第17話 フランとアスタ、正宗の両親に挨拶する

 アスタの「朝食」も終えて部屋の片付をしているとチャイムが鳴った。


「おーい。正宗~」


 親父たちが到着したようだ。

 玄関に向かおうとするが、フランが先に玄関へ向かいドアを開ける。


「父上殿母上殿、お初にお目にかかります。妾はフランシウム・フェリシアノ・ルシフェラと申します。此度、正宗殿の正妻となりました故、不束者ではありますが、末永くよろしく申し上げまする」


 フランはカーテシーで挨拶をした。

 おいおい……アスタといいフランといい、何でカーテシーなんだよ。

 二人ともお貴族様か? 

 ん?正妻って?フランの国の結婚制度ってどうなってるんだろう。


「これはこれはご丁寧に。正宗の父の光国、母の雪路です。この度は愚息正宗がお世話になります。こちらこそよろしくお願いします」


 親父とお袋がフランに頭を下げる。


「親父〜お袋〜、入っておいでよー」

「おう、正宗。入るぞ」


 親父とお袋がフランの後に入ってくる。


「今日はぁ、お父様、お母様。フランシウムの妹のアスタチナ・フルオロ・ヴァンピエーラと申します。お会いできて至極光栄に存じます。末永くよろしくお願い致します」


 アスタもカーテシーで挨拶をする。


「あ、あらまぁ! 妹さんも来てらっしゃたの。よろしくね」

「おい! 正宗。お前、このぞっとするような別嬪さんどうやって知り合ったんだ? 妹さんもすごい別嬪さんじゃないか。しかもカーテシーなんて儂は初めて見たぞ」

「いや、その、まあなんというか、運命の出会いというか、その」


 設定していた本人なのに、しどろもどろになっているとフランがすっと答えてくれる。


「妾と妹が大八洲に留学しておりまして、ちょっとしたパーティーで正宗殿と知り逢うたのですじゃ」

「そうなんですか。大学生さんですか? いえ? もうちょっとお若い? まさか高校生?」

「お袋、女子高校生に手を出したら、今頃逮捕されて新聞に載っているから」


 実はこの2人はとんでもない年齢だが、留学生の設定だ。


「どちらの大学ですか?」


 親父が二人の大学を聞く。


「二人とも東都大学だよ」


 俺は予め用意したフェイク情報を流していく。


「あら、超一流大学じゃないですか。うちの正宗に少し頭を分けてあげてほしいですわ。ほほほ」

「何だよそれ……」


 所詮おれはFラン大さ。ケッ。

 だけど、気のせいかお袋の話し方がいつもとは違う。声が上ずっていると言うか、何か動揺している感じだ。

 やはり俺がこんな美人といきなり結婚したということでびっくりしているのだろうな。


「お国はどちらからいらっしゃったのですか」


 親父がフラン達の国を聞き始める。


「ルルド王国ですぅ」

「ほう、ルルド王国ですか。なかなか良いところですね。ご専攻は?」

「妾は、鉱物魔法……」

「ゴホン!」

「いや、鉱物資源工学を専攻しておりますのじゃ」


 あぶねーと思いつつ、咳払いをしたところでフランが気付いてすぐに言い直してくれてよかった。


「私はぁ医学ですぅ。姉も私もルルド王立大学からの留学生なんですぅ」


『アスタ。ナイスフォロー。』

『どういたしまして、お兄様。』    

かたじけないのじゃ、アスタ。』

『いいのよぉお姉さまぁ。』


「お二人ともすごいですわねぇ。そうそう、正宗の姉も医学博士なのですよ」

「そうなんですかぁ。機会があればお会いしたいですねぇ」


 そこにフランがコーヒーを出してくれる。 


「おやおや、これはこれは、ありがとうございます」

「不調法、お許しいただきたいのですじゃ」


 フラン、その言い回しどこで覚えた?


