第101話 交渉結果とお使い犬

  フロレアは英雄譚の名言を用いて断るとの意向を伝え終えたことから、その場を立ち去ろうとする。

 その反応を目にしたライジンは慌てながら、己自身が考えうる最大の譲歩であり最後の切り札となるフロレアルへのを提示する。


「──ちょっ!、頼むから待ってくれ!メリットがないというのなら討伐隊全体に支給される報酬の半分を君の取り分として譲る。加えて、イビルボアの肉や毛皮などは全て君が所有する権利があることを約束する。この事は討伐隊の指揮を任された俺が責任をもって、他の討伐隊の者たちに説明して説得する。だから頼む!」


 そう言ってライジンは深々と頭を下げてフロレアルへと頼み込む。

 その態度と提案された内容を鑑みてフロレアルは逡巡する──


 この提案が従属状態のライジンが現時点で可能と考えている最大級の譲歩案ってことになる。

 例え他の討伐隊を説得したとしても大して提示される内容には変化は生じないと思う。

 それならアタシのメリットお金♡が提示されたのだから断わる理由もないわね。

 ──かの謳われし天才美少女魔法士さんも〝お金は大切〟と常々、事ある毎に口にしていた筈だし、それには従わないとね♪︎


 そう結論付けたフロレアルは、わざとらしく〝小さな〟をついてから〝納得した〟ていを装って返答する。


「──はぁ⋯⋯分かったわよ。そうまで頼み込まれたら、さすがに断れないじゃない。協力してあげるから頭を上げてちょうだい」


 ダメ元で最後の条件を提示したライジンはフロレアルからの予想外の返答に一瞬理解が追いつかない。


「──へっ!?あぁ、了承してくれたのなら助かるよ。ありがとう。それなら左翼の者たちに君に提示した条件を説明して承諾を得てくることにするよ」


 ライジンがそう言って左翼へと向かおうとするがアタシは


「──ライジン、ちょっと待って!アナタはここに居た方が良さそうよ⋯⋯。ザンネンさん、駄犬と戯れるのはいい加減におよしなさい。頼みたいことがあるの──」


 その言葉を耳にしたカテジナが、六周目に突入していた十字砲火を途中で放り放り出すとフロレアルの元へと駆け寄ってくる。


「はい!御使い様。駄犬の躾に興じてしまい申し訳ありませんわ。ワタクシに頼みたいこととは一体なんででしょうか?御使い様のご要望でしたら何なりと遠慮なく申し付けて欲しいですわ。例えそれが〝バター犬〟になれとの命令であったとしても、喜んでワタクシはお引き受けしますわ!そして忠実に任務を果たしてみせますわ。むしろ今すぐ命じて欲しいですわ!」


 そのカテジナからの食い付きと溢れだしている欲望にアタシは頬を引き攣らせ、額に汗を浮かべながら指示をする。


「──ザンネンさん、所構わず無駄に発情するのは辞めてちょうだい。そんなことよりアナタは左翼の人たちを呼んできてちょうだい。できるだけ急いで。それとサヘランさんも起こして一緒に連れてきて──分かった理解したかしら?」

「承知いたしましたわ。すぐに戻って参りますので、御使い様は居なくならないでくださいませ。お願いですわ」


 そう言ってカテジナ残念忠犬は、お使い任務を果たすために、全速力で左翼の者たちの元へと駆け出す。

 それに併せてフロレアルはライジンへと告げる。


「──ところでライジン、が帰ってきたみたいだけど、未だのかしら?もうだいぶ近付いてきたわよ?」


 アタシは平面探知を|魔改良した以降、久しく表示されなくなっていた赤点──アタシへと悪意や敵意を抱いている人種ひとしゅが現れ近付きつつあることを把握していた。

 そして盗視聴による確認作業も既に済ませてある。

 その者たちは、ライジンたち他の討伐隊の仲間を見捨てた、右翼を担う筈だった脳筋前衛職五人組であった。



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 ご愛読頂きありがとうございました。

 この物語も100話を超え、今回で101話目となりました。

 そのことを記念しまして今回はワンチャン化の要望を口にしたカテジナの犬キャライメージをリンク先にて掲載しておりますので本編含めて楽しんで頂ければ幸いです。

https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093077877526421


 ご愛読頂きありがとうございました。

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