第26話 躊躇
「…………」
ある日、子供達が元気良く遊ぶ公園の入り口でジッと公園内を見つめる一人の少女がいた。
「……はあ、みんな楽しそうだなぁ……でも、混ぜてって言いに行くのはなんだか緊張するし、やっぱり今日も帰ろうかな……」
少女がシュンとしながら言い、そのまま帰ろうとしたその時、そこに一人の女子高生が現れた。
「おや、こんにちは」
「こ、こんにちは……」
「ふふ、ちゃんとご挨拶が出来て偉いです」
「え、えっと……お姉ちゃんは?」
「私は通りすがりの女子高生です。ところで、あなたは他の子達と一緒に遊ばないのですか?」
「……うん。混ざりたいけど、混ぜてって言いに行くのは緊張しちゃうし、ダメって言われるのがちょっとこわいの」
「なるほど、そういう事でしたか」
女子高生が納得顔で頷くと、少女はゆっくりと俯いた。
「……私、いつもこうなの。何か新しい事をしようとするとすごく緊張するし、ダメだった時の事ばかり考えちゃう。そんな考え方がダメなのはわかってるんだけど、やっぱりどうにも出来なくて……」
「そうですか……」
「ねえ。お姉ちゃんはどう?」
「私ですか……そうですね、私も初めての事は緊張しますし、ダメだった場合の事も考えたりします」
「お姉ちゃんもなんだね」
「ええ。ですが、それは当たり前の事なんです。誰しも初めての事は緊張する物ですし、成功した時よりも失敗した時の事を考えて不安になる物です」
「……うん」
「大切なのはまずやってみる事。やってみなくては成功するか失敗するかわかりませんし、自分の成長にも繋がりません。それに、失敗したならそれを次に活かす事も出来る。そうやって人というものは成長を重ねていくんです。だから、あなたもまずはあそこで遊んでいる子達と話をしてみてはどうでしょうか。あなたが勇気を出せば、きっと仲間にいれてもらえますよ」
「お姉ちゃん……うん、ありがとう。私、頑張ってみる!」
「ふふ、応援してます。では、私はこれで。あなたが楽しい毎日を送れるように祈ってますよ」
そして、女子高生がその場を去ろうとしたその時、少女はにこりと笑いながら女子高生に声をかけた。
「ばいばい。天使様みたいなお姉ちゃん」
「……はい。さようならです」
女子高生が答えた後、少女は公園内に向かって走っていき、その中にいた少年の一人に声をかけた。そして少年と手を繋いで少女が走っていくと、女子高生はその様子をジッと見つめた後、どこか哀しそうな顔をした。
「恋の芽吹きがまた一つ。それにしても天使……ですか。ですが、私は……」
女子高生はポツリと呟くと、軽く俯いたが、すぐに顔を上げた。
「……とりあえず帰る事にしましょう。考えるのはその後でも大丈夫ですから」
そして、女子高生は何事か呟くと、その場から静かに姿を消した。
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