後編-8-
十六時。近場のコインパーキングに駐車されている予約したコンパクトカーに乗って、御久良山を目指した。カーナビでは約四十分のルートが表示されていたが、途中でホームセンターに寄ってシャベルを購入。多少のロスはあったが、十七時には目的地に到着した。
幼少の頃の記憶は正しく、ナビに表示されているマップには頂上の神社へ行くには二通りの道があった。ぐるりと回ってみると一つは道幅が狭く、
『この先、車は入れません』
そう書かれた看板がある程度進んだところで立て掛けられていたので、引き上げた。その道は幼少の頃に歩いた記憶もあるので、ハイキングで使用する道なんだろう。
そして、もう一つの道。記憶にはない道だ。だが、先程のような看板もなければ道幅もそこまで狭くはない。俺は車を徐行させながら山へと入っていく。この時間になると山に入ると暗くなり危なくなるのかハイキングをしている人や地元の子供もいないようだった。
日は暮れ始めていたが、それでも序盤は周囲を見渡せる明るさがあった。しかし、山を進んで行くと木々が空を狭めて行くので視界も狭まるのでフロントライトを点けて進む。俺のあの記憶――いや、夢の中は夜だった。ということはもっと暗く、ハイビームにしていたのだろう。
そこからの俺の行動は非効率で非生産的だった。
闇雲にあの光景――いや、あの描写に似た場面があれば降りて、シャベルで掘り返しては、何もないので埋める。また、少し移動して、掘り返しては埋める。
客観的に考えれば無駄なことだと頭ではわかっていた。あのとき――いや、あの夢で見た映像では夢カタルを――いや、『それ』がもう二度と見つからないように深く掘っていた。今やっていることはそのときよりも浅く掘ってはたぶん違う、と曖昧な判断で埋めるの繰り返し。そんな中途半端なことで望む『それ』は見つかるわけがないのに。
それでも掘る。
それでも繰り返す。
あの夢が、夢であって欲しいから。
俺が夢カタルを殺害したことを認めたくないから。
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