第60話 リベンジ探索に挑む
さて、この“洞窟エリア”も3度目だろうか。この前は4層でコボルトの大群に痛い目を見せられたので、
とは言え、前半は既に慣れたモノでサクッと体力やMPを温存して進むべし。今日はコックさんも不在なので、盾役も微妙に少ないし大変だ。
チーム内のアタッカー陣は、そう言うのをあまり気にしてはいないかもだけど。先制で遠隔攻撃を行う者達は、その逆に遠隔攻撃での反撃が怖いのだ。
そんな時に、盾役が2人並んでいてくれる心強さは捨てがたかった。まぁ、いない者を
具体的には、お姫は別としてエンと赤髪ゴブがアタッカー役だろうか。それから箱入り娘が盾役兼遠隔攻撃を
そのサポートに、人魂と弓スケと青トンボと言うメンツが揃う訳だ。それからカー君が、安定の斥候役を今日も頑張ってこなしてくれる筈。
そんな感じで、浅い層は気楽に探索を進めて行く朔也チームである。出て来る敵も一昨日に遭遇した、狼やコウモリやワームと定番の奴らばかり。
唯一1層で気を付けるべきは、やっぱりコボルト獣人だろうか。コイツ等は必ず群れを成していて、3匹の群れならまだ少ない方である。
とは言え、やっぱりランクF級の敵なので、遠隔である程度弱らせてやればそこまで苦戦はしない。エンも赤髪ゴブも、歯ごたえが無いなって表情である。
そんな中で、朔也が何とかカード化に成功したのが【洞窟コウモリ】だった。昨日購入した『連射式ボウガン』なのだが、コイツなら飛んでる敵でも射止めるのは比較的楽かも?
「凄いね、いい買い物だったけど……矢弾が流用出来ないと、あっという間に尽きちゃいそうだね。錬金合成で、このサイズの矢弾を合成出来たらいんだけど」
そんな朔也の愚痴を聞いて、お姫が健気にも撃ち終わった矢弾を回収に回ってくれている。とは言え、再利用が出来そうなのは確率的に半分程度だろうか。
なかなかに頭の痛い問題だが、戦力は確実に向上したと思う。それから『魔銀チェーンメイル+1』の性能だが、こちらは敵の攻撃を喰らってみないと分からない。
なるべくそう言う事態ににならない様に祈りつつ、朔也チームは無事に1層の探索を終えた。2層へのゲートに辿り着くまでに、稼いだ魔石は14個程だった。
カード化は結局1枚だけ、何しろ人魂と青トンボの魔法攻撃が絶好調だったのだ。赤髪ゴブなど、短弓しか出番が無いとあからさまに不満そう。
どうやら彼は、遠隔より直に殴り合いの喧嘩がしたいタイプみたい。魔法も使える筈なのだが、コスト的には温存が望ましいのは当然だろうか。
その逆で、エンはその辺の不満は余り顔に出さないタイプ。それでもご主人の朔也には、遠慮がないのかもっと敵をよこせ的な視線をよく送って来る。
アタッカー的なユニットは、こんな感じでヤンチャな性格が多いのかも。それはともかく、2層へと到着した朔也は特に陣形も変えずにそのまま探索を続ける。
幸いにも、カー君のお陰で敵の奇襲は気にせずに済んでいる。カー君はカラスなので、鳥目かと思ったが索敵能力は気配とかそっちを探るみたいである。
先手を取れるのは、遠隔攻撃の充実している朔也チームにとっては凄く有利である。穴倉に隠れていた大ダンゴ虫や、地中のワームも彼にとっては発見は朝飯前のよう。
そいつ等の討伐を譲って貰うのも、召喚主の
それでも2層では、【大ダンゴ虫】と【洞窟ワーム】の2枚のカード化に成功。魔石も微小ばかりながらも、15個ほど回収してまずまずの結果に。
他のドロップアイテムは、正直パッとせずで換金性の高そうな品は1個も回収に至らず。それでも2層の土から、お姫が素材っぽい石を拾って来てくれた。
ゴーグルで鑑定すると、それは属性石(土)と言うらしい。水晶などと錬金合成すると、魔玉になったりと色々と活用方法は多い素材みたいである。
朔也はお姫にお礼を言って、薫子の探索の同行の提案について考える。確かに賑やかにはなるだろうが、今のチームにもお姫が
喋れはしないけど、大事な相棒なのは間違いのない事実。今も何気に儲けに貢献してくれて、これで錬金のスキルも上げれると言うモノだ。
ちなみに、2層のコボルトは最大5匹で群れを成していたけど、そんなに苦労もせず撃破に成功した。盾役1枚はかなり怖かったが、弓スケもなかなか活躍はしてくれていた。
正直、F級のスケルトンである……期待は全くしてなかったのだが、火力として頭数に何とか入るって感じ。これも苦労して、合成で強化した恩恵だろう。
それ以上に人魂も活躍しているので、影が薄くなってる感はちょっとだけある。それでもコスト2MPと考えると、とってもお得な弓使いではある。
「さて、これで3層目だね……宝箱の回収も無いし、ここと次の層には期待かな? コボルトの群れの数も増えて来るし、気を引き締めて行かなくちゃね」
3層のゲートを潜って、周囲を見回してそう呟く朔也である。お姫もそうだねってリアクションで、アッチに進もうとお気楽に提案を持ち掛けて来る。
この“夢幻のラビリンス”の攻略だか、10日以上通って分かった事が幾つかある。つまりは入る度にランダムなエリアに飛ばされるし、そこをどう進もうとも自由なのだ。
最初は
老執事の
それより3層でいきなり、7匹のコボルト集団と遭遇してしまった。大慌てしているのは朔也だけで、チームの皆はそれ出たぞと攻撃を始めている。
