第4話 ガンショップの親父

 変態の美少女と別れて、ガンショップの店内へ。


 同行しているネネッタが呟く。


「ボディーチェックは、ないんですね?」


「こんな世紀末で、やれんわ! 騒いだり、銃を抜けば、ハチの巣にされるだけだ」


 すると、奥から初老の男の声。


「おいおい? ここは、デートスポットじゃないぞ?」


「こいつは、俺の従者だ」

「初めまして」


 俺たちの返事に、カウンターから出てきた男、フライムート・シュミッツはじろじろと見た。


「……その少女は自動人形クルトゥスだな? お前、どこでかっぱらった?」


「人聞きが悪い」


「そいつは、量産のメイド型だ! 俺たちのような稼業では性欲処理ぐらいにしか役立たんぞ? 維持費だけで、稼ぎが吹っ飛ぶ! メイドを置くほどに、ご立派な自宅か?」


「家門のところに、んなスペースがあるか! 知っているだろうに……」


「適当に女を買うか、右手を使え! 長い付き合いだろ?」


 呆れたフライムートは、首を振りつつ、いつもの物品を見繕っていく。

 何だかんだで、客のニーズに応える奴だ。


 ショーケースを兼ねているカウンターの上に置きながら、話を続ける。


「いつものだな? 相場は変わらん。グレネードランチャーの弾も入ったが……」


「ああ、いつもので! 弾の種類は?」


「通常のだ! 福袋にすれば、定価の半分になる」

「売れなかったやつの在庫処分だろ?」


 俺のツッコミに、フライムートは肩をすくめた。


「あ、そろそろ閉店時間だな?」

「まだ昼だろ!? ネネッタの装備も一式、見繕ってくれ! それも込みで割引に!」


 立ち止まったフライムートは、振り返る。


「まあ、クルトゥス用もあるが……。ネネッタと言ったな? 嬢ちゃんの希望は?」


「マスター?」

「俺の相方として、隠密スタイルだ」


「オーケー、オーケー! なら、派手な武器はダメだな……」


 両腕を組んだフライムートは、考え込む。


 俺は、自分の考えを述べる。


「クルトゥス用は、どんな感じだ?」


「マーシナリ―向けで、どれもガチガチの重火器だぞ?」

「傭兵かあ……」


 ふと気づいて、問いかける。


「そういえば、店先にメックがあったんだが?」


「ああ……。裏で置物になっていたんだが、ようやく売れてな! 急いで職人を探してのレストアだ」


 初老の男が、気持ち悪いぐらいの笑顔だ。


 それに引きながらも、話しかける。


「表に、変態の女子がいたぞ? そいつが買ったのか?」


「ウチの客を変態と言うな……」


「じゃあ、俺も気品のある紳士ということか?」

「その変態さんが買った! これでも、守秘義務があるんでな?」


 しかし、クルトゥス用の装備をデータパッドで見ながら、フライムートが続ける。


「ここらじゃ、探索メインだからな! 北のほうでは、メック天国らしい」

「地獄の間違いだろ? 被弾したら貫通して、そのまま爆発やん」


 フォローのつもりか、フライムートが説明する。


「このご時世でも素人が整備できて、共食いも簡単! 大破していても動く! 兵器としては理想的だ」


「中に乗っている人間の安全性を無視すればな? お前も、自分では乗らんだろ?」


「愚問だな……。そういえば、お買い上げなさった変態さまは、学園の生徒らしいぞ?」


 貶しているようで、その客の名前は絶対に言わない。


 何が愚かなのか?


 それを説明しないまま、オレンジ色などに塗られたサンプル品――動かない――を持ち出した。


「ほれ、見てみろ! ネネッタもな?」


 作業台に置かれたのは、先ほど説明した重火器のサンプルだ。


 ライトマシンガン。


 アサルトライフル。


 巨大なハンドガン。


 グレネードランチャー。


 フライムートが、店主らしい態度になった。


「クルトゥスでも、あんたは生身とそう変わらんはず……。人間も使えるレベルで揃えてみた! スライドなどが動作しないことを除いて、実物と同じだ。持ってみろ」


「はい、感謝申し上げます」


 会釈したネネッタは、1つずつ持ち上げ、銃口に注意しながら確かめる。


「弾薬は?」

「専用と人間用の、どちらもイケる」


「人間用で同じ銃火器は?」

「あるぞ! クルトゥス用のスコープをつけるのも、一つの手だ」


 一通り試したネネッタは、最後に試した銃器を置いた。


「クルトゥス用のアーマーピアシングをください。あとは……人間用で連射できるアサルトライフルに狙撃用スコープ、できれば多機能」


 感心したフライムートが、何度も頷く。


「近づかれたら、対装甲で抜けるハンドガン。それ以外は、こいつのスポッターに徹するわけか……。悪くないチョイスだ! 人間用なら銃と弾薬の数がそのまま増えるしな?」


 チラリと、俺のほうを見てきた。


「それで頼む! ガンベルトなどはクルトゥス用で」

「毎度あり」


 片手を振ったフライムートは、すぐに動き出した。


 お互いのデータ端末で、支払いと入金をチェック。


「ほい、終了と……。お届けでいいか?」


「頼む! ああ、ネネッタのハンドガンだけ装備する」

「だと思ったよ……。嬢ちゃん、シューティングレンジに来てくれ」


 その後、アーマーピアシングの握りや、撃った時の反動などを見た後で、最終調整をした。


 華奢な少女の腰に、ゴツいホルスターと拳銃が加わる。

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