第61話 宝物庫(偽)
いよいよ“洞窟エリア”の4層に到着して、気を引き締め直して探索する朔也チームである。まずは突き当たりの小部屋で、大蛇4匹を倒してカード化にも成功。
幸先が良いねと、麻痺のショートソード+1の使い心地を味わいながら呟く朔也。コイツも毒持ちみたいだったけど、箱入り娘がよく抑えてくれていた。
【洞窟スネーク】総合E級(攻撃D・忠誠F)
下手な相手なら丸呑みしそうなこの蛇は、蛇嫌いの朔也からすれば積極的に使いたくはないユニットである。従兄弟たちの運用を散々けなしていたけど、やっぱり好き嫌いが存在するのは仕方がない。
ついでにムカデも大嫌いで、例え強いユニットでも絶対に使わないと決めているレベル。なるほど、これは確かに従兄弟たちを
それはともかく、続いて出遭ったのは精霊系の敵だった。土系の魔法をバンバン撃って来るコイツは、なかなかの強敵でこんなユニットならぜひ仲間に欲しい。
残念ながら、そいつは青トンボの風の刃に怯んだところを、接近した白雷狼に倒されてしまった。近付いて来ない敵は、なかなか朔也も止めを刺せないのでカード化は難しい。
そいつはノーム爺さんに容姿がよく似ていて、ひょっとしたら同族だったのかも。アカシア爺さんも、分類的には向こうの世界の住人だし、そう言う事もあるかも知れない。
その次に遭遇したのは、ようやくのリベンジ対象のコボルト集団だった。容赦なく10匹以上いて、しっかり狼やコウモリも混ざっている。
ひょっとしたら、敵のコボルトにテイマー職でもいるのかも。案の定、先制で襲い掛かって来た狼とコウモリたちを相手取りながら、そんな事を考える。
相変わらず酷いのは、そんな狼達を使い捨てにコボルト弓兵や魔術師が遠隔攻撃を仕掛けて来る事だ。これにはさすがに苦戦、何しろ今回は盾役のコックさんが不在なのだ。
朔也も前に出て、とにかく麻痺のショートソード+1を振り回して狼の数を減らす。そうこうしていると、作戦通りに向こうの集団で魔玉が連続で爆発する音が。
お姫とカー君が、見事にかく乱を成功してくれた模様である。今回は炸裂の果実も渡してあるので、ダメージも結構入っていると思われる。
「よっし、いいぞっ……狼さん、続けてヒット&アウェーで敵陣を翻弄して!」
朔也の言葉に、嬉々として敵陣へと駆けて行くC級ランクの白雷狼である。その姿は、格下相手に負ける訳はないぜと自信に満ちている感じ。
朔也も負けずに、敵の狼とコウモリ軍団を全て叩き切る事に成功した。お陰で狼とコウモリを、1枚ずつ追加でカード化に成功してしまった。
次いで連射式ボウガンに持ち替えて、射撃ダメージを与えながらの距離詰めを行う。隣で盾を構える箱入り娘が、とっても頼りになるけど敵の反撃は来ず。
青トンボも、遠隔攻撃で順調にキル数を増やしているようだ。人魂も同じく、ただし弓スケの活躍は残念ながら精々が賑やかしって程度。
またもやカード化に成功した感触があったので、朔也のボウガンでコボルトの1匹を倒したっぽい。とは言え、白雷狼のキル数は軽くその4倍はあるみたい。
10体近くいたコボルト集団は、そんな感じに数を減らして行く。さすがC級ランクは格が違う、と言うか白雷狼は明らかに戦闘特化したユニットの模様。
例えばお姫やカー君は、それとはまた別で他の能力が優れているせいで高ランクになっている訳だ。そんな能力を取っ払って、戦闘のみに特化したのが白雷狼らしい。
そう言う意味では、エンもそんな戦闘特化ユニットには違いない。F級なのにB級くらいの戦闘能力は、少々やり過ぎな気もするけど。
とにかく、そんな白雪の活躍で程無くコボルト集団は消滅して行った。
【コボルトテイマー】総合E級(攻撃E・忠誠E)
そしてやっぱり、敵のコボルト集団の中にはテイマー職がいたようだ。今回運よくゲット出来たけど、強さとか使い勝手は定かではないと言う。
それから、白雷狼だが白雪と名前を付ける事に決定した。そんな白雪のお陰で、見事にリベンジも果たせたし自信にもなった気がする朔也である。
「ふうっ、何とか勝てて良かったよ……優秀なカードが1枚増えただけで、あんなに簡単に問題は解決してくれるんだなぁ。
それにしても、白雪は強いねぇ」
褒められた白雪は嬉しそう、朔也に顔を擦り寄って撫でろと催促して来ている。どうやら忠誠心も高いみたいで、本当に優秀なユニットである。
これを気前よくくれた新当主には、本当に感謝しなければ。それよりカー君が、魔石やドロップ品を拾い集めてくれている。その中には、魔石(小)も混じっていてまずまずな儲けみたい。
朔也も一緒に回収を行って、改めてユニット配置について考えを巡らす。朔也の持つカードの中では、間違いなくエンと白雪が攻撃力に関しては抜け出ている。
その次が死神クモと殺戮カマキリだろうか、まぁ殺戮カマキリは忠誠度が低いので言う事は聞かないだろうけど。C級ランクでこれなのだ、ランクB級以上は一体どんなんだって感じ。
まぁ、そんなカードに巡り合うのは当分先の事だし、ここで考えても仕方のない事だ。祖父の遺産カードにしても、A級とかS級なんて使いこなせる訳がない。
そう思うと、この祖父の遺産カードの回収任務自体に疑問が芽生えて来る朔也である。それから四十九日が過ぎた時、この遺言がどうなるのかも全くの不明と来ている。
今は偉大な祖父の遺言に従っている、朔也と従兄弟たちだがその先は不透明と言う。朔也としては、この“夢幻のラビリンス”を含めた探索任務は、なかなか楽しめてはいるのだが。
この生活をずっと行うとなると、さすがに疲弊してしまう気がする。
そんな事を考えながら、取り敢えずの小休憩を終える朔也である。されからカー君に探索の再開を告げて、あと30分程度は頑張ろうかと仲間に告げる。
もっとも、それに返答のゼスチャーをしてくれたのは、妖精のお姫だけだった。それでも気を良くした朔也は、何か発見してやろうと気合いを入れて進み始める。
果たして、その気合いが通じたのかは定かでは無いのだが。カー君がこの先を左に曲がった突き当りに、怪しいモノがあるよと伝えてくれた。
何だろうと角っこから覗いてみると、そこには6畳くらいの小部屋があった。入り口は大きく開かれていて、中には大きな宝箱が置かれている。
いかにも怪しい……こんな洞窟内に、しっかりとした造りの小部屋なのが違和感バリバリである。その中に置かれた宝箱は、8割がた罠に間違いなさそう。
隣のお姫を窺うと、空中で両手で大きくバツを描いていた。やっぱり罠は確定だろうが、さてその対処法はどうすべきだろう?
とか思っていたら、お姫は鞄から魔玉を取り出す構え。
どうやら有無を言わさず破壊行動に至るらしく、朔也は慌てて箱入り娘に入り口で盾を構えて貰う事に。宝箱のモンスターと言えばミミックが有名だが、そんな感じだと思われる。
それなら遠慮はいらないと、お姫によって放り込まれた魔玉(炎)は落下地点で派手に燃え上がった。その途端に、奥の宝箱がバカッと口を開けて
その標的になったのは、入り口から様子を窺っていた朔也と箱入り娘だった。両者は吸い寄せられたように、いつの間にか推定ミミックの目の前へとワープ移動を果たす始末。
慌てた朔也は、思わずパペット兵の箱入り娘に盾での攻撃を指示する。魔玉の炎はいつの間にか消えており、その点は巻き添えを食わずに良かった。
初めて目にしたミミックだが、開けた口には鋭い牙がびっしり生えていた。これに咬み付かれたら、かなり痛そうで腕など引きちぎられてしまいそう。
怖過ぎるモンスターだが、どっこい箱入り娘の盾の扱いも上手かった。偶然かも知れないが、盾が丁度ミミックの口の開閉を邪魔するつっかえ棒の役割を果たしている。
この隙を逃すまいと、朔也はショートソードで柔らかそうな敵の内側をメッタ刺しにする。宝箱の外殻は相当に硬そうで、この機会を逃すと不味いとの直観である。
そんな朔也の必死の願いが通じたのか、大暴れしてこちらに咬み付こうとしていたミミックがようやくの活動停止に。その途端に、何故か消え去って行く小部屋であった。
「あれっ、小部屋まで消えたのはどういう理屈……? あっ、カード化したよ、お姫さん」
そう言いながら朔也は、洞窟の地面に落ちたカードを拾い上げる。それと同時に、どう言う理屈なのか宝箱の中身らしきモノが周囲に散らばっていた。
鑑定の書が2枚に魔結晶(小)が3個、ポーション瓶が2本に銀貨が30枚程度。魔玉(土)が5個に、巻物3枚は帰還の巻物と強化の巻物(劣化)だろうか。
【宝物庫(偽)】総合D級(攻撃E・耐久C)
結構な回収品だったけど、一番の報酬はこのD級カードだろうか。まさかミミックだけじゃなく、宝物庫自体が仕掛けだったとは思わなかった。
とは言え、洞窟の中にあの構造物は怪し過ぎだったのは本当。そしてこのユニットを、一体どうやって運用すればいいのか見当もつかない朔也であった。
何となく区切りの戦闘があったので、今日の“夢幻のラビリンス”の探索はこれで切り上げる事に。回収出来たカードは、D級ランクを筆頭になかなかのバランスだと思われる。
帰還の巻物で1層へとワープして、仲間たちを順次送還して元の執務室へと戻って行く。そこにはいつもの執事とメイドたち、それから従兄弟のポッチャリコンビがいた。
それも悪くはないけど、カード回収率や魔石やアイテム回収率はどうしても落ちてしまう気が。まぁ、その辺は朔也がどうこう言う
向こうもそう思ったのか、ひと睨みしてからゲートへと揃って消えて行った。その装備だが、春海の方はいかにも経験者っぽい良装備に見える。
光孝の方もそれなりに金をかけているようで、ソロでも充分に通用しそうではある。何しろ召喚スキルは、探索者としては破格の能力なのだ。
「お疲れ様でした、朔也様……
新当主の
「そうですね、それじゃあ今日のカード回収報告と……それから、魔石の換金をお願いします、
新当主の喝入れと言うより、腹違いの兄の
それがあんな反撃を喰らって、しかも新当主もその提案に乗ってしまって、奴らも相当に慌てた事だろう。自分達の我が
自分達を守る盾が
それを理解しているだけ、連中はまだマシな方なのだろう。
――そんな事を考えながら、朔也は換金のために隣室へと向かうのだった。
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