第015話 魔法鞄と旅立ち
そんなこんなで、何とか得物が決まったことで、それ以降のアタシの旅支度は順調に進むのであった。
その結果として村の厳選装備と一人旅としては多すぎる物資が用意されており、得られためぼしい物が以下である。
僅かばかりのお金、旅装束たる厚手のローブ、フード付きの外套、やたら頑丈な白メイス、ナタとしても使えそうな良質で肉厚なダガー、多量の食料、そして旅人の必需品である二種の
こうして旅立ちの支度を終えアタシは、ついに旅立ちの時を迎えたのだった──
──成人の儀から一週間後。
早朝ではあったが、晩春を迎えたことで日差しは強く暖かい。
うららかな陽気の中、ローゼ村の住人が総出でアタシの見送りに現れていた。
だが、その人々からは引き止めの声が上がる事は一切無く、その代わりに声援や歓声が上がっていた。
加えて言うならば、別れを惜しみ涙する人すら誰一人として居なかったのである。
その光景を目にしたアタシは、自分に言い聞かせていた──
これは、魅了従属状態の影響でアタシを引き留める行為になりかねない、悲観的な言葉や涙が抑止されているだけよ。
だから、引き留めの声が無く、涙する人も居ないのは当然のことなの──だから当然の光景なのよ。
───でも、ひよっとして⋯⋯、アタシって陰ながら嫌われてた訳じゃないよね?──
そんな一抹の不安と哀しみを抱いたアタシに対して、村の住人たちは容赦する事も、そして遠慮する事もなく、良い顔で諸手を振り、喜び勇んで送り出したのである。
その中には不安そうにも見えたアタシの顔を見て、勇気付けようとしたのか、良い笑顔でサムズアップをしてくる者まで現れていた──
そんなアタシが村から居なくなることを村の皆んなが喜びあっている光景に耐えかねて、アタシのSAN値は瞬く間に削られてしまい、自然と涙が溢れ出すのだった──
━━こうして成人の儀にてステータスプレートを得たことで、己が保有するユニークスキルの正体を知ってしまった物語の主人公フロレアルの旅は、予想外に涙ながらで始まったのである。
〜なぜなにシリエル先生〜
今回は魔法鞄について紹介しますね。
他の世界でも馴染みのマジックバックや魔法収納袋?アイテムボックスなど基本的には同じモノと考えて大きな間違いはありません。
この世界の魔法鞄には、ダンジョンから得られるモノと錬金術スキル保有者が製成したモノの二種類が存在してます。
ダンジョン産の特徴としては収納後は時間経過が生じませんが、一方の作成品は普通に時間経過するといった違いがあります。
その事から収納物の特性に併せて収納するのが基本となっています。
その二種を旅立ち時点で得られたことは、フロレアルにとって幸運であると言えますね。
因みに、この世界の魔法鞄の価値はそこまで高くはありません。
それは複数の魔法鞄を所有しても殆ど意味がないからです。
例えば、フロレアルが魔法鞄Aを使って収納した物品は、魔法鞄Aに限らず、同種であれば別の魔法鞄Bからでも問題無く取り出すことが可能です。
個の魔法鞄に収納物が紐付けされないので、魔法鞄は単なる収納魔法を簡易に発動させる
魔法鞄の収納量は、使用者の魔法力量に応じて増減するので、複数の魔法鞄を所持しても収納量増加の恩恵は得られません。
その為、個としての魔法鞄の価値はそれほど高くはないんですね。
魔法鞄を使う際の注意点としては、収納した本人しか取り出せない事、収納可能量は時間経過の有り無し二つの総和となることです。
この様な理由から個人による魔法鞄の複数所持は破損への備え程度となります。
その為、家族や冒険者パーティーなどでは、一つの魔法鞄を複数人でシェアして使用することが当たり前の世の中となっていました。
━━━━
ご愛読頂きありがとうございました。
楽しんで頂けましたら、作者の励みにもなりますので、フォローや応援などして頂けると幸いです。
また、本作主人公フロレアルのキャラクターイメージを近況ノートに投稿しておりますので、よろしければイメージの参考にご覧下さい。
フロレアル(主人公)①
https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093076506181419
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます