6話.G.Wの勉強会
翌日、俺は学校に登校し皆に予定などを聞いてみた。昨晩に晴香と話していた、G.Wの勉強会について高校三年生になるのでどうかと。
神崎と長良は部活の練習や、塾の予定が入っており予定が合わないとのことだった。となると、いつものメンバーにはなる、俺と友成、晴香の三人だ。二人は比較的成績も良い方なので、俺としては大変助かる。
「なら、いつもの三人だな」
「これなら誠に勉強教えるだけになりそうだな」
「う、うるせえよ。あながち間違っちゃいねえけど」
「私達に任せときなさい!!」
「あら、楽しそうなお話ですね、私も混ぜていただけませんか?」
全員が振り返ると、そこには愛染さんがいた。声をかけられる事はそうだが、まさかG.Wの勉強会に参加したいとは、何かの聞き間違いだろうか。
「あら、ご迷惑でしたでしょうか」
「いやいやいや、ちょっと驚いたと言いますか」
「愛染さんって勉強できなかったっけ?」
「いえ、悪くはないのですが、楽しそうだなと…ダメ、でしょうか?」
「いや、俺は二人がいいなら…なぁ?」
「私は大丈夫だよ〜」
「同じく」
二人は大丈夫との事だったので、G.Wは愛染さんを加えてのいつもと違うメンバーになった。思いがけない事ではあるが、どうなるのだろうか。この前の電車での一件以来、単純に仲良くしてくれいるだけだろう。
そういえば、愛染さんの成績ってどれぐらいだろうか。成績は悪くないと言っていたので、これまた俺だけが教えられる立場になるな。
「にしてもどこでするの?G.Wだし、どこも人いっぱいだよね?」
「図書館とかは?」
「子供とかが多いだろうな」
「私の家で、と思ったのですが両親が厳しくて…」
「愛染さんの親って厳しい「あぁっ!!」
「どうした晴香、急に大声上げてー」
「誠の家でやろうよ!」
晴香の思いがけない提案に驚いた、確かに場所が無いとはいえ、愛染さんの言ったように誰かの家というのは最適な気もするが。まぁ、うちは親もいないだろうし大丈夫だろう、いつも通り二人して旅行に行くと言っていたから。
「なら、俺の家でやるか?親もいないし大丈夫だよ」
「新良さんのご両親はいらっしゃらないのですか?」
「あぁ、ちょっと前からG.Wは、毎年二人だけで旅行に行くって決まってて……」
「誠はいっつも寂しそうだもんなーっ」
「してねぇよっ!」
「なら決定ね!G.Wの初日は誠の家に集合で決定〜」
「はい、ぜひとも宜しくお願いします」
まぁ、晴香と俺は移動が無くなるので楽だ。愛染さんも近所らしいし、通いやすさとしても良いと思う。友成はまぁ、どこでも来る奴だから大丈夫だ。
「愛染さんは場所とか知らないよね?」
「
「私がRineで送っておくよ、スマホ持ってるよね?」
「はい、これがQRコードですので、よろしくお願いします」
そうして、晴香と愛染さんは連絡先を交換して俺の住所を送信していた。俺の家の場所は知っているはずだが、忘れたのだろうか。それとも俺の家に来た事を言いたくないのだろうか。
まぁ、俺もわざわざ言う必要も無いので黙っておく。
それから時間も決まったので、愛染さんも席に戻っていった。G.Wまでは特に何もなく、何気ない日々を過ごした。
迎えた、G.W初日。
朝、目が覚めると晴香から、Rineの通知が来ていた。
「こんな朝早くから珍しいな」
内容を確認すると、“40℃近い熱が出たので今日は行けなくなった”という内容だった。こればっかりはどうしやうもない、残念だが友成と愛染さんを待つ事にしよう、“お大事に”と返信しながら。
「まぁ、向こうは親もいるし大丈夫だろう」
そうして、念入りに部屋の掃除を始める。昨日も勿論部屋の隅々まで掃除したが、もう一度確認も含めて。親は朝早くに出かけて行った、そこはいつも通りだ。
しばらくして、家のインターホンが鳴る。玄関まで降り、扉を開けると友成と愛染さんが立っていた。近くで会ったらしく、そのまま一緒に来たと。
二人に家に入ってもらい、そのまま部屋まで案内した。
「晴香ちゃん熱だって?」
「えっ、そうなんですか?」
「あれ、聞いてなかった?40℃近いらしいよ」
愛染さんには伝えてなかったのだろうか、俺たちにRineを送って力尽きたのだろう。晴香はいつも熱を出すと、連絡も取れないぐらいに寝込んでいたからな。
二人を部屋に案内すると、愛染さんはケーキを持ってきてくれたようで、俺は袋ごと受け取り、冷蔵庫に入れに行く。そのついでにキッチンからカップと飲み物を持って行き二人に渡した。
「さて、晴香はいないがお願いします!」
「はいはいー」
「こちらこそ」
G.Wに出された課題と、中間テストに向けたプリントをいくつか持ち出し、それぞれ問題に取り組む。
二人からは、問題を解いてる素早い音だけが聞こえてきていた、俺はというと教科書を開きながら、二人に比べゆっくりと問題に取り組んでいた。分からない部分は二人が教えてくれたので、躓くことは無かった。
愛染さんもかなり勉強ができるようで、これでは勉強会というより、俺に対する個別塾のようだった。特に会話もする事なく、静かに課題と予習が捗っていた。
しばらくすると、友成の携帯が鳴り部屋から出て行く。俺は構わず、愛染さんに勉強を教えてもらいながら進めていった。
友成が部屋に戻ってくると。
「誠、愛染さん悪い、ちょっと急用が出来た、先に帰るわ」
「急だな、大丈夫か?」
「大丈夫、大丈夫。いつものやつだから」
友成は、十三歳年下の弟がいており、面倒を見るようにと頼まれることがたまにあるらしい。こうして、急に帰らないといけないことも、たまにあった。
「わかった、気をつけてな」
そうして、友成は荷物をまとめて家を出て行った。正直、愛染さんと二人残されるのは気まずい。緊張すると言うのもあるが、あの雰囲気だけは慣れない。
「どう、します?」
「私は構いませんよ、それにまだ終わってないでしょうから、とことん付き合わせて頂きますよ」
「すみません、ありがとうございます」
ここは正直にお世話になっておこう、愛染さんがこのまま帰ると分からない問題が多々出てきそうだ。せっかくここまやる気を出して頑張っているのだから、出来るとこまではやり切りたい。
そうして友成が帰ってから数時間が経ち、外も暗くなっていた。途中、二人でケーキを食べながら息抜きもしながらだった、余ったものはそのまま食べてくださいとの事だったので、また明日にでも食べよう。
「あら、もうこんな時間なんですね。私そろそろ帰らないと」
「あ、じゃあ家の近くまで送りますよ。外も暗いので危ないでしょ……あ、ご迷惑ですかね?」
「ふふっ、お言葉に甘えさせていただきます」
そうして、荷物をまとめて玄関まで一緒に降りて行く、途中スマホが何度か震えていたが、すぐそこなので帰ってから確認しようと、ベッドの上に置いておく。
そうして家を出て、暗くなり始めていた道を歩いて行く、家の場所は知らなかったのでついて行くだけだ。
あまり会話らしい会話もなく、少し気まずい。
「そういえば愛染さん、教室でいつも何の本を読んでいるんですか?」
「本ですか…あぁ、『時をもどす少女』です」
「あ、もしかして映画のやつですか?」
「そうです、タイムリープをして色々な問題に直面しながらも奮闘する物語です」
少し前に映画は見たが、小説があるとは知らなかった。毎年夏になるとテレビでやっているので、夏の風物詩のような感じだが、意外な小説を読んでいると思った。
「好きなんですか?」
「はいっ!だって憧れませんかタイムリープって、それにその力を使って頑張る姿が好きです」
急に元気な声が出ていたので俺は驚いた、愛染さんも気まずかったのか、少し照れくさそうに顔を俯けていた、思ったより声が出てしまったのだろう。
「俺も映画しか見ていませんが、確かに面白いですよね」
「はい、新良さんはタイムリープが使えたら、何がしたいとかありますか?」
「そうですねー、テストの点数を、毎回百点とるとかですかね。まぁ、タイムリープをする為に、高いところから飛び降りる勇気は出なさそうですが」
「ふふっ、高いところから飛び降りる勇気はなくとも、私を助けてくれる勇気はあるんですね?」
そう笑いながら話す顔は、思わず顔が赤くなりそうになる。暗がりとはいえ、その綺麗な顔立ちははっきりと見えていた、目線をつい逸らしてしまっだが、変に思われていないだろうか。
「そ、それとこれとは話が別で……」
「冗談ですよ、でも、
「簡単にできたら良いですね、タイムマシーンもあと百年後みたいですから、愛染さんはそうなったらどうしたいですか?」
「私ですか、私は
「愛染さんの望む未来って?」
「あっ、家。着きましたここで大丈夫ですよ」
少し話の続きが気になるが、家に着いてしまったようだ、その家を見るとかなりの大豪邸だった。やはり、どこかのお嬢様なのだろうか、そんな人に勉強を教えてもらっていたとは。
「ここまでありがとうございます、ご機嫌よう」
「あ、こちらこそ、おやすみなさい」
そう言葉を交わし、愛染さんは門の奥に消えて行く。
俺は来た道を戻りながら、先ほどの言葉を考えていた。あれほどの家に住んでいたら、望む生活をしているだろうに、俺に分からないような悩みでもあるのだろうか。
そんな事を考えたていると、帰り道は行きより早く感じた、家に入り部屋に戻るとベットの上に置いたスマホに、通知が来ていたのを思い出した。
中を確認すると、友成と晴香からだった。
友成からは急に帰ったことへの謝罪内容だった、“気にしなくて良いよ”と返信をする。
晴香からは、“何してるの?順調?”など、こちらの状況を確認する内容が来ていた。どうやら目が覚めて、Rineが出来るぐらいには元気になっているらしい、この内容という事は、よっぽど楽しみにしていたのだろう。
俺は、“問題ないよ、かなり捗った”とこの文面を読んで悔しそうにしている晴香の顔を思い浮かべながら、送信した。だが、最後には“また元気になったら遊ぼうぜ”と入れておいた、流石に可哀想かなと、少しの罪悪感感が芽生えたからだ。
今日は勉強もして、愛染さんと二人きりだったので自分が思っている以上に疲れていたらしい。そのままベットに横になると、沈むように眠ってしまった。
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