第3話 op.03:00





この世界は

無限に存在する世界が重なり合って存在している。

私の体が眠るこの世界も無限の中のたった一つにしかすぎない。

過去も未来も別の世界も。その別の世界の過去も未来も。

全て同時にこの世界に存在している。

幾重にも重なり合いながらも

干渉しあうことなく。

みんな、知らないうちに別の世界を生きる自分とすれ違ったり、それが私の知っている事実だ。


私は

この世界に生まれた時から

おかしな病のせいで

約3ヶ月に一度、3分48秒目が覚める。

他の時間は深い深い眠りについている。

鼓膜の奥から聞こえる鐘の音に

起こされたり眠らされたり。

目覚めている時間が短いことが関係しているのかはわからないけれど、身体もなかなか歳をとらず、眠っている間にどんどんみんなから、季節から、何もかもから取り残されていった。

目が覚めるたびに変わる光景、人々、世界の匂い、取り残されていくことを嘆く間もなく次の眠りに呼ばれる。


いつしかMuseumに置かれた私には

目を覚ますたび硝子の向こうで人々がうつろっているのがぼんやりと見えるだけの世界が残った。

それもいつの間にかうつろうことを終え、

Museumは少しずつ大地に飲み込まれていく、

それが私の体が存在している世界の全てだった。

歩いたことのない体では3分48秒で何ができよう。

私が立っていられるのは私の体と融合しつつある木のおかげだった。


ただこの世界の人たちは知らない。

私の体が眠っている間、

私は無数に存在する世界のどれかに旅をしていることを。


あの星に落ちた時の事を今思い出している。

その日も鐘がなって、

意識を持っていかれる夢の入り口。

私はウサギの穴に落ちたのだ。

どこかの世界で

誰かが私に読んでくれた物語のような

そんな、始まりだった。

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