第097話 不敬への贖罪

 初体験となる他者からのお胸様の揉みしだきを受けたフロレアル。

 静かに横たわるシトロールへと治癒魔法を施し続けていた。


 ──危なかったわ⋯⋯。反射的に〝思いっきり全力☆全壊〟治療対象の痴漢変態男シトロールの首を押し潰してしまったわ⋯⋯。

 だけど幸いにもフルヒールを掛けたままだったからあやめずに済んだみたい。

 押し潰した直後に並列副意識ミニフロレが強制的にアタシ《主意識》を最大認識加速状態にしてくれたから、例え視えていても一瞬の幻のように感じた筈よ。

 なんでか知らないけど痴漢変態男も大人しくなったことだし、一気に治療を終わらせるとしますかね。


 こうして治療を終えたアタシはシトロールを転がして仰向けに寝かせる。

 そして後に立ち上がってライジンたちへと声を掛ける。


「取り敢えず治療は終えたわよ。何なら確認してもらっても構わないわよ」


 その言葉を受けてライジンとアーネがシトロールへと歩み寄り、恐る恐る状態を確認する。

 横たわるライジンには傷一つなく安定した呼吸を繰り返している。

 そして鼓動を確かめると規則正しく脈打つ鼓動が聴こえてくる。

 その事を確かめたライジンがフロレアルへと話し掛ける。


「──ありがとうフロレアル君。確かに傷は癒えていた。それにしても申し訳ないというか何と謝ればよいのか⋯⋯治療の最中にシトロールが失礼をした──」


 そう言ってライジンは頭を下げる。

 そして頭を戻すと続けざまにフロレアルへと問いかける。


「──それとは別に一つ尋ねたいのだがいいかな?何故か狂戦士化が解のだが、途中で聞こえたと何か関係しているのかな?その時に一瞬だけシトロールが物凄い姿に成り果ててたように視えたのは気の所為なんですかね?」


 そのライジンからの問い掛けにアタシは冷や汗を浮かべる。

 ──だが、そんな動揺は悟らせまいと浄化魔法さんで浮き出ようとする冷や汗は姿を晒す前に消し去り続ける。

 そんなアタシが口を開く前にザンネンさんが騒ぎ出す。

 ──そう、ザンネンさんはブチ切れていたのである。


「──ライジン!シトロールが無事なのですから、のですわ!、御使い様へと働いた〝不敬〟についてどう責任を取るおつもりなのですか?!寄りにもよって御使い様のお胸様を揉みしだくなんて⋯⋯実に羨ま──じゃなくて、〝万死〟に値する行いですわ!ワタクシなんて未だお手にすら触れたことがありませんのに⋯⋯。絶対に許せませんわ!何なら今すぐにでも、ワタクシが罰として不敬を働いた左腕を切り落として差し上げますわ!!」


 カテジナからの猛抗議にライジンは驚きながら返答する。


「──カ、カテジナ!?ちょ、ちょっと落ち着くんだ!言ってることに君の願望とかまで含まれてる上に内容も酷すぎるぞ!?いつもは冷静で思慮深い君が一体どうしたっていうんだ!?」


 ライジンからの指摘を受けたカテジナは怯むことなく己の考えを口にする。


「ワタクシは御使い様と出会って、己が真に成すべきことを初めて悟っただけで何も変わってませんわ!シトロールが犯した不敬に対する贖罪しょくざいは、いかがなされるおつもりですの?!」 



カテジナが話題を逸らそうとしたライジンへと詰め寄る。

 だが、その答えは別の者──アーネから返ってくるのだった。


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 また、本作主人公フロレアルのキャラクターイメージを近況ノートに投稿しておりますので、よろしければイメージの参考にご覧下さい。

フロレアル(主人公)⑦

https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093077065621134

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