前編-7-
夢カタルとの出会いは良く覚えている。
五年ぐらい前――だったと思う。ネットに小説を投稿しながら、公募に挑戦する作品を並行で執筆していたときだ。主に小説の更新を告知していたSNSに珍しくダイレクトメールが届いた。
『いつも、作品を拝読しています。面白くて毎回の更新が楽しみです。これからも執筆頑張ってください』
感想なんて滅多に届かないから、すごく嬉しかったのを覚えている。
『感想と応援、ありがとうございます。すごく嬉しいです!』
そのような返信をしたと思う。そこから少しずつ交流が始まった。当時、SNSで俺のことをフォローしている人は少なかった。というのも、こちらから交流を持ちかけることがなかったし、その当時は、『見てもらう為に、まずはランキングで上位に入ることが大事』という風潮がありネットで小説を公開している者同士で更新をしたらノルマのように互いの作品を見に行く、という謎の集団ができていたのだが、俺はそのような交流なら時間の無駄と判断し拒絶した。作品が面白ければ見てもらえる――そう信じていたから。
夢カタルのダイレクトメールは俺にとっては閉鎖的なSNSに風穴を開ける存在だった。更新すれば感想と応援のダイレクトメールをくれて、励ましてくれた。その関係が徐々に変わってきたのは交流が始まってから一年が経った頃だったと思う。
『マコトさん、こんばんは。少し相談があるのですが宜しいでしょうか?』
マコト、というのは俺のペンネームでありSNSのアカウント名だ。自分の名前から一文字とったその名前で活動していた。
『なんでしょう?』
『僕も小説を書いてみようと思っていまして……出来ると思いますか?』
『ジャンルは何を考えていますか?』
『ファンタジーです』
『大丈夫だと思いますよ? ファンタジーなら自由に書ける要素が多いので、書いたからといってそこまで批判をしてくるような人もいないと思います。創作は自由です。わからないことがあれば俺でわかることなら教えますし。それに、俺は夢カタルさんの作品を読んでみたいですよ』
『マコトさんにそう言ってもらえると心強いです。頑張ってみます』
そこから俺と夢カタルは作家とファンの関係から作家同士、という関係になった。俺の作品を読み、俺が教えたこともあり、夢カタルの文章の書き方は俺とよく似ていた。読みながら、俺が書いたのではないかと錯覚するぐらいだ。まぁ、荒削りな部分も多かったけど。
夢カタルは今も流行っている異世界転生モノのファンタジーを中心に作品を書いていった。流行っている、ということもあり生み出される作品の波に埋もれることも多かったようだが、腐らず、励まし合い、執筆を続けてきた。夢カタルの従来の性格なのだと思うが、明るく、親しみやすいことから作家や絵師などのクリエイター仲間を次々と作っていき、まぁ、自然と俺もその一部の作家とは交流することになった。
そして、現在――夢カタルはネットで人気の小説家になった。
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