第45話 洞窟エリア3層へ
1層の踏破に約30分ほど費やしたのは、まぁ予定通りと言って良いだろう。その間に追加でワームやコボルトの群れを倒して、回収した魔石(微小)は合計18個ほど。
カードについては、コボルト雑兵を1枚ゲットしたのみ。少し寂しい結果だが、それも仕方ない。カー君も洞窟のあちこちを調べてくれたが、宝箱は見付からず。
そもそもカラスの特性を持つカー君は、暗い場所の確認は苦手な様子である。逆に活き活きとしているのは人魂で、やっぱり彼は暗所での活用に適しているみたい。
とは言え、
懐中電灯は朔也の肩に
なかなかに忙しないけど、その辺は仕方がない……ついでにパペット2体への指示出しもあるので、探索中に考える事が多過ぎる。この辺も課題なのだが、良い代案は今の所は浮上せず。
「あれっ、この洞窟エリアの2層へは来た事あったっけ? 初日だったし、そこまで深くは探索しなかった記憶があるんだよね。
3層へは確実に行ってないよね、まぁ今日は最低でも4層へ向かう予定だけど」
そんな朔也の言葉に、ウンウンと頷く妖精のお姫である。ついでに昨日はレベルが上がらなかったので、レベルアップも出来れば期待したい所。
そんな感じで2層の探索を開始して、洞窟エリアを再び歩き始める一行である。相変わらず暗くて見通しの悪いエリアだか、幸いな事にほぼ1本道で分岐は少ない。
あったとしても、支道はすぐ行き止まりとなっていて、ワームや大蛇の巣だったりする感じ。そいつ等を全滅させると、たまに巣の中に魔玉や巻物を発見出来たりもする。
今回は強化の巻物(攻撃)と解毒ポーションを1つずつ、それから魔石(小)を4個と魔玉(土)を5個発見出来た。支道を3つ巡ってこれだけなので、まずまずと言った所だろうか。
モンスターに関しては、大ダンゴ虫は確か初見の敵の筈。丸まっての転がりアタックは迫力はあったけど、味方にしてもそんなに強くはない印象がヒシヒシ。
幸いな事に、3匹出て来た内の1匹を光の棍棒で潰す事が出来た。両手で抱えられるバランスボールより小さいサイズだったので、そこまで倒すのに苦労はせず。
そして、見事に1発でカード化に成功出来た。
【大ダンゴ虫】総合F級(攻撃F・忠誠F)
やっぱり雑魚モンスターで、がっかりした表情の朔也に対して。ドンマイと慰める妖精のお姫は、まだ2層だろと言いたい様子である。
確かに浅層の敵なので、そこまで期待はしていなかった。とは言え、次に遭遇した槍持ちコボルトとなると話は別である。コイツ等は、群れを成すのでたくさん集まりやすいのだ。
合成素材にはピッタリで、思わず剣の払いや斬り技にも力が入ると言うモノ。お陰で何とか、2匹だけだがエンに横取りされずに倒す事が出来た。
そして、その内の1枚のカードに何とか成功。
【コボルト槍兵】総合F級(攻撃E・忠誠F)
コチラも安定のF級だけど、まぁ弓ゴブ程度の攻撃力はあるようだ。この位なら、例えば1~2層の敵とも対等に戦えるし、汎用性も効くので使い勝手が良い。
まぁ、使うかどうかは微妙だけど……合成で強化出来れば、ワンチャン活躍の機会が巡って来る可能性も。少なくとも、見た目はゴブよりは随分と可愛かったし。
外見で使うカードを差別する気はないけど、やっぱり見た目は大事である。コボルトの見た目は獰猛なワンちゃんって感じだが、ゴブリンともなると醜悪な亜人顔なのだ。
お陰で、従弟連中の中でも使い手は1人も存在しない次第である。昨日の夜の対人戦特訓を見た限りでは、少なくとも1人も見掛けなかった。
その逆に、リザードマンやエルフなどは人気がある感じ。猛獣タイプだと狼や熊や、馬を使っている者も数名いたような気がする。確かに機動力は、探索者として大事かも。
朔也としては、最初は選べるほど召喚カードの種類は無かった。ところが今では合成素材に回せるほど、たんまりとストックが補充出来ている次第である。
それを更に増やすべく、2層の洞窟エリアを進んで行く。ところがそれ以上の敵とは遭遇せず、3層へのゲートを発見してしまった。
順調と言えばそうなのかも、1時間で3層なので目標の4層もほぼ確定である。さすがに4層辺りからは、手強いモンスターも出て来てくれる筈。
そこで狩りをすれば、使えるユニットと経験値が稼げるだろう。そんな訳で、朔也チームは少し休憩を取った後に3層へと突入を果たす。
そこはさっきより幾分か大きい、洞窟空間が広がっていた。
「わっ、ちょっと広くなった……分岐も多いかな、どっちに進んだらいいんだろう? 敵も増えて来るよね、気をつけな……。
わっ、さっそく狼が寄って来たよ、みんなっ!」
迎撃準備をチームに告げると、コックさんと箱入り娘が真っ先に従ってくれた。敵の狼の群れは、6匹程度いて中にはボスなのか1サイズ大きいのも混じっている。
こちらの先制攻撃にも全く
とは言え、
その代わり、やはり膝に受けた古傷(?)が痛むのか、間合いを詰める移動力は無いようだ。なので戦法としては、敵が剣の範囲に入って来るのを待つ迎撃タイプだろうか。
これで機動力もあればと思うと、本当にゾッとしてしまう。それだとこちらは楽で良いけど、カード化の機会はうんと減って逆にこちらが損をしてしまう。
などと思っている内に、狼の群れは掃討されていた。朔也も1匹仕留めたけど、残念ながらカード化には至らず。その代わり、毛皮素材が2枚ほどドロップしてくれた。