「お二人とも八洲語がお上手ですねぇ」

「大学で八洲は技術立国である故、八洲語を勉強するよう言われたのですじゃ」

「そうですか。八洲語は大変だったでしょう。平仮名に片仮名に漢字にと」

「そうですねぇ。でもとても面白い言語でしたのでぇ」


 それからしばらくの間5人で談笑しながら過ごす。


「それじゃあ、フランシウムさん、アスタチナさん。うちの正宗よろしくお願いしますわね。そうそう、結婚式の日取り決めないとね。また連絡するわね」


 お袋は矢張り俺がこんな美少女を嫁にした事で動揺しているのがハッキリと判るわ。


「はよ、孫の顔をみせい」


 親父、急かすな。


「ははは……わかったよ」

「お父様お母様、これからもよろしくお願いいたしますのじゃ」

「よろしくお願いいたしますぅ」


 俺達に見送られて親父達はアパートを後にした。


「ぶはぁあー、緊張したぁああ! 実の両親に会うのに、なんでこんなに緊張するんだぁあ?」


 玄関から部屋に戻ると、三人で床に座り大きくため息を吐く。 


「妾もじゃあ。久しぶりにドキドキしたぞえ」

「やっぱりぃ、メイド服でお相手したほうがぁ、よかったかしらぁ?」

「そうじゃなくてぇええ」


 アスタ、天然入っているなぁ。


「悪魔とヴァンパイアが目の前にいて、実の息子が人間やめて両方の眷属になりました。昨晩はアスタの血を吸血しましたなんてわかったら、どうなることかと」


 まあ、親父もお袋にこんな事言っても何のことやら判らないだろうし、病院へ連れて行かれるかもしれない。


「妾たちのことは完全に人間と思っていてくれたようじゃの」

「一応、私ぃ催眠術かけておきましたからぁ。私たちぃヴァンパイアは得意ですからぁ」

「アスタ、さらにナイスフォロー! ありがとう」

「しかし、良きご両親じゃの」

「ありがとう。あ……」


 俺はある事に気づく。 


「よく考えたら、フランのご両親にもご挨拶しないといけないんだけと、お父様お冠じゃねぇの?」


 フランがお父さんに一方的に「ここにしばらくいる」と言ったまま電話をガチャ切りしたのを思い出す。


「妾の父上は小さいことは気にせぬのじゃ。あまり気にしなくてもよいのじゃ」


 いや、それ全然小さくないから。

 娘が男の家に行って2、3日帰ってこないって普通の親なら心配で仕方ないでしょうに。

 更に、どこの骨の何の馬か判らない、魔法もろくすっぽ使えない奴が異世界から来て、「お父様、お嬢様を下さい」なんて言ったら、どこの世界のお父さんだっていい顔しないのは当たり前だわ。


 だがフランは全く気に解さない様子だ。


「大丈夫じゃ。妾の腹は決まっておる。心配するでない」


 フランは自信たっぷりの様子だ。

 あともう一つの疑問がある。


「あのさ、俺はそもそもフランの国に行けるの? 確か、フラン達の国って人間界から言うと所謂いわゆる地獄だよな」


 地獄の主の悪魔が俺の頭に浮かんでくる。


「魔界と言え。地獄とは何じゃ? 人聞きの悪い」


 フランがジト目で俺を見て来る。


「生きている人間はぁ死なないと来れませんけどぉ、お兄様はぁもう人間じゃありませんからぁ魔界に来れるはずですよぉ。だってぇ、悪魔とヴァンパイアの眷属ですからぁ、歓迎されると思いますよぉ」


 アスタは俺が魔界へ行く事が出来ると言ってくれ、ほっとする。


「そっか。ならいいんだけど。それによ、お互いの両親どうやって合わせる? アスタのことも親父達は知っているから、フランとアスタのご両親、いわゆる親戚同士どうやって合わせるかってのもあるなぁ」


 まだ考える事は色々あるなぁ。


〜〜〜あとがき〜〜〜

この度は沢山の作品の中から拙作をお読み下さりありがとうございました。

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