前編-7-

 カップラーメンを流し込むように食べて、野菜ジュースで口の中の熱を冷ます。とりあえず空腹だけ満たし終えると、趣味部屋に戻ってネットサーフィンを再開する。次の検索キーワードは『夢カタル』。


「相変わらず……か」


 夢カタルに関する新しい情報はなく、SNSの更新もない。彼に関する情報を見ていくとやはり炎上中だ。


 心配する声

 沈黙に憤る声

 否定する声

 無関心のくせにただ煽る声


 様々な声と感情でごった煮状態だ。見ていて気分が悪いが、確認しないと気が済まない。さっき食べたカップラーメンが逆流しそうだ。吐き気を堪えながらも俺は一通り目を通す。なんで食事前に見なかったのかと後悔しながら。

 ライフワークに近いネットサーフィンを終えるとスマホを確認。通知はなし。先程の期待が大きかった分、通知がないことに苛立ちを覚える。


「やっぱり狙うとなれば受賞式が終わってからか」


 今回の受賞式――担当者から事前に連絡があり、ネットで生配信されるそうだ。一応、毎年そうらしいのだが、俺は初めて知った。

 だけど、毎年そのようなことを行っているのならばアイが事前にそのことを知っている可能性は高い。ならば、俺はその後のことを最も警戒すべきなのだろう。

 晴れ舞台に立ち、小説家への一歩を踏み出す俺。きっと嫉妬の感情が暴走し、最高潮の気分に達している俺を奈落の底まで落とす――俺の全てを潰し、脅すには最高のタイミングだ。


「俺に出来ることは――」


 待つしかない。何が起きても、相手がなにかを仕掛けてきても冷静に対処出来るように。動揺せず、逆に相手を誘い出し――仕留めてやる。

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