ濡れと言う事は避けきれなかったのだろうか?いや、疲労してる感じはないし恐らく濡れただけだろう…まぁ、液体を全て避けるとか難しいもんな。俺も凍らすか空を飛ぶかぐらいしか全てを避け切る方法は思いつかない。
「まぁいいわ…私達はほぼ無傷だし、私が勝利するには貴女が1番強敵っぽそうだもの…今ここで貴女を倒して私がこのイベントに勝利してみせるんだから!」
「あら、リライ公国の首席様は強敵ではないと?私に労力を割いても大丈夫なのですか?」
「正直あの首席がどれほどの実力か分からないけど…それでも先に貴女を潰すわ。私は漁夫の利をして試合に勝つのは好きじゃないの、立ちはだかる敵を全て実力で叩き潰してこそ帝国の皇族ですものっ!」
随分と脳筋というか…見ていて清々しくなる程の考え方だ。それにレーナ皇女が堂々としてるから非常に様になってる。
「はぁ…逃がしてくれないようですね。良いでしょう、絶対に勝ちますよ?リファル」
「やっとやる気になったってわけね?良いわ、叩きのめしてあげるっ!【氷竜姫】よりも【雷光】の方が凄いってわからせてあげるわ!」
そうしてレリアとレーナ皇女はそれぞれの召喚獣から降りて戦闘体制をとって相手の出方を伺う…
レーナ皇女…噂では圧倒的な速さに振り回されずに武器として使う程の技術力とバランス力を持っており、敵を翻弄するタイプだと聞いている。ただ、その代わりに攻撃力は低いらしく手数で攻めてくるのだとか…しかも召喚獣との連携で相手に攻撃の隙を与えないようにしながらだとか。
正直言えば、レリアが獣化して俺とレリアが同時にフルで稲妻属性を使えばすぐに叩きのめせる。以前入学試験でみた動きは到底稲妻属性に追いつける速度では無かった…だが、獣化はそうぽんぽんと使えるものじゃない。
獣化は人の身にかなり負荷が掛かる。以前練習でレリアがぐったりとしたのがその証拠だ。これはレーナ皇女との決闘じゃなくてバトルロワイヤル。レーナ皇女に勝っても疲れ果てて他の生徒に負ける様じゃ意味が無いのだ。
それに、レリアの稲妻属性は劣化版なのだ。流石に稲妻属性がレーナ皇女の雷属性よりも速度が上とは言え、劣化版だと雷獣がギリギリ喰らいつける可能性があるのだ。
「行きますわよ!貴女達も他の生徒と同じように何もわからぬうちに退場させてあげるわ!」
そんな言葉と共に接近してきた雷獣とレーナ皇女を俺とレリアは雷属性の属性身体強化を施して迎え打つ。
ここに、同じ雷属性同士がぶつかり合うのであった。
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「っ!…やっぱり相手の速度が上だと戦いづらいですね!」
一度大きく下がったレリアはそう愚痴をこぼす。本来レリアは魔法使いタイプ…後方にて火力を出す方が得意なのだが、レーナ皇女は逆に剣士タイプ…自身の速度に物を言わせた距離の詰めによって一気に自身の間合いにするタイプなのだ、相性は地上戦だけで言うならばかなり悪い。
空中戦ならば現状レーナ皇女は攻撃する手段が魔法ぐらいになるため俺が避けながら俺の上に乗ったレリアが魔法を放ち続ければいつかは倒せるだろう…だがそれが出来ない。理由は簡単、離陸する際に生じる隙に確実に攻撃を入れてくるからだ。
強制地上戦…なお相性不利。なんとも厳しい戦いな気がする。
「…リファル、私達は攻めれません。ですから受け身で攻撃しますよ」
そう言ったレリアは髪色が水色へと変化し、辺りに冷気が漂う…氷属性の属性身体強化だ。受け身になりながらも確実に攻撃を当てるつもりだろう、一応レーナ皇女を捉えれるように瞳だけは雷属性の強化がされてる。
「あら、攻めなくなったわね。もしかして諦め…じゃないようね。良いわよ?どんな策でも突き破ってあげる…!」
レーナ皇女の属性身体強化による金色に輝く髪が一際強く輝いた気がする。髪の間でピリピリなってる事から属性身体強化による強化度合いを強めたのだろう…
その間も俺は雷獣と戦闘を繰り広げる。こう言う戦いは召喚者は召喚者と、召喚獣は召喚獣と戦うことが多い…やはりどうしてもフィジカルの差があるのだ。
どちらかが崩れれば、崩れた方の敵が合流して1対2の構図となってしまう…そうなってしまえば勿論1体の方が不利になるわけで、俺が崩されるわけにはいかない…むしろレリアを勝利に導く為にも雷獣を崩さなければならないのだ。
雷獣を見据えると雷獣は猛速度でジグザグに動きながら近づいてくる…俺は全身に雷属性を纏いながら接近戦を興じるのだった。
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