Ⅲ年 「選任」 (1) 駿河が良いと思う
【ここまでの粗筋】
主人公「駿河轟」は「応援団」に所属する中学三年生。
厳しい日常を同期と支え合いつつ、「中間管理職」の厳しさを「ベーデ」と共に乗り越え、気になる存在「ヨーサン」とも近しくなることが叶った日々。
新学期を迎え、愈々最終学年となる彼等の一年が始まる。
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春休みも終わりに近づいた三月下旬、僕ら応援団の新三年が団室に顔を揃えた。補習最終日の試験成績も出て、応援団に残れるか否かがはっきりした日だ。幸い、全員が成績基準を達成して顔を揃えた。
司会役は、これまで二年責任者だったセージュン。
「ま、一先ず全員団に残れたということで、お疲れ様。」
皆、一様にほっとした表情をのぞかせていた。
「それじゃ、先日、卒業式の時に、末長前団長からお預かりした、新規幹部案の封を開けます。」
全員が緊張する中、机の上、真ん中に置いてあった末長さんのサインで封緘された白い分厚い封筒にハサミが入った。
中からは、これまた真っ白い厚手の便箋が二枚。
「では、読み上げます。」
《次年度 幹部 案
・団長
・副団長 男子
・副団長 女子
・リーダー部責任者
・女子部責任者
・女子技術責任者
・渉外責任者
・会計責任者 真田かほり《カーチャン》
・旗手長
・新人監督
・広報責任者
・企画責任者
・吹奏楽部責任者
・吹奏楽部副責任者兼主任指揮者
二年以下、下級生の各責任者については、当年度三年団員が選任すべきこと。
なお、本案は当年度三年団員において異論あるときは、此の限りではない。 以上。》
です。」
セージュンが読み上げ終わり、皆に便箋の表面を見せてから、バインダーに挟んで回覧し始めた。
「さて、最後の《なお書き》の通り、本案に異論があれば、これに従う必要がないのは、例年通りということ。其処で、どうするか。また二年以下の責任者をどうするか。其の二点が今日の議題だ。」
セージュンは、案が少し意外だったような雰囲気で議事を進めた。
「私は異論あり。」
珍しくベーデが口火を切った。
「末長さんは、団長として確かに目の届く人だったけれど、私たちの同期同士の関係まで分かっていた訳でもないわ。」
「俺も同じだな。」
タイサンが続いた。
「自分たちのことは自分たちで決めることだ。同期のことは同期が一番よく知っている。」
「そうねぇ、言われた通り、なんでもかんでも其のまんま受け容れるっていうのは、しっくりこないかな。」
デンが後押しした。
「みんなもそうなのかな、私自身の役職とかそういうのは別として、此のまんま受け容れることには私も反対だけど。」
コーコが回覧し終わった原案を手にしながら一同を見回した。
「じゃあ、案を其の儘受け容れることに反対の人は挙手して。」
セージュンの決に、全員の手が上がった。
「分かった。では、白紙から始めるということで。…具体的な決定方法について提案のある人は?」
「立候補と推挙。」
ベーデが口を開いた。
「立候補で異論が無ければ仮決定。勿論、なぜ末長さんがその人選をしたのかまで考えて。同時に推挙があれば他薦もどうか知ら。最後にまた全体を見渡して意見を言える余地を残しておけば?」
「
「意義ナシ。」
「では、先ず立候補から受け付けるよ。」
「はい、私。
コーコが真っ先に手を上げた。
「内村さんの
「意義ナシ。」
「吹奏楽部の二役は、其の儘で良いよ。」
二人で何やら相談していたカーサマとヨーサンのうち、代表してカーサマが発言した。
「意義ナシ。」
「俺、
ケーテンが声を出した。
「俺も
ノスケが続き、
「私も
さらにカーチャンが続いた。
「では、俺は、
ヤーサンが声を上げ、
「ならば、俺は、
セージュンが続いた。
其処まで立候補には異論が出なかった。
「残るは
セージュンが、六つの役職を黒板に列挙した。
「あたし、
デンが口を開いた。
「私は
ショコがベーデに了解を得ようとする。
「理由は?」
ベーデは目をつぶって腕組みをした儘、椅子の背もたれに身を任せてショコに問い糺した。
「私は、新人の時から
「…。良いわ。じゃ、私は
ベーデが目を開いて納得した。
「さ、残ったのは
セージュンが促した。
「俺は、
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