第4話 Mission 下着を穿かせる

 ばーちゃんが不思議がった。

「なんで、女物の下着がいるん?」

「えーと、女の子がいるんだ。部屋に」


 かなり無理がある説明だと自分でも思う。いきなり朝から家に女の子がいるなんて変だよね。でも少々ボケている僕のばーちゃんだから受け入れてくれると思う。


「ま、浩介こうすけ! あんた彼女でもできたか? 連れてきたの?」

「うん、まあそんなもの。たのむ今すぐ。はい、財布」


 ほら、セーフだったでしょ。怪しまれなかった。

 でもばーちゃんには申し訳ない。買い物に行かせちゃった。


 少ししてから、ばーちゃんが帰ってきた。

 よし、ちゃんと買ってくれたよ。

 ショーツの色、黒か~。ま、何でもいいか。

 僕は部屋に戻った。


「はい、これ穿いて。これも着て。できる?」

「できない……」

「……」


 いや、できないって言われてもですね…… 

 中身、犬だもんな~ できないよね~ のどがごくりと鳴ってしまう。

 仕方が無いですよね~ じゃあ本当に仕方が無いけど僕が穿かせるか。


「うそ。できるよ」


 ―― ガクッ

 おーい。うそつけるんかーい。

 これはもしかしたら『モニタリング』なのではないか? キョロキョロとカメラを探す僕。


「じゃあ、ちゃんと穿いてね!」


 カメラはない。僕は安心して部屋から出た。女の子は自分で下着をつけた。

「はーっ」ようやく一息ついたのでため息もついた。天使が死んじゃう。



 ◇ ◇ ◇



 僕は女の子と話をすることにした。


「それでだ。ふせポーズで座っている君。元ロクセットの君だ!」

「はい?」


「これからどうするの?」

「どうもしません」


「言葉わかるんだねえ。何でさっき逃げたの? 茂みで待っててって言ったのに」

「遊びたかったからです」


「困るんだよ。まあいいや、これから人間やっていけんの? ちゃんと」

「わかんなーい」


「わかんないじゃないっ」

「ここに居させてください。私んだから」


 そうね。ここはロクセットの家でもあった訳だ。間違ってはいない。


「いいけどさ、色々見つかるとまずいわけ。家族でもないんだから」

「れっきとした家族ですよ私は。でしょ? 浩介」


「ロクセットは確かに家族だった。でも君は……」

「家族です!」


 そのまん丸の目で見ないでおくれ。ショーツからはみ出した尻尾も振らないでおくれ。こいつはやっぱりロクセットだ。


「わかった、わかった。家族と言うことにしよう。かなり無理があるけどね」

「私、浩介の妹ちゃん?」


「そうだな、とりあえず妹ということにするか。外出る時はその尻尾隠せよ」

「ワン!」

「わん?」


「間違っちゃった。うん、だ」


 先が思いやられる。


 ばーちゃんから朝食コールが入った。

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