第37話 お互いの方向
卒検、ここで受からないと。そんなプレッシャーのせいでガチガチ。
【裕二、美咲、これ使って!】
なんだこれ?使い込んだバイク用のグローブ。
【これって、2人に?】
【凄く使いやすいよ。柔らかくてクラッチ操作しやすくて、クランクとか半クラの操作で力を発揮するよ。使ってみて】
使い込んだグローブ。確かに柔らかい。
つい最近合格したみさきさんからプレゼント。
有難いね、しかも2人に。美咲から検定。
【いざ、勝負!】
美咲、気合い入れ過ぎ。かえって心配。
順調ではあるが、ちょっと固いな。
クランクとか接触なければいいけど。
なんて、心配してる場合じゃない。もう俺だ。
【お願いします】
その後はほとんど覚えていない。
検定って2度目でも緊張ハンパない。
【ロビーのモニターに合格者表示されます】
ドキドキドキドキドキドキ…
ドキドキドキドキドキドキ…
何だよ、この間の長いこと。
モニターに…あった‼︎2人とも。
【裕二、受かったよ〜😭】
【俺もだよ〜良かったよ〜😄】
何で泣いてるんだ。美咲は。ここは笑顔だろ。
【良かったね、2人とも】
【ありがとうございます。みさきさんのグローブのおかげです。操作しやすいのなんのって】
【それ合格祝いね】
それを聞いた美咲は、
【えー、これ古い。もっと新しい何かを】
お、お前、バイク貰っておいて、このグローブで合格出来て、なのに図々しいだろ。
【美咲ちゃん、同じ名前だから許す!じゃバイクのプロテクター買ってあげる。となると、裕二もだよね】
【えー、それチョー嬉しい。ありがとうみさきさん】
だから、図々しいって。美咲。遠慮しろ。
【俺はいいですよ。このグローブがあれば。記念になるので大切に使わせてもらいます】
今年の夏はたくさんの経験出来た。
いろいろな人(素敵な女性達含めて)との出会いも。もちろん美咲との大切な時間も経験出来た。
こうやって大人になっていくんだ。
……………あの夏から2年後の夏…………
俺はユキさんのお店で毎年通りバイトを。
なんだかんだ通年で。春は花粉症で辛いけど室内だし、夏ははるとさんの手伝いってことでバイト入ったはずなのにレイジさんと言うイケメンを売りにする人が後をついでジェットのインストラクターをしている。
はるとさんは、なんか仕事の関係で長期出張。本当にそうなのか?
とりあえず来年は正社員としてここに就職する予定だ。そのためにほぼ勉強していないのだから。それは学生として言い訳にはなるな。
美咲とは、それぞれ異なる方向に。美咲は大学に行くために学費を貯めながらほぼ全ての時間を勉強とバイトに。でもここではない。
効率を考えるなら近場にするよな。勉強との両立は難しい。俺は就職先がこの海のインストラクターだからいいけど。
美咲には時々偶然会うことがある。でも忙しいので挨拶くらい。自然消滅ってやつだね。
2年前の夏は最高の思い出となっている。忙しいのは時間を充実してるってことだ。ここにはバイクで来て、海に携わるバイトをしている。後はそこそこで卒業出来れば。
【はるとさん、戻ってこないですね。長期出張ですよね?】
ユキさんは、この質問をすると笑顔で、
【自由人だからね。あてにならないよ。来年は君がいるからね。頼りにしてる。レイジは掛け持ちで抜けてるとこもあるんだよね】
不思議と、るいさんのことも何も言わない。
ここの仕事は難しいのかな?他にもバイトの人いるみたいだけど。専属はユキさんのみ。
【ユキさんはどこにも行かないでください】
【なにそれ?なんか恋人みたいな言い方で嬉しいけど。あっ、裕二くんから見ればお姉さんか。年齢的にも、知り合ってからの期間も考えればね】
ユキさん、寂しいよな。支えが欲しいよな。
【ユキさん、俺、美咲とは自然消滅した感じです。なので資格あると思いますが、来年卒業したら、その、あの、えーと…】
ユキさんは、近づいてきて、覗き込むように、
【私と付き合ってくれるの?裕二くん】
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