第10話 日常

「それで、無事に付き合う事になったんだって」

「へー……そうなのか」



 ある日の事、私はいつものように幼馴染みの家に行き、ベッドに寝転がりながら携帯をいじる幼馴染みに対して色々な話をしていた。そして、同級生の子の話を終えた後、私はベッドにもたれながら小さく息をついた。



「……それにしても、すごい考えだよね。自分の気持ちなんかを書いた物語をラブレター代わりにして渡しちゃうなんて。私には到底思いつかないや」

「まあ、お前は文系の頭じゃないからな。それに、たとえそうだとしてもそんなに良い文は書けないだろ」

「あ、ひどーい」

「酷くない。というか、そんなのを渡したい程好きな相手がいるのか?」

「いるよ。今、私のすぐ近くに」

「……そうかい、ありがとな」

「そっちは?」

「いま告白してきた奴」

「……そう。ありがとう」

「ん……」



 幼馴染みはなんて事ない様子で答えたけれど、その耳はどこか赤くなっていて、自分の言った事に照れているのが丸わかりだった。



 まあ、私も少し顔は熱いんだけどね……。



 そんな事を思いながら顔を向かって手で風を送っていた時、「なあ」と幼馴染みが話しかけてきた。



「ん、なに?」

「うちの親とお前の親なんだけどさ」

「うん」

「俺達がもう付き合ってるもんだと思ってるみたいだぞ?」

「あ、そうなんだ」

「ああ。だから、付き合ってないって言ったら驚かれた」

「だろうね」



 そっか……やっぱり、周囲から見たらそう見られてるんだ。あ、それなら……。



「ねえ」

「ん?」

「それなら、本当に付き合っちゃう? まあ、距離感は別に変わらないと思うけど」

「……そうだな。昔からこんな感じだし、今更って感じはするよな」

「そうだね。で、どうかな?」

「……お前が良いなら俺は問題ない。むしろ、お前以外に考えられないし」

「奇遇だね。私もだよ」

「そっか。それじゃあこれからは恋人同士という事で」

「うん。それじゃあ改めてよろしくね」

「ああ、こちらこそよろしく」



 ロマンチックさの欠片もないまま恋人同士になった後、私達はさっきと同じように他愛もない話を続けた。他のカップルならここでキスの一つでもしたいところなんだろうけど、私達の場合はこの距離感がベストであり、この関係性がとても落ち着くのだ。



 ……まあ、いつかは恋人らしい事もしたいかな。本当にいつかで良いけど。



 そんな事を考えながらクスリと笑った後、私は彼氏との話に意識を集中させていった。

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