これも売れば2千円はした筈で、MP回復ポーション代くらいにはなってくれる。そう言えば、今朝は買い足すのを忘れてしまったけど、まぁ何事も無ければ足りるだろう。
午前中は新ユニットのお試しは計画してないし、MPが足りなくなる事も無いと思いたい。そんなお気楽な感じで、3層の探索を再開する朔也である。
そしてすぐに、壁を這う1メートル半サイズの蟲型モンスターを発見。何と大ムカデだ、余りの気持ち悪さに悲鳴をあげそうになるのをグッと
味方の人魂がそいつに気付いて、魔法の炎で燃やしてくれた。止めはパペット達に命じるが、この方法は何と言うか致命的に反応が遅くなってしまう。
やっぱり何か良い方法を探りたいけど、今は仕方無いとゲートを捜して洞窟エリアをうろつき回る事に。そんな時もカー君は、洞窟の横穴や何か隠されていそうな場所を捜索してくれて本当に有り難い。
お陰で、鑑定の書を4枚と魔結晶(小)を2個、ポーション瓶を1本と銅貨が20枚ほど入った袋が追加で見付かった。本当に優秀な斥候である、Dランクなのも頷けると言うモノ。
それから3層の探索も佳境に入って、コボルト半ダースの群れに続いて今は大クマと戦っている所。さっきのコボルト集団には、弓兵も混じっていて割と手強かった。
そして目の前の大クマだが、大柄でタフなのは始末に負えそうもない。幸い2枚のパペット盾兵は、恐れを知らずにそんな猛獣も抑え込んでくれて頼もしい限り。
その隙を突いて、エンの斬撃や朔也の支援攻撃が見舞われて行く。5分に渡る激闘の末に、ようやく動きの鈍ってくれた敵モンスター。
止めをと思ったけど、残念ながらそれはエンに取られてしまった。
とは言え、あまり
それはともかく、何だか今の戦いでレベルが上がった気がしてならない。戻ったら鑑定して貰うとして、取り敢えず今は安全確保に周囲を確認して静かな場所へと移動する。
そして思うのは、やっぱり3~4層はある程度手古摺ってしまうなと言う事実。戦力的にもレベル的にも仕方無いのだが、どうしても探索の足は鈍ってしまう。
慎重に進めば何とかなるかもだが、数で押されたり今みたいな強敵に遭遇したりと何が起こるか分からない。悩ましい所だが、朔也はもう少し進んでみる事に。
「コボルトのカード、もう少し欲しいからね……ゴブ弓兵に代わる、2足歩行のユニットが欲しいねぇ、お姫さん」
妖精のお姫も、そうだねぇと言う表情……戦力不足と言うより、足りないのは恐らく火力なのだろう。エンは強いが、パワー的には所詮は剣士の一振りである。
さっきみたいなタフな相手だと、剣の斬撃だけで仕留めるのはなかなかに難しい。特殊スキルでもあれば別なのだが、などと思って朔也は自分がそれを持っていたのを思い出す。
恥ずかしい話だが、棍棒やクロスボウなど浮気をしていたら、剣で使える『急所突き』の存在をすっかり忘れていた。恐らく槍でも使えるだろうが、クロスボウで使えるかは不明。
多分無理だろう、飛翔するボルトにスキル技を発動するのはかなり難しそう。それより、朔也は自分のメイン武器を何にするべきか未だに迷っている次第である。
そんな事を考えていたら、カー君が次の層のゲートを発見したと報告しに来た。探索は順調で、1層を平均30分のペースも崩れていない。
このまま4層に突入して、30分程度を探索に
そして4層の雰囲気だが、広さはさっきの3層とさほど変わらず。ただし敵は多そうで、あちこちから気配が漂って来ていて嫌な感じ。
囲まれると面白くないけど、下手に移動するのも不味い気がする。いざと言う時には逃げ込めるように、ゲートの場所は覚えておいた方が良いかも。
それとも、レベルが上がったのを信じて、もう1体くらい味方ユニットを召喚してみようか。候補はさっきゲットした、【コボルト槍兵】か【丘オーク兵】しかいないけど。
それも何だか貧弱過ぎて嫌だが、MPコストはたった2なので完全に損って感じもしない。そんな訳で、コボ槍兵を新たに1匹召喚してみた。
このエリアに出て来るコボルトより、何となく親しみが湧くのは自分が召喚したからだろうか。とは言え、強そうには全く見えないし、やっぱりMPの無駄遣いだった気が。
その時、進行方向からカー君の鳴き声が響いて来た。斥候役のお知らせに、朔也はチームに戦闘準備を呼び掛ける。敵の集団だろうの予感は大当たりだが、その数は半端無かった。
何と、狼の群れが半ダース、その背後からはコボルトの集団がわんさかやって来ていた。合計すると15体以上いるのではなかろうか、朔也の顔は一気に蒼褪めて行く。
これは撤退案件だけど、足の速い狼集団は全速力で逃げても
それを防ぐコックさん&箱入り娘だが、次に飛んで来た風の刃は無理だった。朔也は思わず悲鳴をあげて、痛みにしゃがみ込んでの防御姿勢。
頭はヘルメットで守られていたが、どうやら頬や首筋からは出血した様だ。致命傷ではないが、魔法のヤバさに顔面蒼白になる朔也は完全に思考停止状態に。
その時、敵の第一陣の狼たちが自陣へと突っ込んで来た。
――その後ろには大量のコボルト兵団が、ピンチは死の形を取り始めていた。
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