第36話 卒検

 これは忘れよう。とにかく後悔しないことだ。誰にだって挫折はある。


 挫折を知ってる人間は強くなれる。これは人生において貴重な経験なんだ。


 悔しさをバネに頑張ろう。気負いせずリラックスその先にもリラックス。


そんなんで、


卒検落ちました〜


 すかさず予約、補習を終えて2度目の卒検申し込み。次受かれば夏休み中に免許取れる。


 美咲は、当然受かって…とならないのが不思議。俺だけでなく美咲も。


【二人してなんで仲良く落ちてんの!】


 もう既にみさきさんはお店にバイクを2台置いて来てくれて、当然卒検落ちた時はそのバイク乗って帰ってくれて。ツーリング行けずお怒りのようだ。


ユキさんは、


【夏休み中ならね、何回でも受ければいいよ】


 ユキさんは優しい。でもね、俺達は日程的にあまり余裕ないんです。免許更新は平日限定で次受からないと。はるとさんは無関係、無関心なようで、


【裕二くんさ、学校卒業したらこの仕事を本気でやってみない?もちろん無理とは言わないけど、俺もいつまで出来るか解らないから】


【教習所の卒業の話から今度は学校の卒業ですか?ところではるとさん、ここ辞めるんですか?それこそユキさんどうするんですか?るいさんのことも教えてくれないさ、何か隠してませんか?】


【ん、それはごめん。ちょっと理由が、それとユキさんは大丈夫。美咲ちゃんもいるし、でもさ、俺の仕事は免許いるだろ?それに講習も受けないとならないし、年々厳しくなってる。事故なんて起こしたらそれこそ大変だからね。そういうプレッシャーのある仕事だけど、お客さんの笑顔見るとね】


【解ります。この海を走る楽しさ、無人島、最高ですよ。解りました。ここに決めます】


安易に決めてしまったけど、俺。


はるとさんは立ち上がり、


【ありがとう。これで心置きなくって、いや、よろしく頼む】


はるとさん、何か隠してるな。


聞くのはやめておこう。


【えっ、裕二ここで働くの?バイトでなくて】


美咲はびっくりして聞いてきた。


【何よりもここで海を楽しみたい。ずっとずっと願っていたことだからさ】


 まだずっと先のことだけどね。道筋は立てておかないとね。


【仕事になると簡単じゃないかもよ。じゃ、私は…大学に…どうしようかな〜】


【美咲、俺は元々、大学行くつもりないから。お互い何してもいいんじゃないかな。それに、この先解らないだろ?】


【そうだけど、裕二と別れるとか考えてない】


【もちろん。俺だって。美咲は好きなことして、俺もここで働くことは自分に合ってると。それにこの店大好きで、気に入ってる】


なんか、卒業のこと話してると寂しくなる。


夢を見て卒業したいからね。


ユキさんが、


【はるとくんさ〜若い祐二くんに無理言ってない?それに何考えてるの?】


はるとさんは黙っていて、困ってるようだ。


【ユキさん、俺は嬉しいですよ。こんな願ったり叶ったりなんてそうそう無いです】


【裕二くん、無理してないならいいけど】


【大丈夫です。無理してません】


 はるとさんのこの日の行動は後で全てが解った。俺の決断も間違えてなかったことも。


【美咲ちゃん、裕二くんのことは私が見張っておくね。何かありそうならすぐに止める】


【ありがとうございます。安心ね…って、思えるわけないじゃん!誘惑多いからな〜ここの人達って】


ユキさん、舌を出して、


【てへっ❤️】


 ユキさんとも絶対に裕二と2人きりにはさせない。そう固く誓う美咲でした。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る