第66話 リドル部屋の大ボス
「あっ、あれが大ボスかな……何か強そう、これはこっちも編成考えなきゃ。傷付いてる装甲クモを送り戻して、死神クモを呼ぼうかな?
スフィンクスは、デビュー戦がボス戦で大変だけど頑張って!」
巨樹トレントは、
2体の敵は、朔也が戦闘の準備をしている間にこちらをロックオンした模様。トレントはその身体を振るわせて、生い茂った枝から従者を召喚して来た。
ソイツはどうやら【大芋虫】のようで、しかも2体もいる。大蛇と一緒にこちらへと向かって来て、これは思った以上に手強そうな大ボスたちだ。
それでも召喚されたC級の死神クモは、それらをただの獲物としか思っていない心強さ。大芋虫は死神クモに任せて、遠隔部隊はとにかく大蛇に少しでもダメージを与えに掛かる。
妖精のお姫も、魔玉を投擲しての攻撃参加を決め込んでいた。
そして進み出たスフィンクスの獅子娘さんが、華麗にブロックにと立ち塞がる。いきなりの咆哮と炎のブレスは、D級とは思えない威力を示してくれた。
大蛇も咬み付き技から、その太い胴体で絞め殺そうと狙って来ているよう。獅子の敏捷力でそれを避けつつ、団体で1つの獲物を狩りに掛かる朔也チームの面々である。
そこに、あっさりと大芋虫2体を倒し終えた、エンと死神クモが乱入して来た。朔也も『連射式ボウガン』からショートソードに持ち替えて、接近戦を挑む構え。
遠くの巨樹トレントは、それを眺めながらゆっくりとした足取り(?)で近付いて来ている。いや、また枝葉を揺らして召喚技を使った気配が。
接近戦に忙しい朔也たちは、それに気付かずに大蛇の牙から逃れるのに必死。恐らく毒持ちの大蛇は、恐ろしくタフで大勢に囲まれてもヤル気は一向に衰えない様子。
そこに乱入して来たのは、何と迷彩モードの敵の一団だった。朔也も突然体に振動を受けて、思わずスッ転びそうに。カー君の警戒の鳴き声も、一歩及ばすチームに動揺が走る。
それに怯まない死神クモが、迷彩の敵を1匹仕留めたようだ。朔也も慌てて『魔力感知』を使用、すると周囲に甲虫らしき影を2匹も発見!
先ほども発見に苦労した連中だ、まさかここでも出て来るとは完全に想定外である。そことそこにいるとの朔也の声に、エンがすかさず反応して1匹は即座に倒す事が出来た。
もう1匹を何とか朔也が倒して、これで新たな敵は全部排除した形に。それにしても、向こうのボスも前衛の大蛇に後衛の巨樹トレントと良い連携である。
こちらも負けていられない朔也チームは、まずは死神クモが連続技で大蛇の右目を潰した模様。死神クモの脚はかなり鋭くて、この鋭い連続突きは死神の異名にピッタリだ。
「よしっ、ようやく大蛇の動きが緩くなって来たっ! このまま押し切ろう、何とか僕が止めを……」
そう朔也が言い終わらない内に、エンの逆手持ちの剣の一撃が大蛇の脳天に突き刺さった。さすが歴戦の戦士……こんなトリッキーな敵を相手にしても、しっかり仕留める能力の高さは称賛に値する。
止めを持っていかれた朔也は、何とか気を取り直して残ったボスを見遣る。一応自ら動く事が可能なトレントは、根っこを器用に動かしながらこちらに接近中。
