第006話 絶望の保有スキル確認


 ひとしきり喜び終えたアタシは、次いで自分自身が保有するスキルを確かめる為に、ステータスプレートを裏返す。

 上から順にノーマル、レア、ユニークのクラス毎に順だって並んで記されており、アタシは上から順を追って確認していった。


──ノーマルスキル:料理(8)、清掃(8)、裁縫(8)、魔法(10)


 先ずはノーマルスキル──なんと保有してるモノ全てが高レベル!

 料理や清掃、それに裁縫が軒並み高いのは五年近くの一人暮らしで培われた成果の賜物ね。

 そして、魔法に至っては既にカンストしてるなんて、流石はアタシ!

 それじゃ、続きましてレアスキルを確かめますか!


 ──レアスキル:美麗(10)、妖艶(10)、淫乱(2)、隠蔽(0)、秀才(8)


 何て事なの!?美麗はカンスト、それに十五歳にして妖艶までもカンストしてるなんて──アタシってば正真正銘美少女!

 まぁ、淫乱については⋯⋯、仕方が無いかな⋯⋯、生まれ育ったのが特に娯楽もない小さな田舎の村、五年近くの一人暮らし、そんな好条件ともいえる環境下で年頃ともなれば、独り夜のお愉しみ会をそれなりにたしなんでいましたので、少しばかり成長したのは致し方がないことです!

 これ以上は、プライバシーの侵害とセクシャルハラスメントですので答えません!

 ──気を取り直して、その次の隠蔽が全く育ってないのは、才能はあるけど全く使ってないから成長してないのだと思う。

 そして最後に記されている秀才の二文字!──実にいい響きだわ⋯⋯。天才じゃ無いのが少しだね不満だけど、これも高レベルだから良しとしましょう!──ところで、これってどうやって育ったのかが謎だわ⋯⋯。

 まぁ、気にしていても仕方が無いから、最後のお待ちかねのユニークスキル、聖女の二文字とその効果を確かめるとしましょうか!


 ──ユニークスキル:傾国の美貌びぼう魅了淫蕩鬼みりょういんとうき・捕食数(193)


 ⋯⋯なん⋯⋯だと!?──お、おかしいですね⋯⋯、なんだか表示が間違バグっています⋯⋯。

 本来表示されてる筈の聖女の二文字がどこにも見当たりません⋯⋯。

 ──そうでした、こんな時は冷静になるのでした。

 英雄譚には『まだ慌てる時間じゃない』、『諦めたらそこで終わりですよ』との名言がありました。

 先ずは冷静になって、アタシのステータスプレートか確認してみますかね。──名前や生年月日、生まれ故郷である出身地も間違い無いですし、スキルが読み取れることからも間違いなくアタシのモノで間違いないようですね⋯⋯。

