邪神ちゃんが消えるまで

第9話 2回目の配信は何がいいんだろう

初配信から数日。僕は、500回程度再生されているっぽい僕の初配信を満足げに見つめていた。

いやあ、今見るとPONが多いこと多いこと。と言っても三日前だけど。特にお姉ちゃんが現れたりお婆ちゃんがコメントしているところなんかは、イア永久の黒歴史として、そしてV界隈の人たちには笑い話としても語り継がれるだろう。


何かするというわけでもないのだけど、僕は次の配信の内容を考え始めていた。思い出したくもないのに思い出せてしまう以外で推した配信者の人が行った2回目の配信は確か...ファンネーム決めだったかな?そんな感じで色々していた気がする。ファンネームは眷属でいい気もするけど...それも僕が勝手に決めたってだけだし、眷属さん方が他のにしたいというかもしれないしね。まあ、その時は眷属ってのをメンシ(メンバーシップの略称)に入っている人の名前にすればいいし案外どうにかなるかも。


しかし、2回目の配信はいつ行ったものか。なるべく早めにしたいとは思っているけど、僕の配信でどれだけの人が僕の後に続こう《Vライバーになろう》とするのか。正直僕の配信がクソでも、なんなら無名でもいい。その代わりに、この世界におけるヴァーチャルYo!Tuberが増えてほしいというのが本音だ。―――やっぱ嘘ついた。本音としては、単純にVのライバー《推し》が増えてほしい。うん、素直なのって一番だよね。


「ということで、第二回の配信は皆にVライバーという存在がどれだけ助かるのか、それをパワポ形式で紹介しようということで!」

僕は、自分が上に来るようにしてパワポを画面に出した。このスタイルは生前推していたライバーのやり方を模倣させていただいた。それを元にして愛称―――という名の蔑称みたいなふうに呼ばれることもあり、しかしその名でボカロの曲を作っていた。いやぁ、普段は高めなのにボカロでカバーした自分の歌だけ?は低音域ですごくカッコよかった。

「やっぱいつものもいいけど、せつなんはあれじゃなきゃね!」


―――僕は、なぜか既視感を覚えた。それはいつぞやのお姉ちゃんとの会話。確かこの後、お姉ちゃんと僕は話し合ったはずだ。そう、今のコメントのように沈黙したお姉ちゃんと。...

「―――ッスゥー...」

僕には、『PPON邪神』という蔑称がつけられそうだ。



「―――って訳で、僕は平行世界から来た人間なんですよ」

僕がお姉ちゃんにした説明とほぼ同じことを視聴者に説明する。説明していないのは、僕がこの世界における佐々木依在に当たるということだけ。流石にリアル事情を出すのは前回で懲りたしね。なお、お婆ちゃんがいまだに『クロお婆ちゃん』という名前にしていることを除く。


『クロおばあちゃん:なるほど、だから脳死状態だったイアが回復したのか。試薬の効果は、別世界で死んだ直後の〈この世界におけるイア〉の魂を〈この世界のイア〉の肉体に縫い留めたから、と』

『シロ:確かに、私が完全自立電子生命体として存在しているのはイアが今いるからなのか。あ、草江おばあちゃん、SNS開設しておくからそこにドシドシ聞きたいこと聞いてね。どうせ私は優希と記憶が混じり合っているから、優希がいた世界とは別の平行世界にアクセスして、魂の融合の術を知っているから。あの試薬も、実は四ホウ酸ナトリウム十水和物だかいうのを0.0001mol?だかぶちこめばいいはずだし』

「ちょっと!?シロさん、なんか色々バラしてるけどやめてくださいよ!僕の前世の名前とかお婆ちゃんの名前とか!というかシロさん、僕の体に元々いた人なんですか!?色々ツッコミどころなんですけど!?」

...今更だけど、ツッコミに回る配信者ってなんなんだろうね。


「色々疲れた...。それはそうと、今回のメインである眷属の皆のファンネームを決めたいと思っていてですね」

『もう眷属でいいんじゃね?』

「眷属でいいんじゃね、それはそうなんですけど...登録者が増えるとメンシに入れるようになりますよね?その時に眷属ってのを使いたくて...なんかないですか?」

『やっぱり、p民なんかどうだろうか?パワポ使ってた邪神を崇める民ってことで』p民、か...。いいかもしれない。


「では、p民の皆!今回の配信はこの辺で終わりにさせていただきます!あ、ライバーになりたいって人がいたらどんどんなってみてくださいね!お姉ちゃんが、多少の金で作ってくれますので!多分!」

「いや、私は作る気ないけど」

真横から聞こえたその声に、思わず飛び上がる。ついでお姉ちゃんに文句を言おうと動いたが、「依在以外の人なんて皆要らないから。ああ、でも私がライバーになるようなことがあったら描くかも。利己的なのはいいことじゃないけどね」などと言って僕を黙らせていた。


2回目の配信が終わって、僕は手応えのなさに驚いていた。まあ、明らかにPONしまくっているせいなんだけどね。

SNSをいじっていると、トレンドの下の方に『PPON邪神』という言葉があった。4000もツイートされているのでなんだと思ったら、シロのものと思しきアカウントがライバーの宣伝と共にそれを宣伝していたみたい。仮にも僕というのなら、貶すようなことはしてほしくないんだけどね...。


なお、本人に言っても恐らくは聞かない模様。



『Ia Ia/イアch.』

登録者:1004人(眷属+シロのツイートを見て流れてきた組)

↑収益化の登録者ラインクリア


追記

こんだけやらかしているのに見る人が多いのは、ひとえにライバーという新しい世界と、スレ民たちが多いからです。平均同接数は80程度で、突発な配信と少ない登録者、全然ない知名度では意外と多かったりします。

登録者での収益化ラインは超えましたが、この後どうなることやら...作者の私でもわかっていません、なぜなら刹那的な思いを書いているのですから。

こんなクソ小説にもいいねしてくれる人がいる嬉しさに浸りつつ、そのうちまた投稿させてもらいます。作者がグダらなければ明日にはもう一本出るかも。


登録者が増えるのが早いので、運営さんに収益化の処理を行ってもらっても収益化が通るのは遅くなるのかもしれない。

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