故郷:ローゼ村

第004話 成人の儀とステータスプレート

 薄暗い雑木林の中、野ションを終えたフロレアルは、人生の転機を迎えることとなった当日のことを思い出していた。



 今となって考えれば、成人の儀のために教会へと向かう時から嫌な予兆が散見フラグが成立していた様にも思えるわね⋯⋯。



━━その日のローゼ村は、天気も良く春の穏やかな空気に包まれており、さながら祭り前の様な浮かれ気分に染まっていた。

 村の人々は、これからアタシが成人の儀にのぞむのを当然の様に知っていた。

 そして、アタシがステータスプレートを賜り、正式に聖女であると発表される事を待ちわびていた。

 そんな事もあって、アタシの自宅から教会までの道沿いには、サプライズとして老若男女を問わず、村に住まう全人と思しき人々が立っており、教会へと向かうアタシ向けて、声掛けや成人祝いの言葉を贈ってくれていた。


 ──教会の中にもうけられている儀式の間で成人の儀に臨んだ。

 初めて立ち入ったその部屋は、教会内で唯一の土間となっており、その床は白く、まるで岩を切り出し、丁寧に磨き上げた石板タイルのように固く滑らかだったのを覚えている。

 小さめの部屋の床とはいえ、一切の継ぎ目は見当たらなかったから、優れた魔法士が、土魔法を用いて固く滑らかなモノとして創り出したのだと思う。

 約五メートル角の正方形の部屋、その中央へとアタシは進んでひざまずいた。

 そして、自分の胸の前で両の手を組み合わせて後に、こうべを垂れた。

 いわゆる祈りの姿勢ってやつね。

 そして、神様へと成人に至ったことの感謝を伝えつつ、己のステータスプレートを賜りたいとの願いを込めて祈り始めた。

 すると程なくして、自分自身の身体から、魔法を使う時と同じ魔法力が抜け出す感覚が生じる。

 それに併せて、胸の前で組み合わせていた両の手の間に、突如として固く少しひんやりとした感覚が生じた。

 アタシは少し緊張しつつ、ゆっくりと手を組み解いて、その感覚をもたらしたモノの正体を確かめる。

 そこには、祈りを捧げ始める前には無かった、白く小さな一枚板が存在していた。

 それは間違いなく、アタシ自身のステータスプレートだった──





~なぜなにシリエル先生~

 さて、ここから少しの間は、なぜなにシリエル先生のコーナーです。

 このコーナーは物語の都合上で補足説明を知り得て欲しい場面などで登場しますので、今後ともよろしくお願いします。

 この物語の設定情報や細かな説明など不要!本編を早く読み進めたいとの方は、本編文章を都合良く解釈して下さるなら、このコーナーを読み飛ばすことも不可能ではありません。

 ですが、この物語について、より詳しく知りたい、より一層深く没入したいと思ってくださる方は、文量は多くなりますが、お読み頂くことを推奨します。

 今後も度々登場しますので、飽きることなくお付き合い頂けると幸いです。

 それでは、挨拶はここまでに致しまして、今回はステータスプレート、そして記されている能力値やスキルについて紹介します。



 フロレアルが賜ったステータプレート、それは成人の儀にて神から賜るとされるモノです。

 そのサイズは、てのひらに収まる程の大きさで縦:約五十五ミリメートル、横:八十六ミリメートル、厚みは三ミリメートル程の長方形の一枚の白い板となっています。

 その質感は、金属の様にも感じられますが、白磁にも類似しています。

 ステータスプレートは、人種には破壊することが出来ないとさる程のやたらと強靭な謎素材、神様の力が垣間見える逸品ともなっています。



 そんなステータスプレートには、賜った者の名前、生年月日、出身地の個人情報が記され、他にも対象者の能力ステータス値や保有スキルが記されています。

 ステータスプレートに記されている個人情報と能力値は、他者が見ても問題無く読み取ることが可能ですが、その一方でスキルを知ることは叶わないません。

 因みに、ステータスプレートに記された個人情報は書き換えることは叶わないことから、その特徴を活かして町などへ入る際の身分確認に用いられています。

 他にも冒険者ギルドなどへの登録など様々なことにも用いられています。

 その事から、自分自身のステータスプレートは、とても大切な無くてはならないモノとなっています。

 ですが、万が一、紛失した場合でも教会で神様へと懺悔すれば改めて賜れますので、安心してください。

 流石は神様、実に慈悲深いといったところですね。

 だからといって、適当に扱って紛失してはダメですよ。

 神様から賜ったものを無くすのは不敬とされていますからね。

 それに、再度賜るのには御布施という名の罰金ペナルティがあるので要注意です。

 そんなステータスプレートなので、はるか昔には再度得られる特性を活かす形で、様々な手段を用いて数を集め、強固で強靭なステータスプレートの特性を活かして盾や鎧の外装素材にする人たちが現れたそうです。

 その行為を知った神殿は激おこプンプン丸と化して即座に禁忌行為に指定、それ以降は試みる人は消え失せましたとの逸話黒歴史があります。

 因みに神殿が定める禁忌行為が露見した際には、犯した罪の重さによっては異端者として指名手配されてしまいます。

 異端者となった者の末路は、神殿の代行者による捕縛、それが叶わなければ抹殺となり、生涯追われ続けることになります。

 捕縛されれば、魔法を封じる効果が有る手足と足枷を嵌められた上で、神殿経由で中央大陸に在る神聖教国イオプシオンへとドナドナ檻内監禁輸送されるとの噂で、その後は出来レースの審問会に掛けられ、拷問を受けた後に公開処刑となります。


 話は変わりますが、フロレアルたちが住まう世界には、魔獣や魔物が普通に生息しています。

 それらへの対応を請け負う冒険者は行方不明になることも珍しくありません。

 その時にはステータスプレートだけが発見されることも珍しくなく、その場合には、持ち主の死亡判定が下されます。

 ステータスプレートの所有者が死亡した際には、最寄りの教会へと届けられ、神官が返還の儀を執り行って神様の元へと返還しているそうです。

 その儀式は、教会のある町や村の規模に見合った頻度で実施するらしいですよ。



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 ご愛読頂きありがとうございました。

 楽しんで頂けましたら、作者の励みにもなりますので、フォローや応援などして頂けると幸いです。

 また、本作主人公フロレアルのキャラクターイメージを近況ノートに投稿しておりますので、よろしければイメージの参考にご覧下さい。

シリエル先生

https://kakuyomu.jp/users/kunnecup1103/news/16818093076535331515

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