第096話 槍使いの運命から救い出せ!
アタシは残念なフォローを無視してシトロールの状態に着いて問いただす。
「⋯⋯その人の状態について何か知っていたら教えてちょうだい。──もちろん怪我についてじゃないわよ。
「⋯⋯そうだな。本来ならば本人の承諾無しに他人へと口外するべきことではないのだが、こうなってしまっては隠してもいられないな──」
そう言ってシトロールは、アーネ、カテジナ、そしてフロレアルへと順に視線を向けた後に口を開く。
「申し訳ないがアーネとカテジナ含めて、フロレアル──君もこのことは他言無用にしておいてくれ。今のシトロールは自ら発動させたスキルによってこの状態に陥っている。スキルの正体は
「──狂戦士ね⋯⋯。英雄譚にも登場するから耳にした事はあるけど正に壮絶そのものね⋯⋯。傷が癒えたらどうなると思いますか?」
「⋯⋯跳ね起きてイビルボアを探し求めて駆け回る。そして敵の姿がないことを理解できたのなら狂戦士化は解ける筈だ」
「そうですか。──なら二人は彼から離れてください。アタシなら彼が回復した後でも対処出来ますので──」
そこで一旦話を区切ったアタシは、ライジンとアーネへと改めて視線を向けてから改めて問う。
「──それで他者へと伝えないことは誓えますか?」
そう問いかけられたライジンとアーネ。
二人はフロレアルへと顔を向けると同時に答えを返す。
「「誓います」」
既に従属状態に陥っている二人が〝誓う〟と名言したことかるアタシは疑う必要もないことから治癒魔法フルヒールを行使することを決める。
「──わかったわ。それなら、治療魔法を施し始める前に離れてちょうだい。彼が暴れた時に手足が届かない所なら構わないわ」
そのアタシの指示に従って、ライジンとアーネはシトロールから少しだけ距離をとり見守り始める。
そしてアタシはシトロールの
そしてサヘランへとフルヒールを施した際と同じ姿勢となる。
ただし、右手だけは異なっており、ただ体へと当ててるのではなく、シトロールの後ろ首を鷲掴みにして押さえつけている。
これは治療途中で動けるまでに回復した際に身動きを封じるためであった。
──フロレアルが治療魔法を行使し始めると、淡い金色の輝きに包まれ始める。
それに次いでシトロールの全身が輝きに包まれ始める。
「──御使い様お美しいですわ⋯⋯」
そう呟いたカテジナは、
その一方でシトロールは、傷が癒えるのと比例するように激しく暴れ始める。
そんな最中にソレは起きてしまった──
ソレは誰か望んだ事でも、意図した事でもなく、不幸な事故で未遂の故意であった。
身動きが可能となるまで回復したシトロールが、フロレアルの拘束から逃れようと手足を激しくバタつかせ始める。
その折にシトロールの左手がフロレの左胸様に偶然触れると、あろうことかそのまま鷲掴みにしたのである。
うつ伏せで地面に首元を押し付けられているシトロールは、自分の左手が触れ鷲掴みにしているモノが何なのかは見てさえいなかった。
それでも、己の左手が掴んだ〝
そして左手が掴んだ唯一の手がかりを強く握ったり弱めたりして
──早い話が狂戦士化してる本能が
他人に初めて胸に触られた上に、激しく揉みしだかれたフロレアルは堪らず声を上げる。
「──イヤッ!ちょっと!?どこ触ってんのよ!そんなに強く揉んじゃダメだってば⋯⋯んっん!──」
本来であれば狂戦士化した者から強く握られた
だが、圧倒的な強靭値に加え、不破壊性をも自分自身へと付与しているフロレアルにとっては、ただ単に強く揉まれているだけに等しかった。
フロレアルも最初は無自覚に拘束から逃れようとしているだけだと我慢していた。
だが、執拗に続くお胸様の揉みしだきに淫乱スキルが反応したことで、徐々に快感を覚え始めてしまう。
「──ダ、ダメぇ⋯⋯そんなに強く握りながら引っ張らないでぇ⋯⋯。んんっ──イヤァ⋯⋯もうやめて。──い、いい加減に⋯⋯、しなさいよ──ねっ!」
カテジナたち三人に見られる中、赤の他人に胸を揉みしだかれる恥ずかしさと快感が我慢の限界に達したフロレアルはシトロールを〝
その瞬間に〝ベキッ!〟との大きく嫌な何かが折れる音と同時に地面が〝ドンッ!〟と僅かに揺れる。
その時のシトロールは淡い輝きに包まれながら、確かに金のシャチホコの様に首を起点に海老反っていた。
しかし、その直後には、何故か地面に押さえつけられて横になってる姿、いわゆるうつ伏せの状態に戻っていた。
それは輝く海老反り姿が幻かと思えてしまう程であった。
しかし、シトロールには明確な変化が起きていた。
急に暴れることなく大人しくなっており、力無く静かに横になっていたのだった。
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フロレアル(主人公)⑦
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