第11話 皆でやろう、身体強化

 入学式の次の日、始めての授業の日がやってきた。


「さて、私はプリモディア組の召喚術と魔法を担当するマナよ。さっそくだけれど今回はまず身体強化をしてもらうわ…大体の人たちは身体強化の魔法は出来るかもだけどより深い身体強化を今回の授業でやるわよ」


 こんな感じで授業始まった。

 さて、身体強化魔法についてだが…魔物や召喚獣は常にこの身体強化をしてると言っても良い。魔力を全身に巡らせて身体を強化するのが身体強化なのだが、そもそも召喚獣や魔物達は常に魔力を巡らせているから強化された状態がデフォルトなのだ。

 人間は魔力が元々無いから故意に魔力を巡らせて強化しなければいけないのだが、今回はただただ魔力を巡らせて強化するだけでなく、属性の特徴を強く出す身体強化をするらしい。


「身体強化はそのまま身体を強化する魔法よ。そしてこの学園に入学できた貴方達ならば身体に魔力を巡らせて強化することはお手の物でしょうけど、それだとちゃんと身体強化を出来ているとは言えないわね…まずはより一段上の身体強化を見せてあげるわ」


 そうしてマナ先生は身体強化を発動する。さて、マナ先生の容姿は黒髪黒目なさながら清楚系の王道を貫くような姿をしている。そして【火属性の身体強化】をしたマナ先生は髪と瞳が深紅になり、前世のラノベで言う吸血鬼女王の姿にピッタリな容姿へと変化した。

 そしてよく見れば手の爪もネイルでもしたかのように赤く染まっている。


 この姿の変化には大半の生徒が驚いている…驚いてないのは確か騎士とかの存在が近しい貴族の出の人たちだろうか。

 レリアは何か納得してるかのような表情をしている


「これが一段上の身体強化よ…通称【属性身体強化】ね。ただ魔力を巡らせるだけじゃなくて、属性の面を強く出すことでより強力な身体強化をすることが出来るわ。ただの身体強化よりも操作技術が必要だし、コツも必要だけれど今後絶対に必須になる技能よ。コツは人それぞれだからそれぞれで頑張ってもらう予定だけど、どうしても分からない場合は聞きに来てちょうだい。基本は身体強化をアレンジする感じでやってみると良いわ、もし属性身体強化が出来たら的を殴ってみなさい…そしたら普段の身体強化とは違った結果が見れるわよ」


 スーッと深紅から黒に戻ったマナ先生は軽いアドバイスと共に生徒に身体強化をするように促す。

 と言うことで生徒それぞれが身体強化の魔法をアレンジしていく。


 先生の言っていた「コツはひとそれぞれ」と言ったのは本当にその通りで、俺の場合はその属性を纏う感じでやれば出来る…というか実際にこの属性身体強化をして戦ったことがある。そう、あの獣解放会だとか何とかいうやつの女性と戦った時にやった体が黄色になった時のやつが属性身体強化だ。


「リファル、あの時の黄色のリファルって…雷属性の属性身体強化だったんだね」


 レリアも気づいたらしい、あれが属性身体強化なのを。生徒の集団から少し離れた所にある的に近づいてボソッと俺にだけ聞こえる様に呟いた。

 そして的の前に立ってからレリアは属性身体強化をする…銀髪は煌めく水色になり、瞳も水色に。水属性の場合は青色の為、これは氷属性の属性強化だ。


 そして軽く髪から氷属性魔力が冷気として漏れ出している。その姿はまさに氷の令嬢の様…

 その状態のまま的を殴る。すると殴った場所を中心として的の一部分が凍った。


 氷の属性身体強化は防御力が上がり、触れた相手に凍傷を負わせたり体温を奪ったり…他にも多少熱に耐性が出来るのだ。厳密に言うならダメージを負うほどの熱を氷属性で下げているのだが。


 属性によって身体強化に作用するのは変わってくるのだが、レリアの使える水・氷・雷の効果をまとめるなら、


 水は柔軟性と炎への耐性…水の流れる動きが元となったのだろうか?さながら身体が自由自在に動く様になるのが水属性の身体強化だ。回避するのに最適な属性だし、火属性に次いで最もポピュラーな属性強化だったはず。


 次に氷は先ほど言った様に防御力の上昇と凍傷などのデバフだ。

 防御の上昇は地属性に劣るし、凍傷も触れる事が出来なければ意味がないため、かなり弱いと思うかもだが…近接ならば無類の強さを誇るのが氷属性の身体強化だ。

 考えてもみてほしい、触れるたびにデバフをくらうのに防御力が上がる敵を…雑魚敵であったとしてもウザいと思えるだろう。それがボスなら尚更だ。


 そして最後の雷は、スピード上昇に感電だ。

 一応副作用的な感じでスピード上昇に伴って貫通力も上がるが、それはさておいて…雷の属性強化は純粋に強い。

 速度が上がれば避けやすくなるし、相手を感電させれば相手の動きが鈍る…汎用性抜群で扱いやすいのが雷属性の身体強化だ。


 強いて言うなら強化時の速度に慣れないとコケやすい事だろうか?レーナ皇女の雷属性だと速度特化し過ぎてて普通の人ならば必ずコケるだろう。


 さて、現実に話を戻そう…

 レリアは他にも水属性の身体強化を試したり、氷属性の身体強化と合わせて使ってみたりしている。

 ちなみに別属性の身体強化をする場合は、属性の比率が大事になる。合計を10として、氷属性を6:水属性を4…みたいな感じで。


 そして生徒達は遠目から凄いレリアを見ている。それも仕方がない…元から教えてもらっていたのでは?と思うレベルで身体強化を扱うレリアは視線を集めるし、銀色の髪色と混ざる事により煌めく様な属性色の髪とレリアの容姿は非常に合っているのだ。


 遠くからは『流石は氷竜姫…』だの、『美しい…』だの聞こえてくるが、言葉数が非常に少ない。多分見惚れてるのだろう…


 言っておくがレリアは一切この属性身体強化を今この時まで習ったことは無い。俺が見せた雷身体強化を自力で再現するまで持っていったか、純粋に魔法の天才なのか…まぁ、後者だろう。


「ふぅ…この比率かな…?これでリファルとお揃いっ!」


 そう喜色を含んだ小声を出したレリアの姿は俺の体色と全く同じ色合いの髪と瞳を持っていた。

 …いや、扱いやすい比率を探してるんじゃなかったんだ。まさかの俺に合わせるためとは思わなかったぞ…


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

【属性身体強化】

 一般的には身体強化の上位技術とされており、通常の身体強化による身体能力の上昇に加えてそれぞれの属性の特徴が出る身体強化魔法。通常の身体強化よりも強化率が上昇している。

 また、魔物や召喚獣はこの属性強化を無意識でしており、属性色が体色によく出ている。


【属性色】

 それぞれの属性を表す色の事を指す。魔石の色や一部魔法は、この属性色がハッキリと出てくるほどに属性と密接な関係にある色である。

 ユニーク属性にも属性色はあるが、基本属性に非常に似た属性色が多い。


 基本属性の属性色

 火→赤色

 水→青色

 風→薄緑色

 地→焦茶色


 希少基本属性の属性色

 氷→水色

 雷→黄色

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