エピローグ
あれから、いろんな事があった。
クレアは皇宮に捕らえられた後、その罪を問われることになった。
両親には、クレアのことを思えば減刑を望むけれど、私のことを思えば重罰を望むという、なんとも複雑な思いもさせてしまったようだ。
結果、クレアは修道院に送られることとなり、両親とはたまに会うことができるけれど、私とは二度と会うことができなくなった。
フランツ様は悪評が広まってしまったことにより、エルドレッド侯爵夫妻より、完全に後継者候補からはずされた。
カミユ殿下はそれだけでは足りないと、処罰を望んだけれど、私が何もしないようにお願いした。
侯爵位を継ぐことに何よりも拘っていたようだったから、罰としてはこれだけでも十分だろうと思って。
そして、私は今、5度目の卒業の日を迎えようとしている。
両脇を第1皇子殿下と第2皇子殿下に固められるという、ものすごく恐れ多い状況で。
「あ、あの、これは、いったい……」
「カミユにくれぐれもよろしく頼む、と言われてしまってね」
「まぁ、未来のかわいい妹を、今日はしっかりと護衛するから安心して。僕がいれば、とりあえず死んでさえいなければ、助けられるし」
カミユ殿下は、私が毎回、卒業を迎える日に命を落としていることが気がかりだったようで。
常に自分が一緒にいられないから、とまさかの護衛を第1皇子殿下と第2皇子殿下に頼んだのだそう。
頼む方も頼む方だけれど、応じる方も応じる方だ。
どちらが守られるべきかと考えた場合、優先されるのは第3皇子の婚約者である私よりも、お二人の方であるのは間違いないはずだ。
そして、第2皇子殿下がお持ちの能力は、治癒能力だとはお聞きしていたけれど、その所為か言ってることがなんだかとっても物騒に感じてしまう。
結局、常にお二人が傍にいたため、必要以上に注目を浴びた以外は、何も起きることはなかった。
「卒業おめでとう、シェリル」
「カミユ殿下も、卒業おめでとうございます」
5度目の卒業の日は、カミユ殿下と互いの卒業を祝いあい、とても幸せに終えることができた。
そして、私は5度目の人生にして、はじめて、卒業の日の翌日を迎えることができた。
卒業から、さらに1年の時が過ぎ、私はカミユ様との結婚の日を迎えた。
この1年で変わったことが、いくつかある。
まずは、カミユ様に対する呼び方だ。
以前はカミユ殿下とお呼びしていたけれど、卒業後カミユ様とお呼びするようになった。
カミユ様には、様も不要だと言われたけれど、それはちょっと勇気が出なくて、カミユ様という呼び方で妥協してもらった。
それから、第1皇子殿下が、正式に立太子され皇太子になられた。
元々仲の良い兄弟で、皇位継承権を争うようなこともしておらず、最初から決まっていたようなものだったという。
ただ、儀式が面倒で先延ばしし続けていたものの、さすがに3人の皇子が全て学園を卒業したのだから、いいかげん執り行うべきだろうと立太子の儀が行われたのだ。
そして、私の生活場所も変わった。
卒業を機に、カミユ様の皇子宮に私の部屋を用意してもらい、そこで暮らしながら皇后陛下に皇子妃として必要なことを学ぶことになったのだ。
カミユ様は同じ部屋がいいと仰ったけれど、結婚前では早すぎると、皇后陛下に却下されてしまったらしい。
さらに、私とカミユ様の婚約までに至る話を元にした恋愛小説が発表された。
小説の作者は、ペンネームを使っていて一般的には知られていないものの、なんと第2皇子殿下である。
一部小説らしく脚色されたりもしているが、事実とほぼ変わらない部分も多々あって非常に恥ずかしいったらなかったけれど、カミユ様と2人で仲良く読んで、互いに感想を言い合ったりもした。
そして、結婚式当日、私は当日見てのお楽しみ、とカミユ様にひた隠しにされ続けたドレスを見て、非常に驚いていた。
「このドレス……」
「驚いた?あの本を借りた時、何度も読み返してるって聞いたから、きっとああいうのがシェリルの憧れなんだと思って」
目の前にあるドレスは、とても見覚えのあるデザインだった。
私がはじめて、家の中にある本の中からカミユ様におすすめした、恋愛がメインの小説。
そこで、ヒロインの結婚式のシーンの挿絵として描かれていたのが、目の前にあるドレスと同じデザインのドレスだった。
カミユ様の仰る通り、その小説の中のヒロインの恋愛に幼い頃から、ものすごく憧れていた。
だからこそ、挿絵を見て、こんな素敵なドレスを着て、私もいつか素敵な結婚をしたいとも、いつも思っていたのだ。
そんなこと1度も言ったことなんてなかったのに、カミユ様は全てを察してくれたのだ。
私は溢れる気持ちを止められなくて、カミユ様に勢いよく抱きついてしまった。
けれど、カミユ様はそんな私を優しく受け止めてくれる。
「気に入ってもらえた?」
「はい、もちろんですっ!」
「シェリル、君を世界一幸せなお嫁さんにするって約束する。だから、僕と、結婚してください」
「はいっ!」
私はこの日、間違いなく世界一幸せな結婚式を迎えたと思っている。
そして、これからきっとカミユ様ともっともっと幸せになれるはずなので、6度目のループは迎えなくて済みそうだ。
ループ5回目にして、登場人物に第3皇子殿下が増えてしまいました。
その結果、私は世界一幸せな皇子妃になれました。
【完結】ループ5回目にして、登場人物に第3皇子殿下が増えてしまいました えくれあ @eclair_x_ekurea
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます