第19話バトロワ、束の間の休息

 ある程度生徒達を狩っていると、レリアとの繋がりから帰還の命令が飛んできた。命令とは言ったが、強制では無いのでどちらかと言うとお願いの方が近いが…だが召喚獣の性からか、従った方が気が楽だったりする。


 て事で帰還命令通りにレリアの元まで走っていく…勿論体を小さくして見つかりづらくしながらだ。そうして塔の根本らへんに着いたら、そこから飛んでレリアの居る塔の最上階まで行き、レリアと合流する。


「リファル〜っ!」


 俺がレリアの元に着いた途端にレリアは持ってた魔道具を落として俺に抱きついてくる。うーむ、確かにちょっと寂しかったがそんな抱きついてくるほどだろうか?言うて召喚者と召喚獣の繋がりがある以上、離れてても一緒にいる感覚はあるのだが…

 と言うかレリアの抱きつく力が強い…属性身体強化してやがる…っ!しかも氷・雷属性で!


 どうやらしばらく離してくれないらしく、ボーッとしてるとようやく離してくれた。…なんか依存を強く感じてくるんだけど、大丈夫だろうか?


「ふぅ…よし。リファル、もうそろそろ倒すのは充分だろうしあとは待機しよっか」


 そう言って俺たちが立ってる真下の床を水属性魔法によるアクアジェットで切り抜いて塔の内部へと侵入していく。先程の俺とレリアが離れて行動するのが第一作戦だとしたら、次は第二作戦…敵が減るまで待機だ。


 塔の内部は地上から塔の最上階までの螺旋階段があるだけの簡素な作りだが、誰も入ってこないとなれば隠れるのに最適だと思う。

 そんな塔の内部で、レリアはまず地上からこの塔の内部に入るための扉を氷付けにして開けない様にしてから、更には最上階付近にある螺旋階段の裏側に氷の小部屋を作る。ちなみに内部に入る時に開けた穴は切り抜いた建材を嵌めて内側から氷で固定してるからちゃんと調べないと内部に侵入した形跡は見つからないと思う。


 螺旋階段の裏側に作った小部屋にレリアは入ると、その小部屋内に作った氷の椅子に腰掛ける。塔内部に照明は無いが、それは雷属性魔法で代用している。


「リファル〜あとは人数が減るまで待機だよ。ほら、おいで?」


 レリアに呼ばれて近付くと再度抱きしめられる。ちょっとの間離れただけなのにこうも抱きつくとは…ちょっと将来が心配になってくる。良い友人か恋人ができると良いんだけど…出来るのかなぁ、レリアに。


 繋がりがあるとは言え、大まかにしか意思疎通が出来ない俺は今の所レリアの支えになる事くらいしか出来ない…主人が精神的にも壊れない様に支えるのが召喚獣のする事だと思う。運命共同体を体現した様な関係なのだから、召喚主と召喚獣は。


 塔の内部のほのぼの空間とは真逆で、外からは戦闘音が聞こえてくる。誰かが火属性魔法を放ったのだろうか…パチパチと燃える音が聞こえてくるし、時々剣と剣がぶつかり合う音もしてくる。


 …俺が戦った相手はあんまり戦闘と呼べる物じゃなかったし、少しは戦えそうな感じやつが居てもレリアが狙撃して終わった…そう思うと今回のイベントではしっかり戦えてない気がする。


 そういえばなのだが、シオン学園一年生の大半にとってはこれがほぼ初めての実戦的な対人戦となる。一応授業で模擬戦などをするし、魔物との戦闘とかもした事ある人が大半だろうが、実際に命を奪う程の攻撃をぶつけ合うのは大半が初めてだと思う。


 故に時々生徒には躊躇いの感情は見えてた気がする。本当に攻撃しても良いのか、とか…レリアがそうならなかったのはおそらく誘拐で人の死を間近で見たのと、それによって敵となる物に容赦はしないと言う考えが生まれたからか…おそらくその辺りが関係してると思う。まぁ、他人がどうなっても良いと思う考えを持ってる節もあるが…王族としてどうかとは思うが俺にはそこら辺の機微は分からんのだ。


 そんな事を考えながらも塔の内部で休息をとっていく。

 平和だなぁ、外では魔法が飛び交う音や、召喚獣の威嚇や咆哮と言った物が聞こえてくるが…うむ、平和だ。


「んー、リファル…いつまでこうしていよう?外の状況が見えないから判断に困るね」


 ゆったりした空間が流れる中で、俺は即座に明かりとして展開してた雷属性魔法を解除する。


「えっ?リファ———」

『バギャッ!』


 …言い忘れていたが、塔の内部に入る為の扉は木製。実は力任せで壊せば簡単に内部に入れる。


「出てきなさいレリア王女!皇女である私が直々に倒してあげるわ!」

『ワォンッ!』


「…レーナ皇女ですか、厄介な」


 侵入してきたのは入学試験を二位で突破したフォース帝国の第二皇女ことレーナ皇女。自身たっぷりに属性身体強化をして輝く金色に染まった髪を揺らしながら侵入してきた。あの雷の速度を制御して動けてるのは純粋に凄い…


「此処に居るのは分かってるのよ?貴女、私を狙撃したでしょ!王女なら正々堂々と戦って見せなさいな!」

「いや、王女だからって正々堂々とする意味じゃないでしょ…貴族間の関係なんて堂々とするのが馬鹿らしいほどドロドロしてるんですし」


 小声でそう言ったレリアは手のひらで水属性魔法を溜めながらレーナ皇女に狙いを定める。どうやらそのまま仕留めるらしい。

 そうして水属性魔法を解き放ったレリアからは濁流の様な水がレーナ皇女に向かって降り注ぐのだった。

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