 ──ッ!そうでした、古からの言い伝えの豆知識には『表示がおかしいモノは、息を吹きかけたり叩けば直る』と耳にした覚えがあります。

 ふぅー、──息を吹きかけても変化が無いデスね⋯⋯。それなら少し叩けば直るのかもしれないデスdeathね。


 こうして現実を受け入れられなかったアタシは、初めは軽くステータスプレートを手で叩いていた。

 だけど、全く変化が生じないので、徐々に叩く力が強くなり、終いにはこぶしを握りしめて殴り始めていた。

 ──〝ガキンッ!ガキンッ!〟との強い力で硬質なモノ同士がぶつかり合う音が響くが、無情にも表記に変化は生じなかった。

 だから、アタシはステータスプレートをひと撫でした後に、静かに床へと置いた。


──その時、フロレアルは光が失われた空虚となった瞳で、自らが足元の床に置いたステータスプレートを少しの間見下ろしていた。

 その目に映る床は、ステータスプレートと並べてみると類似した色艶であったが、その事に彼女が気付くことは無かった。


 アタシは、己の絶望と怒りと哀しみ、そして全身全霊の力をも込めた右足を、床に置かれた己のステータスプレートに向けて正に全力☆全壊の一撃を叩きつける。

 アタシから生じている絶望・怒り・哀しみの三つの感情は一度程度では解消されなかった。

 そしてアタシは、己の気が済むまで、床ごと踏み抜くこともいとわぬとばかりに、全力✩︎全壊の一撃を幾度となく高速で放ち続けた──


━━その日、聖女確定の吉報を目前に控え、浮かれ気分だったローゼ村は局所的な地揺れに襲われた。

 人々は慣れぬ地揺れに驚き恐怖すると共に逃げ惑う。

 長い地揺れが収まった頃には、先の浮かれ気分は完全に消え失せていた。

 人々は家族や知人らの安否、自宅や周辺の状況の確認、落下物や壊れた物の修復や片付けなどに追われ、その日を慌ただしく終えたのだった──



~なぜなにシリエル先生~

 今回はスキルの説明となります。

 スキルには先天的に保有しているモノと後天的に習得可能なモノの両方があります。

 そして、この世界のスキルには、ノーマル、レア、ユニークの3つのランクに別れています。


 ノーマルスキルは、一般的な技能や技術となっています。

 生まれながらに天性の才能を持つ者もいますが、日常生活や訓練などの反復や学習でも後天的に取得可能なものです。

 とは言っても天性の才能と比べて後天的に取得したスキルは、レベルが上がり難い傾向があるそうです。

 レベルは0~10までの段階があり、関連する能力値の補正を受けて習熟度によりレベルが上昇していきます。

 表記の数値が上がるほど該当動作や作業などにプラスの補正が働きます。

 因みに補正とは成功率や威力、精度、作業速度などの向上などとなります。

 ノーマルスキルの一例としては、生活関連の料理や裁縫、戦闘関連の剣術や槍術、それに魔法などとなります。


 次いでレアスキル。

 こちるは、基本的には生まれ持っての才能のみとされています。

 例外としては、伝承や逸話にてスキルスクロールやダンジョン内の宝箱などから得たとの逸話が有名で広く知られています。

 他には異種族からのギフトや秘術による譲渡などが眉唾ものとして語り継がれています。

 そしてノーマルスキルと同様にレベルも存在しています。


 そして最後がユニークスキル。

 こちらは、ノーマルやレアスキルと違ってレベルは無く、生まれ持った天性の能力のみで後天的に得る方法は在りません。

 その反面、他のランクとは比較にならぬ程のチート的に強力な能力となります。

 基本的に保有している者自体が少なく、その上スキルは他者が容易に知る術がないので、過去にどの様なユニークスキルが存在して、その能力や効果がどの様なモノだったのか、その記録も少なくないので、殆ど知られていません。

 要するに勇者や賢者、聖女、もしくは反英雄といった極一部の有名どころのユニークスキルを除けば、自己顕示欲爆盛りな俺TUEEEEなど悪目立ちした者が、承認要求を全開にして自慢げに己が保有するユニークスキルの詳細を晒した結果が僅かに記録に残ってる程度でした。

 因みに自分自身のステータスプレートを見るとスキルの詳細を理解する事が叶います。

 そしてこちらがフロレアルが見にした自身が所有するユニークスキルの詳細となります。


 傾国の美貌:常時発動スキル

 美麗、妖艶、淫乱、隠蔽の強制取得と習熟速度上昇。

 直接や間接、認識の有無に関わらずスキル保有者の容姿を視界内に捉えた対象を魅了する。

 対象者の知力と魔力の和がスキル保有者の魔力と魅力の和を上回っていれば魅了されず、下回っていた場合には永続的な従属状態に陥る。

 従属状態では、スキル保有者に対する敵対・害悪的行為及び思考が抑制され無意識の内に実行不可能となる。

 スキル保持者からの指示を受けると対象者が可能と判断される事柄は実行し、命令の場合には強制力が強くなる。

 このスキルは異種交配が可能な全種族に作用する。

 交配不可能種族において、スキル保有者種族を捕食・蹂躙対象と認識している際には、同衝動が激増し優先的に標的とされる。

 その他の交配不可能種族については、友好・好感度が激増する。


 魅了淫蕩鬼:常時発動スキル、捕食数(193)

 手段をいとわず魅了状態に陥れたにえの数、即ち捕食数と同じ値を全能力ステータス値へと加算し増加させる。

 本スキルの増加値は筋力と敏捷に限り、任意での三段階(無解放、三割の制限解放リミテッド全解放フル)の調節が可能。

 本スキルによる増加値はステータスプレートに反映されない。

 捕食した贄が死亡してもスキルにより得た値は減少しない。



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 また、本作主人公フロレアルのキャラクターイメージを近況ノートに投稿しておりますので、よろしければイメージの参考にご覧下さい。

フロレアル(主人公)①

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