第15話試してみよう、模擬戦闘空間

「まぁこの特殊運動場は実際に体験してみた方が分かりやすい。て事でさっさと起動するからあんまり動かないようにな」


 そう言われて騒ぐ暇もなく数秒の内に周りの景色が変わっていく。

 そして周りの風景が全てなんの遮蔽の無い草原に切り替わった。


「凄いですね、これがシオン学園の最新技術…」


 レリアが驚きを隠せないのもしょうがないとは思う…もはやこれは別世界に飛ばされてると感じれる。

 前世で例えるなら電脳世界にフルダイブした感じだ。まだ前世の記憶があって、そう言うラノベを呼んだ事あるからなんとなく理解はできるのだが…そんな娯楽が発達していないこの世界の人達には相当驚く光景だろう。


「よし、全員居るな。これが特殊運動場の模擬戦闘空間だ。今後ある決闘やイベントは大抵ここを使う。まぁまずはお試しだ、誰か魔物と戦ってみたい奴は居るか?」

「はいっ!」


 ざわめき収まらぬまま説明が続き、戦ってみたいと言う質問に元気よく答える女子生徒……あの子は平民、かな?非常に活発そうな子で大変よろしい。


「おぅ威勢がいいな。じゃあまずはゴブリンと戦ってもらう。軽症とか重傷は幾らでも負ってもいいが痛覚は多少感じる。注意しとけよ。」


 先生が言うには感じる痛覚は多少鈍化されてるらしい。まぁ、部位欠損とかした時の痛覚をそのまま受けたらショック死の可能性もあるかもしれないのだ…よくても怪我する事にトラウマを覚える可能性がある。


 ………にしても思うのだが、この装置はかなり怖いな。致命傷ですら許される空間で、痛覚も鈍っている…いわゆる幾ら無茶しても良い空間なのだ。そんな空間で怪我しまくってたりしたら、いつか空間外でも無茶をする可能性が…


 これはできるだけレリアに怪我を負ってほしくない。頑張って「怪我しても大丈夫」って言う思考が染み付かないようにしなければ。

 とまぁ、そんな感じでちょっと心配をしていたら先生がその辺に小さい魔石を放り投げると、その魔石がゴブリンへと変わっていく…えっ何その技術、クローンか何かですか?


 やはり魔道具技術が凄すぎる…もし前世に魔道具の概念が追加されてしまえばとんでもない発展をしていただろう。おそらく星間旅行ですらお手のものレベルで。


 しかしまぁ、これだけの発展をしていても魔道具は向き不向きが強過ぎるのだ…だってこの世界には娯楽が少ないんだもの。


 まぁそんな事を考えてるうちに女子生徒が召喚獣と協力して出てきたゴブリンを討伐した。ゴブリンは塵となって消えていき、残ったのは砕けた魔石だけである。


「よし、流石に入学してくるだけの実力はあるな…とまぁ、こんな感じで魔物とも戦えるのがこの特殊訓練場の特徴だ。だから今後あるであろう組対抗戦や魔物掃滅戦、他にも決闘とかはほぼほぼ全てここで行われる。てなわけでまずは傷の治癒性能を見せたいんだが…故意に傷を付けるわけにはいかないしなぁ」


 て事で実際に小規模ながらもバトルロワイヤルをする事となった。

 ただ、流石に同じ国だと上下関係がハッキリと出やすいため、全員に認識阻害(姿形が変わったように見える物)を使ってだが。なお、召喚獣は認識阻害が掛けれないらしく、今回は戦闘参加不可らしい。


 段々と模擬戦闘空間内に建築物が出来上がっていき、俺ら生徒達も一定距離離れる様に飛ばされていく。


 そして俺とレリア以外の全ての人が飛ばされたところで…


『それでは今から実際にバトルロワイヤルを開始する!ルールは召喚獣・獣化の使用不可、最後の1人になる事が勝利条件だ。この模擬戦闘空間は一定の速度で縮んでいくように設定してあるから注意しとけよ…それじゃあ、始めっ!』


 そんな先生の掛け声と共にレリアは即座に走り出す。分かっているのだろう…レリアほどの実力はあるならば、止まり続けるより動いていた方が良いことを。


 ちなみに俺は更に身体を小さくしてレリアの胸ポケットに入っている。もはやハムスターとかそこら辺の小動物感を非常に感じる。

 …竜って一応大型召喚獣なんだぞ?


 胸の柔らかさは…うん、特に分かんない。だって鱗が邪魔なんだもの…多分柔らかいと思う。あっでもかなり安心するかもここ、定期的に入らせて貰おうかな?


 そんな事を考えてる間にもレリアはガンガン進んで生徒を倒していっている。水の槍を生み出して攻撃したり、氷で足をとってそのまま氷の礫撃ち抜いたり…


 うん、容赦が無い。恐らく死なない事が分かってるからこそ無慈悲に攻撃できるのだろう…それとも他人に興味が無いからか。


 そしてある程度蹴散らした所で近くの家屋へと入る。内装は簡素だ、必要最低限の家具ぐらいで生活感が無い…一応家とは思える程度の内装しかない。


 むしろ再現された空間でこれならば凄いのではないだろうか。

 その家の中のおそらくリビングにあたるであろう場所にある椅子に座り、レリアは休憩する。


 そしてやはりレリアは王女様、質素で特に内装の無い家であっても滅茶苦茶絵になっている…うむ、眼福である。


「ふぅ…リファル、おいで?」


 レリアに呼ばれたので胸ポケットから出ると、大きさをある程度いつも通りの大きさに戻されてから膝の上に置かれて、ゆっくりと撫でられる。


 例えるなら猫を膝の上に置いて愛でる感じだ。そんなほのぼの空間を展開してはいるが、外からは時々戦闘音が聞こえて来る…水が弾ける音だったり、燃え盛る音だったりと。


「凄いね、リファル。まるでここは普通の街みたいだもん。建物は普通に壊れるし、怪我もする…違うのは死にそうになったらこの街から出されるくらい…ほんと、不思議な技術だよね」


 確かにとんでも技術だと思う。さながら別世界の創造と言っても良いぐらいの事をしている。だけどそれらを実現できるのがユニーク属性とSユニーク属性を持った魔物の魔石なのだろう…


 ほんと、前世に無くて良かったと思える。


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【魔道具】

 魔物や召喚獣から取れる魔石を核とした様々な効果を発揮する道具の総称。

 なお、召喚獣の魔石を魔道具にするのはほぼ全ての国で禁止とされている。


 魔石の属性を利用し、起こす現象を回路に刻み、起こす現象に比例する負荷に耐えれるほどの素材で作ることによって魔道具が完成する。そのため、素材さえあればあらゆる事象を起こせると言われている。

 なお魔道具は向き不向きが激しく、娯楽・動力系は不向きである。


 また、取れる属性が極端に少ない魔石を使った魔道具は再現不可になっていたり、国宝になっていたりすることがある。

 これらの例を挙げるならば、空間・通信・治癒系などが非常に希少で再現不可とされている。

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