第003話 そして伝説じゃなく回想へ

 その日、アタシは十五歳の誕生日を迎え、晴れて成人の儀にのぞんだのだった。

 その結果、とある理由からアタシは生まれ育った故郷から旅立つこととなったのである。


 ──フロレアルが生まれ育ったローゼ村は、国の南端にほど近い人口が一五〇人程の村だった。

 そんな国の外れにある村にすら当然の様に教会は存在していた。

 この世界において神は人族を含む人種の間では認知されており、種族により差はあれど深く信仰されている。

 だが神の名は誰も知らず、多くの人々は神様と呼称しているのみであった。

 それは神は唯一無二の存在、他と区別する必要が無い特別な存在モノ、それ故に神をあがめたてる神殿は他の名称で呼ぶことを禁忌と定め、その行為は神をおとしめるものとしていた。

 神が当然の如く認知されている人族の世の中では、神殿の影響力も比例して強いものとなっている。

 神殿は人口が多い城下町や街に存在し、教会はその出先機関として、人口が少ない町や村の規模に見合ったものが建てられる。

 フロレアルの故郷であるローゼ村の教会は、村の規模に合わせたお可愛いちんまい建物であったことは言うまでもない。

  

 ──アタシが故郷の村から旅立つ要因となったのは成人の儀であった。

 アタシは、生まれ育った村では、親しみを込めて『フロレ』と呼ばれており、一部の人々からは聖女様とも称されていた。

 そう称していたのは、村にある教会の神官や一部の村の人々であった。

 彼らは、成人の儀を行う前から、アタシが聖女であると信じ、微塵の疑いも抱いてない程であった。

 それには確証に近い実績、アタシが上級クラスの神聖魔法を行使できることを知っていたからでだった。


 ──神聖魔法とは、神へ祈りを捧げ奇跡をもたらす特別な魔法とされている。

 教会の神官であっても扱えるのは良くて中級上位クラスであり、上級クラスの神聖魔法の行使は、聖女や聖人といった特定のユニークスキル保有者でなければ不可能とされていた。

 これは過去に存在した魔法士系超越者たる賢者や大魔道士のユニークスキル保有者ですら、は、行使が叶わなかったことからの推察であり、この世界の常識でもあった。

 その結果、フロレアルは故郷の人々から聖女と目されており、その期待を一身に浴びていた。


 ──そして成人の儀で賜った、アタシのステータスプレートには、聖女の二文字は記されておらず、その代わりに信じられないユニークスキルが記されていたのである。



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フロレアル(主人公)①

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