第27話 勇気

「はあ……」



 とある高校の中庭で一人の女子生徒がベンチに座りながらため息をついていた。



「……やっぱりダメ。全然告白する勇気が出ないよ……」



 女子生徒は思い人の顔を思い浮かべながらもう一度ため息をつくと、目に涙を浮かべながらポツリと呟いた。



「……なんで私ってこうなんだろ。このままじゃいけないのはわかってるのに、どうして勇気を出せないんだろ……」



 そして、女子生徒の目から涙が溢れたその時、一人の女子生徒がゆっくりと近付いてきた。



「……何を泣いているのですか?」

「え……って、あなたはこの学校で噂になっている子だよね?」

「噂……ああ、もしかして天使だという噂ですか?」

「そう」

「……残念ながら私は天使などではありませんよ。ただの女子高生です。それで、どうして泣いているのですか?」

「……実は」



 女子生徒が泣いていたわけを話すと、もう一人の女子生徒は納得顔で頷き、その隣にゆっくりと腰を下ろした。



「たしかに告白する勇気というのは中々出ない物です。不安や恐怖、それらの感情が入り交じり、本来出すべき勇気を押し込めてしまいますから」

「うん……」

「ですが、私はやはり告白すべきだと思いますよ。あなたの中にある相手を想う気持ちは本物ですし、このまま気持ちを伝えずにいると、絶対に後悔すると思いますから」

「……うん。でも、私みたいに地味で目立たない子からの告白なんて迷惑に思われないかな……」

「そんな事無いですよ。今、あなたと一緒にいる私は気持ちが安らいでいます。きっと、あなたはその雰囲気で誰かの事を癒す事が出来るんですよ」

「そ、そんな事……でも、ありがとう。私、そんな事言われたの初めてだよ」

「ふふ、どういたしまして。さて、ここまで話して、少しは勇気が出てきましたか?」



 その問いかけに対して女子生徒は微笑みながら頷いた。



「うん。まだ自信は無いけど、少しだけ頑張ってみようという気になった」

「それは良かったです」

「あの……本当にありがとう。あなたがいてくれて良かったよ」

「どういたしまして。さて……善は急げという言葉もありますし、早速行ってみてはどうですか?」

「うん、そうだね。私、頑張ってみるよ。それじゃあね」

「はい」



 そして、女子生徒が去っていった後、残された女子生徒は空を見上げながら微笑んだ。



「……これで恋の花がまた一輪。それは良いのですが……やはり、私が天使だと噂されている件はそろそろどうにかした方が良いですね」



 そう呟いた後、女子生徒はベンチから静かに立ち上がり、ゆっくりと歩き始めた。

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