第2話 3:00pc
もう昔のことだけれど
僕が月の裏に小さい星を浮かべて
そこに住んでた頃の話をしようと思う。
そこは人から隠れるために
人の手が届かないよう避ける仕掛けを詰め込んで作った秘密基地。
…だというのに、
いつの間にか僕以外の3人の人間が住み着いてしまった。
調香師のラテ、
調律師のモカ、
鳥類学者のクレムだ。
そして、3人から僕はノワと呼ばれていた。
勝手に移り住んできて、
と、不服に思う日もあったが、
そもそも月の裏に誰の許可を取るでもなく星を作って浮かべて、
先に〝勝手〟をしたのは僕だからなぁ、
と思うとなんだか強くは言えなくて、
なにより
3人ともバラバラの世界から来たと言うのに
気の合う連中だったこと、
もっと言うと
僕は星に建てた屋敷の
屋根裏部屋から出る予定もほとんどないので
特段気持ちを乱される事もなく過ごしていたんだ。
ただ一つ問題なのは
人を避けるための仕掛けたちに、意志を持たせて作ってしまっていたので、
午後3時にお茶会を必ず開き
それぞれの報告をして
危険を回避しなければならなかった。
例えば
〝言の葉の森〟は
中に入った人を追い詰めてしまうし、
〝月影の海〟は
人の夢に入って思考に靄をかけてしまう。
〝オレンジ草原〟は
懐かしく帰りたい記憶をざわつかせ、
もうないその場所へ帰りたいと嘆かせる。
1番厄介なのは〝鏡の泉〟で
気まぐれで、興味を持たれると人に宿る人間らしいものを写し奪われてしまう。
森はクレムとクレムの愛犬ココア、
海はラテとラテ愛猫のアールグレイ、
草原はモカとモカの愛猫のレディグレイ、
そして鏡の泉は僕が
その日の様子を確認して報告し合い、
機嫌の悪い仕掛けがいたら
立ち寄らないよう、
落ち込んで暴走しそうな仕掛けがいたら
慰めにいくなどして
うまく星と付き合っていくためにお茶会を開くのが決まりとなった。
そんな星でのある日、
君は突然現れたんだ。
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