朔也も慌てて攻撃に参加、『連射式ボウガン』はなかなかに使い勝手が良い。これは最大で3連射して、チャージに少し時間が掛かってそれからまた連射してくれる。
恐らく射程を犠牲にしているのだろうが、威力はそれなりにある。つまりは命中すれば、コボルト程度なら突撃は止まってくれる。
そこを近接武器で止めが理想なのだが、もたついているとエンや赤髪ゴブに取られてしまう。結局7匹もいたと言うのに、朔也がカード化出来たコボルトは1匹も無しの結果に。
「ああっ、結局カードが増えなかった……赤髪ゴブはアレだな、かなりヤンチャで近接攻撃を好む性格みたいだなぁ。まあいいや、次で頑張ろう。
みんな、そろそろ敵の集団の数も増えて来たから、気を付けて行こう」
朔也のそんな声掛けにも、反応するのはお姫のみと言う。まぁ、そこは仕方がないと割り切って、4層の探索を続ける朔也である。
次いでカー君が反応した突き当りの小穴には、大ムカデが4匹もたむろしていた。もちろんコイツは毒攻撃もあるだろうし、遠隔で仕留めるのが理想ではある。
とは言え、そう上手くも行かずに2匹が棲み処を飛び出して接近して来た。ブロックを命ずる箱入り娘は、パペット兵なので当然毒は効果が無い。
そこに飛び込んで止めを刺す赤髪ゴブだが、最後に反撃を喰らってしまったようだ。ヤンチャな性格が裏目に出て、彼の傷口は赤紫色に変色している始末。
もう1匹はエンが難なく倒して、ここでの戦闘は何とか終了の運びに。とは言え、傷付いた赤髪ゴブを治す術を持つユニットは、この中には存在しないと言う。
探索者が持つスキルにも、治療系のは少ないと聞いた気がする。そうなると、そんな特殊能力を持つユニットも希少となって来るのだろう。
何となくお姫に期待の眼差しを向ける朔也だが、小さな淑女は肩を竦めて無理っぽい表情。仕方なく、赤髪ゴブは送還して今日はお役御免に。
戻ったカードを見れば、体力低下と毒状態の掲示がハッキリと追記されていた。これがなくなれば、充分に休養がなされて再召喚が可能って事になる。
そんな訳で、少し早いが隊列を組み直そうと頭を悩ませる朔也である。お姫と相談して、まだ使った事のないユニットのお試しも兼ねてみようと言う事に。
この【白雷狼】は、確か新当主からもらったC級のカードである。強いのは分かっているので、敢えて後回しにしたユニットだが実際はどうだろう。
まぁ、赤髪ゴブの抜けたアタッカーの穴は完璧に埋めてはくれると思う。ただ、機動力がありそうなこのユニットが、今の待ちの戦術のこのチームにフィットするかどうかが問題。
そんな心配をしつつの白雷狼の召喚だったけど、実際の大きさにはちょっとビビる朔也であった。体高で大人の背丈はある感じで、こんなのに咬み付かれたらコトである。
そして次に遭遇した熊型モンスターとの戦いだが、試しにソロで戦わせた所アッサリ完勝してしまった。やはりスピードと咬み付き攻撃はもとより、どうやらこの子は雷を
体当たりで敵を麻痺させて、急所に咬み付く戦い方は堂に入ったモノ。
「す、凄いなぁ……この子はどうやって使うべきかな、やっぱり遊撃部隊? こっちの護りは箱入り娘に任せて、敵の遠隔部隊をこの子に頼むのがいいのかも」
お姫もウンウンと頷いているし、しばらくはそんな感じでやってみる事に。特に4層では、コボルトの群れは確実に大きくなって魔術師や弓使いが何体かいる筈。
そんな連中を素早く退治してくれたら、10匹以上の群れも怖くない気がする。ただし、自陣のアタッカー役がエンしかいなくなるので、朔也も
まぁ、それはカード回収の機会が増えるので朔也としては大歓迎ではある。敵と斬り結ぶ能力が、朔也には無いのが問題ではあるのだが。
そんなスキルが拾えないかなと思いつつ、素振りくらいは日課に組み込むべきかと悩んでみたり。探索者生活がこの先も続くようなら、それも考えるべきかも。
今は強力なユニット頼りで、止めに関してはおこぼれを頂戴している感じ。それでも未だに、カード収集率に関してはトップ3に君臨しているようだ。
他の従兄弟たちの手際が悪いだけとも思うが、この有利は活かすべしである。ついでに錬金でのカード強化も、恐らくは朔也だけが知っている技術な気が。
とは言え、昨日の対人戦特訓で見たユニットのように、巨人族や魅了スキルの強力なラミアとか、まだまだ有用なモンスターは多い。そんな奴らを仲間に迎えるのが、この先の課題ではあるが苦労しそう。
実際、朔也が収集したカードはF級が8割メインである。たまにE級やD級をゲットしてるけど、それもほぼ運が良かったなぁって状況でしかない。
朔也チームにもっと実力がつけば、ダンジョンももっと奥まで潜れるようになる筈。ただし、朔也も止めを刺す能力を伸ばさないと、カード化が出来なくて困ってしまう。
そんな事を考えていると、4層へのゲートを発見した。そして新しい編成のチームだが、強力ユニットのお陰でピリッと締まった感じがする。
この調子なら、4層のコボルト集団も軽く蹴散らせる気が。
――いよいよリベンジだ、そして本格的に4層を探索したい所。
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