第010話 聖女と呼ばれた似非聖女
フロレアルは、自分自身のステータスプレートの裏側、己の保有スキルを眺めながら深いため息を吐く。
そんな彼女は、人々から聖女と称された切っ掛けを思い出していた──
あれは神官が教会屋根の修理を自ら行おうとして、屋根から滑り落ちた挙句に、頭から地面に激突して首ポッキリ死したのが事の始まり。
その事を知った村長や村の大人たちが、当時は中級中位クラスの神聖魔法までの行使実績があったアタシに泣きついてきた。
それでダメ元で上級クラスの蘇生魔法リザレクションを試したら、神官が蘇生したのだった──その時はチビりそうになったわ、マジで⋯⋯。
だって、いきなり目の前の死体が目を開いて、寝起きのようにノソノソと起き上がるのは心臓に悪い、恐ろしい光景だった。
今更だけど反射的に殴らなくて本当に良かったと思う。
だって、魅了淫蕩鬼を知った今だから分かるけど、反射的に全力☆全壊で拳を繰り出してたら、間違いなく三秒クッキングで再蘇生不可能な頭部欠損遺骸が出来上がっていたわ──
神官が首ポッキリ死した時は、村全体がお通夜ムードに包まれていた。
なんせ、国の外れの村に派遣されていた中級クラスの神聖魔法の使い手だった神官が変死したのだから当然だった。
貴重な神聖魔法の使い手を失った神殿が、再び有能な神官を派遣するなんて考えられなかった。
そうとなれば、相当な期間は下級クラスしか使えない
それに魅了従属状態の村人たちは、中級クラスの神聖魔法が使えるアタシが居たとしても、村に永住させるのは不可能と無意識に考えてたのだと思う。
そんなこともあって、神官を蘇生させた後から、蘇った神官を筆頭に、一部の村の人々からアタシは聖女と呼ばれ始めることになった。
特に心酔してたのは神官と村長の二人で、蘇生という奇跡を実体験した神官が心酔したのは、当時の幼いアタシでも理解出来たけど、村長までもが心酔したことには理解が及ばなかった──まぁ、今となっては察することは容易くて、アタシが聖女だったらローゼ村は聖女生誕の地として聖地と認定される。
そうなれば、将来的には観光地として賑わうことになり、長期的な安定と発展が
──その時、フロレアルは、自分自身に大きな問題が発生していることに気付いてしまう。
今更気付いたのだけど、どう考えても聖女じゃないアタシが、上級クラスの神聖魔法を行使できるのって露見したらマズイわよね⋯⋯。
これまでの常識を覆す、この真なる事実の発見、これが第三者に知られるのだけは、是か非でも避けないといけないわ。
アタシの能力値やスキルから鑑みて、恐らくは神聖魔法の行使に必要な
う。
だとすると聖女や聖人のスキル能力や効果には、神聖魔法書に記載されている事象改変に必要な能力要求値などの緩和又は免除、そして対象の傷などを癒すのに必要な事象改変イメージの自動構築とか補強などが含まれていると考えられる。
この事実が秘匿され、神聖魔法を神殿がほぼ独占していることを鑑みると、真事が露見した暁には、間違いなく神殿、最悪の場合には神聖教国イオプシオンまでもが敵にまわる可能性がある。
そして聖女や聖人、そして神聖魔法を貶めた大罪人たる異端者として指名手配され、命尽きるまで永遠と追われ狙われ続けることになりそうだわ。
神聖魔法で得られる利権や権威などを考慮すると、この事実は相当に闇が深く、関与している神聖教国や神殿は、その内側が酷く腐敗してると考えた方がいい。
これからは可能な限り、神殿や教会には関わらないことにしよう──
こうしてフロレアルは神聖魔法が精霊魔法と何ら変わりない、同種の魔法との事実は秘匿することを決め、その事実を秘匿し独占する神殿や教会との関わりは可能な限り避けることを決断するのであった。
~なぜなにシリエル先生~
この世界では骨折や肉体の一部欠損を癒す事ができる神官の存在が、町や村の存続に直接影響します。
何故ならば、魔法が一般化しているこの世界では医術が殆ど進歩していませんので、神聖魔法の使い手の有無、そしてその技量が人々の寿命に大きく作用しているからです。
怪我も病も神聖魔法で治すものだからこそ、その弊害で神聖魔法抜きで治療する方法なんて誰も知らないことに何の疑問も抱いていないのです。
そんな環境下で一般常識として知られているのは、怪我を負ったら教会に辿り着くまで命を繋ぎ止める技術の止血法、骨折時には固定して運ぶ程度です。
そして病に至っては対処法すら全く知られておりませんでした。
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フロレアル(主人公)①
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