第012話 旅立ちの準備と得物について

 旅立つ決意を固めたアタシだったけど、自慢ではないがローゼ村以外の町、それどころか近隣の村にすら赴いたことがなかった。

 そんなアタシには、当然ながら旅に必要な知識や道具、それに装備品などは一切持ち合わせていなかった。

 それでも、知らないことは一人悩んでいても何も解決しないと村の人々に尋ねることにする。

 そこでアタシは、その際に必要となる表向きの旅立つ理由を考えていた──


 旅立つ理由を話すにしてもユニークスキルについては触れられない──となれば、成人の儀でステータスプレートを賜るのに併せて、村から旅立ち世界を巡るとの強い思いに駆られた事にすればいいわよね。

 これなら嘘はついてないし、例え聞いた相手が神託を受けたと勘違してたとしても、聞き手の勝手な自己解釈が原因だから、アタシには何の責任も非もないわ。


 そんなミスリードを誘う理由をフロレアルから聞かされても、従属状態の人々は疑うことも無く素直にフロレの旅立つ理由を受け取る。

 そして、嫌な顔一つ浮かべずに作業の手を止め、近くにいる村人へと声を掛けると、彼女へと懇切丁寧に基本的な旅の知識について教授する。

 その結果、フロレアルは必要最低限の旅の知識を得ることに、何ら手間取ることも無く成功したのであった。

 だが、彼女は教授を受ける最中に、旅の装備品やら道具も無くこれから用意することを特に意識せずに、口にしていた。

 その事を耳にした村人らは従属状態の影響で、フロレアルが村から旅立つ事、それに必要な装備や道具が無いことを他の村人たちへ次々と伝播し始めたのである。

 それを知った人々は、行っていた作業をほっぽり出して自宅へと舞い戻り、各々が旅に必要と思える自らの所有物で拠出可能な物を選定し始めたのである。

 その結果として村、中から様々な物が善意として半強制的に掻き集められたのであった。

 その様な事が起きているとは露知らず、フロレアルは旅立ちに向けて自宅片付けと今できる範囲での旅支度を進めていた。

 そして翌日、フロレアルは、突如として村で一番大きい建物である集会所へと呼び出されたのだった──


 集会所には村の人々が持ち寄った様々な物資が多量に集まっていたのである。

 当然ながら、村の人々は持ち寄る品物について事前調整など行う筈もなく、重複しているものが数多く発生しており、混沌とした状況を生み出していた。

 そんな持ち寄られた品物の選別作業が朝早くから進められており、喧喧囂囂けんけんごうごうとしなが一番良質で上等なものを厳選され、時には協議をしながら作業を進めていた。

 こうして、一刻も早くフロレアルを村から旅立たせる追い出すとの思いに駆られて、村人総出で一丸となって旅支度が進められていたのである。

 そんなこんなで、村中から多くの人と物が集まり、お祭り騒ぎで作業が進む中、ある重大な問題が発生するのだった。

 それはフロレアルが用いる得物たる武器をどうするのかというものであった──



〜なぜなにシリエル先生~

 この世界では魔法が一派的に普及し、使われていますが、旅をするにあたっては最低でも短剣の他に何らかしらの武器が必要と考えられています。

 一般的に魔法は攻撃に用いるもので防御に用いることは稀でした。

 その事から接敵される前に相手を無力化するのが、この世界における戦闘の基本スタイルで定石となります。

 もっとも定石が通じない化け物も存在しますが、その様な例外は覗いての話です。


 この世界における旅の最中に発生する戦闘は、主に魔獣や魔物と相対となります。

 それらの攻撃は基本的には、質量を伴う物理攻撃です。

 一般的な魔法士では一足一刀の間合ともなれば、物理攻撃を防ぐ程の強度や質量を持った土塊や岩を瞬間的に魔法で生み出す事は困難でした。

 そのことから攻撃を受け流す為の得物が必要不可欠ですし、場合によっては牽制にも用いる必要があります。

 その様な理由から、魔法士はリーチの観点からも長杖を用いる人が多い傾向となっていました。



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フロレアル(主人公)①

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