第9話 怪異成す
——カタン。
深夜、村長はふと目を覚ました。何か物音が聞こえた気がして耳を澄ます。
——コト、ゴトゴト。
泥棒だろうか? 村長は音の正体を確かめに行くことにした。
音は納戸の方から聞こえて来る。
廊下の電気をつけるとバットを両手で構えながら、おそるおそる歩みを進めた。戸に手を掛けようとしたところで、納戸の中の音が止まった。
「……って」
か細い声が聞こえ、ひとりでに戸が開いていく。否、納戸の中の何者かが開けようとしているのだ。
青白い指が、戸の隙間から覗いた。
「か……て」
高い声が次第に低く変わり、遂には村長と同じの声が納戸の向こうから聞こえ始めた。戸の隙間は徐々に広がり、暗闇の中から現れたのは——村長と瓜二つの顔だった。
「「「かわって」」」
無数の指が戸を開け放った。
「ひ、ひいいいいいい!」
逃げる村長の後ろから同じ顔が次から次へと現れる。遂に納戸の戸は押し倒され、廊下いっぱいになったふゑありが波のように押し寄せた。
「かわって、代わって、代わって! 代わって!」
廊下を照らす照明なんかじゃ、ふゑありは止まらない。ふゑありが求めるのも、恐れるのも日光だけだ。
玄関から外に逃げようとした村長は、鍵をかけていたことを後悔した。震える指で鍵を触る間も後ろから声は近づいて来る。
やっとの思いで鍵を外すも、外に逃げる事はできなかった。
「代わって代わって代わって代わって代わって代わって代わって代わって」
たくさんの手が村長を捕まえ、家の奥へと引き摺って行く。
「やめろ! やめてくれ! たすけてくれえええ! 誰かああああ!!」
村長の絶叫が響いた時、眩い光が外から玄関を照らした。
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