憧憬の化け物

花迷ひつじ(か弱い)

憧れ

 貴族は身分に忠実、それが自分を守り、生活を豊かに安全にするからだ。


 貴族である俺の家族も身分、権力を至上とする。家族だって自らがより上へと登るための駒でしかない。故に家族に対してそこまで愛されていたという実感はない。結婚のために付加価値をつけようとすることもあり、蔑ろにされた訳でもないため、死んだら多少思うところはあるがそれだけ。そんな冷たい関係だ。


 だからこそ、俺はその存在に対して恨みや怒り、恐怖よりも貴族…王族であろうとも身分など関係のなく蹂躙していく、圧倒的、絶対的な力に憧れた。


 近づくだけで城壁を破壊し、通り過ぎようものならシミすら残さない。

 正しく災害。意思のある現象。所謂、環境災獣。


 記録に残っている限りでは一体のみしか確認されておらず、数百年目撃されていない。

 居るだろうと思われている大陸ごと封鎖されているのだ。環境災獣を討伐対象とした当時随一の大国が総力をあげて挑み、僅か半刻で壊滅。怒りを買ったのか周辺国も地図から消えた。

 あまりに強さに信仰する者すら現れ、人類に与えられた試練であると考える者も少なからず居る。


 俺も少なからず信仰のようなものが芽生えている。


 対処不能の化け物を初めて見た。

 俺は天才だった。大抵のことは一度見ればだいたい熟せる。最強と言われていた騎士団長でも後数年あれば勝てると確信した。

 一目見て、勝てないと絶望したのは初めてだった。勝てる勝てないの次元にすら居ない。俺が路傍の石。どうあがいても届かないと心の底から理解させられた。



 だからこそ生まれて初めて目指してみたいという目標ができた。



 質量を持つもの全てが塵となる様子を目に焼き付ける。


 もし…もし…俺にもチャンスがあるなら、あの環境災獣と戦いたい。

 せめてその本体姿を。


 魔力で無理矢理に身体の周りを包み、恐らく本体が居るであろう中心部と思われる場所へと突っ込む。








 あぁ…駄目か。


 瞬間、一人の少年が塵となった。










~~~~


主人公補正ってあるじゃないですか。

主人公がピンチになっても、絶対になんとかなるっていうやつです。


皆さんはどう思います?


私はあからさま過ぎるとちょっと嫌ですけど、基本的にはあっても良い派です。


主人公だから特別なんじゃなくて、

特別だから主人公なんです。


英雄譚とかっていうのも常人では成し得ないことを成していくから憧れて語り継がれると思うんです。


主人公は何かしら秀でているところがあり、良くも悪くも人を惹きつける。

そういう人だと思います。


恐らくこの作品の主人公も特別になっていくと思います。

そんな作品でも良いとしてくださるなら貴方の貴重な時間を私にください。

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