とは言え、その動きは素早くないし大きな標的にしか見えない気もする。厄介なのは召喚技だけだと思うけど、その点はどうなのだろうか。
試しにと、朔也が遠隔攻撃を指示してみたら、ソウルの炎攻撃はやっぱり嫌みたい。青トンボの風のカッターも、枝を切られてダメージは通った模様。
それを見たスフィンクスの獅子娘さんが、自分もやってやろうと思ったのだろう。近付いて炎を撃とうとした途端、トレントから蔦の鞭の反撃がやって来た。
驚いて回避する獅子娘さん、どうやら近接攻撃の手段も敵は持ち合わせていた模様。ただまぁ、やっぱりその歩みは遅いので良い標的にしか見えない。
朔也とお姫は、相談して手持ちの魔玉(炎)を投擲し始める。それを受け、こりゃヤバいと思ったのか、巨樹トレントも最後の
枝ゆすりの召喚で出て来たのは、迷彩カメレオンが2体と蔦型のプラント系が2体だった。カメレオンはともかく、蔦型のモンスターはこれまた微妙な選択である。
何しろコイツも、移動手段の無い待ち伏せ型の敵なのだ。
「あっ、カメレオンがそっちに2体いるよっ……蔦型の方の止めは僕が刺すから、そっちはエンと死神クモでお願い。
あっ、ありがとう獅子娘さんっ!」
今や燃え盛る巨樹トレントは、完全に虫の息でHPもあと僅かって感じ。それを無視して、召喚された蔦型の敵を拾って来てくれた獅子娘さんはまるで忠犬のよう。
それを一緒に始末して、見事カード化にも成功した朔也はご満悦な表情。巨樹トレントに関しては、あまり欲を出して止めにはこだわらない事に。
あの炎に巻き込まれてダメージを負うのは、いかにも馬鹿らしい所業である。そんな感じで2分後には、HPが尽きたのか綺麗に消え去ってくれたボスの片割れであった。
これでどうやら、リドル部屋の探索は全て終了みたいである。ボスの倒れた奥には、宝箱と退出用のゲートがいつの間にか湧いていた。
それを見て祝い合う朔也とお姫は、まずはドロップ品の回収を始める事に。ボスはさすがに魔石(中)を落としてくれたようで、これが2個にそれから短剣と杖が1つずつ。
どうやらどちらも魔法アイテムのようで、これは豪華なドロップ品である。宝箱の中身にも期待出来そうと、朔也とお姫はいざ箱を開けて中身の確認作業。
まず目に入ったのは、奇妙な形状をした義手だった。肩から指先まで、まるでミイラと機械の配線を合わせたような形をしている。
朔也がそれに触れると、ソイツは勝手にカード化してしまった。
他の品も豪華で、まずは魔結晶(大)が3個にカード強化の『橙蜀水晶』が1個。ステアップ果実が1個に、魔玉(闇)が7個に薬品瓶が何本か。
薬品の中には上級ポーションや初級エリクサーも混じっているようで、これらは売れば1本数万円以上する高級薬である。他にもMP回復ポーションも3本入ってて、こちらも普通に有り難い。
後は金貨2枚と銀貨が70枚以上、それから小学生の計算ドリルが数冊ほど。本当にダンジョンのこだわりって良く分からない、まぁ回収はするけど。
最後のボスはかなり強かったけど、何とか倒す事が出来て報酬も良いモノがたくさん貰えた。後はその使い方を、ノーム爺さんに相談して決めて行くだけ。
特に義手とか、これはエンに使う用?
