7話.G.Wの終わり

7話.

G.Wも終わりを迎えようとしていた最終日、初日以降は特に予定もなくあれから勉強会が開かれる事もなかった、皆の予定が合わずに中々集まる事ができなかったのだ。


最終日の今日は、晴香が無事に熱も下がり元気になったとの事で二人で遊ぶことにしていた。


「熱は大丈夫なのか?」


「ごめんね〜もう、ほら!大丈夫」


そう笑いながらこちらに顔を向けている、長い付き合いだから分かるが、病み上がりで無理をしている顔つきだ、昔から無理をする事が多くよく心配していた。


「あまり無理するなよ?」


「う、うん…ありがとう」


「さて、今日はどこにいく?」


「勉強はいいの?」


「あぁ、誰とも予定が合わなくてな、おかげさまで部屋にこもって勉強漬けだったよ」


「そっか、ならショッピングに付き合ってよ!」


「おう、じゃああそこに行こうか」


そうして、二人で電車に乗って少しだけ移動する。晴香が好きな、流行り物が集まる場所に向かっていた。

俺も、そろそろ夏服が欲しかったので丁度いい、お互いに買い物をして、昼ご飯でも食べてゆっくりしたらそんなに疲れる事もないだろう。


そうして、電車で数駅移動して目的の場所に着いた。


昔から、何か買い物があれば二人でよく出かけていたものだ、お互いに好きな物もある程度は知り尽くしているので、いつも行く店も決まっている。


「いつものとこだよな?」


「うん!」


そうして二人で、いつも同じ古着屋さんで服を買っているので、馴染みの店へと入っていく。


「あら、晴香ちゃんいらっしゃい」


「やほーっ!また来たよ〜」


「嬉しいね〜、新作入ってるから見ていきな」


「ういっす」


「来たな、晴香ちゃんに吸い付く害虫が」


この人はこの店の店主、一人で古着屋さんを経営しているようで、ここで取り扱う服は全てこの人の目利きで仕入れいるらしい、それが俺たちに刺さるのでいつもここに来ている。


だが、何故か俺の事は嫌っているらしい。


「晴香ちゃん!あいつに何か変な事されてない?」


「だ、大丈夫です…うぅーっ…」


いつもの光景だ、晴香に抱きつきながらこちらを睨みつけている。自分のお気に入りが男と歩いてる事自体が、気に食わないのだろう。


「ほら、そろそろ話せよ【立花】さん」


「あぁ〜っん、晴香ちゃん〜また後でね〜」


「立花さんすみません、また後で〜」


俺はいつも通りに、晴香からひっつき虫を引き剥がす。

隙あらば抱きついて、離さなくなるから厄介なもんだ。


「おい、害虫…」


「なんすか、


「服買ってさっさと帰れ」


「やだね、ゆっくりと選んでやる」


「ちっ、」


これで接客業が成り立ってるんだから、不思議なもんだ。まぁ、こんな感じなのも俺ぐらいかとは思うが。


そうして店内を見て周り、お互いに目ぼしい物を探していく、店の奥からひっつき虫の叫ぶ声が聞こえるが無視。

俺は、自分の夏服を探していく。


ある程度店内は見て回り、数点見繕った。晴香にも見てもらい、問題なさそうなのでそのままレジに移動する。

晴香は既に買い物を済ましているようで、袋を手に持ち待っていてくれた。


「はい、お釣り…晴香ちゃん置いて失せな」


「晴香も持って帰りますので、ご安心下さい」


俺は、満面の笑顔で返す。


「聞いたこいつ!晴香ちゃん持ち帰るって!最低!」


「ほえっ?」


晴香の顔が急に赤くなった、やりとりは聞いていなかったようなので、そこだけ切り取るとおかしな事になる。


「ばっ、ちがっ、そう意味じゃ!!」


「最低ー!男なんてけだもの!淫獣!!」


「違うっつってんだろうがぁー!」


俺は手に持っていた袋で、口を抑える。何かモゴモゴ言っているが関係ない、そのまま必死に晴香に弁明する。

分かってくれたようで、誤解は解けた。


…いつか、この店は燃やしてやる。


そんな物騒な事を考えながら、後ろの方で叫んでいる声を無視して店を後にする。


「ははっ、いつもながらだね〜」


「こっちは疲れたよ、大丈夫か?」


「うん、大丈夫だよ」


「さてどうする、ご飯食べて帰るか?」


「お持ち帰りするの?私の事」


「はっ!?しねぇよ!」


「ふふふふっ、冗談だよ〜」


無邪気に笑う晴香にからかわれたようだ。こんなからかい方は心臓に悪い、耳まで熱くなっている気がする。

今はまともに顔を見れない、晴香も先ほどから耳を赤くして俯いている、どうやら無理したようだな。


そうして、近くにおしゃれな喫茶店があるとの事で寄ってみるが、G.Wという事を忘れていた、そこはかなり長蛇の列が出来上がっていた、さすがは超人気店。


「どうする、他行こうか?」


「ううん、誠となら並んでいられるよ、行こうよ」


そう言いながら俺の腕を引っ張り、その喫茶店の列へと並んだ。ふわふわのパンケーキや、食材にこだわりながらも、魅せ方を意識したランチメニューなど、テレビでも取り上げられるほどの店だった。


店の中を覗くと、確かに満席だった。

ただ、出ていく人もそれなりにいるようなので、思っているよりかは順番が回ってくるのが早そうだ。


そうして、晴香と色々話していると順番が回ってきた。中に入ると聞いてた以上の内装だった、これは期待できる。


二人で席に着くと、ランチセットを二つ注文する。


「すごい人だね」


「さすが、テレビでやってる効果だろうな」


「ランチも凄いよきっとこれは」


「あぁ、楽しみだな」


暫くして、料理が運ばれてきた。思わず二人して写真を撮り始める、それほどに色鮮やかで芸術品のように作り上げられた料理は見応えがあった。


「食べるのもったいないね」


「食べないと失礼だけどな」


勿体無い気持ちを抑えながら、絶品のランチに何度も“美味しい“と言いながら二人揃って完食した。もう少しゆっくりしたかったが、外を見るとまだまだ並んでいたので、すぐに退店する。


「いやーっ、あれは良かったな」


「うんっ!また行きたいね〜!」


「あぁ、また友成たちも連れて行きたいな!」


「……うん、そうだね…」


「ん?どうかした?」


「ううん、なんでもないよ、帰ろっか〜」


それから少しだけ寄り道をして、久々に息抜きが出来た、晴香も病み上がりの運動としては丁度良かったらしい。でも、さすがにしんどそうな顔をしていたので、早めに切り上げる事にした、そこからは少しだけ休憩しながら家に帰る。


また明日学校で、と話して家に帰っていく。

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