『牙の短剣』(毒付与)
『トレントの杖』(魔力+3)
【巻き蔦プラント】総合E級(攻撃E・忠誠E)
【摩訶不思議な義手】総合E級(攻撃E・耐久E)
そんな感じで、無事に“訓練ダンジョン”のロビーフロアに戻って来れた朔也チームである。それから待っていたノーム爺さんと薫子に、無事な帰還を報告する。
ノーム爺さんは、いつもよりは酔っ払い具合は酷くない模様で一安心。薫子とのお話が、よっぽど弾んで楽しかったせいなのかも知れない。
そこからは、朔也の探索の報告を聞きながらのティータイム。もっとも、薫子が
アカシア爺さんは、相変わらずお酒のボトルを手放す気配はない模様。それでご機嫌ならいいのかなと、朔也は特に気にする素振りは無し。
回収品の報告をしながら、拾った魔石を全て管理人の爺さんへと返却する。ただし、魔結晶やその他の品については、錬金や今後の探索に役立てるつもり。
その辺を質問しながら、錬金師匠のノーム爺さんにお伺いなど。
「それで今回も、色々とカードを回収出来たんですけど。錬金合成するんで、アカシア爺さんに色々とアドバイスして欲しいんですよ。
お願いできますか、お爺さん?」
「まぁ、ええじゃろう……お前さんには、酒の差し入れも毎回して貰っとるしのぅ。どれ、今回合成するカードを出して見せろ、小僧さん」
朔也は既に50枚近く集まった自分のカードを、種類別に丁寧に並べ始めた。それを興味深そうに眺める薫子と、思案気な顔付きのノーム爺さん。
取り敢えず、今回は合成燃料の魔結晶も中が10個に大が3個と集まってくれた。そんな訳で、まずはウォーミングアップに魔結晶(中)を使っての合成を指示される朔也である。
「まずはこの辺りじゃな……一番簡単な奴じゃ、失敗し様も無いわい」
「そう言われたら、緊張しちゃうんだけど……」
とは言いつつ、確かに同じ種類のカード合成は基本ではある。【洞窟コウモリ】と【大ダンゴ虫】、それから入手したての【迷彩ナナフシ】と【迷彩カメレオン】を合成する。
【洞窟コウモリ(中)】総合F級(攻撃E・忠誠F)
【大ダンゴ虫(中)】総合F級(攻撃E・忠誠F)
【迷彩ナナフシ(中)】総合F級(攻撃E・忠誠F)
【迷彩カメレオン(中)】総合E級(攻撃E・忠誠E)
どれもサイズアップして、攻撃力も微妙に上がってくれたようだ。迷彩カメレオンに関しては、忠誠がFからEになって使い勝手が良くなってくれた。
続いては、少し難易度が上がって名前違いだが似た種類の合成へと進んで行く。例えば【痩せウルフ】【まだら狼】【洞窟狼】を合成して、更にコボルトと掛け合わせるとか。
それから【密林モス】を合成して、追加で【迷彩蝶】を掛け合わせるとか。後は入手したての【巻き蔦プラント】と【人喰いツタ】を合成するとか。
なかなか癖の強そうな合成依頼だが、結果は割と悲惨だった。狼系は2度も失敗して、結果で言うと残ったカードは1枚も無しと言う。
【雑種コボルト(槍)】まで消失してしまって、何ともションボリな結果となってしまった。ただし、後半の2つは何とか成功して、ホッと一息つく朔也である。
とは言え、戦力アップには微妙なユニットが増えただけの結果に。
【迷彩モス(中)】総合F級(攻撃E・忠誠F)
【人喰いツタ(中)】総合E級(攻撃E・忠誠D)
「それじゃあ、いよいよ魔結晶(大)を使っての本番と行こうかの……フムッ、まぁ大丈夫じゃとは思うが、万一カードを喪失しても落ち込まん事じゃ」
「えっ、いや……エンとかいなくなったら、それは落ち込むどころの騒ぎじゃないですよっ。剣とのカードはどうでも良いけど、そこだけは譲れないかな」
ノーム爺さんが指し示す先には、【負傷した戦士】と【摩訶不思議な義手】のカードもしっかり含まれていた。後は【古びた宝剣】と【斬鉄剣】、それから【装甲クモ】と【カーゴ蜘蛛(中)】を合成しろとの事らしい。
ゴネる朔也相手に、ノーム爺さんは仕方無いなって表情である。そして結局は、エンの合成は熟練のノーム爺さんが担ってくれる流れに。
喜ぶ朔也だが、残り2つも成功の確率は高くないと聞いて急に不安になってみたり。
――さて、そんな合成の結末は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます